第5話 14days ~ the second week
――10月8日――
戸浪が死んだ。あのメールがただのいたずらメールではないことが証明された。しかも戸波は連続殺人の被害者のひとりとして報道されていた。
冗談じゃない――
戸浪以外はオレが殺した、それは認める。
だがなぜそこに戸浪を加えるのか。3人と戸浪にはカムライ教の信者かそうじゃないかの明確な違いがあるのに。
警察は無能かよ! ――と心の中で悪態つく。
たしかに無能なのかもしれない。
だって、オレは3人も殺してんだぜ? なのに一向にオレは疑われない。
――きっとオレは捕まらないんじゃないか?
これまでの犯行がうまく行き過ぎていたことで、オレの中に油断が生じていたことは事実だ。
――10月9日――
次のターゲットに選んだのは流尾さんと米座さんだった。父ちゃんと行った山登りの時彼らは休憩中にベラベラとプライベートに関する情報を垂れ流していた。危機意識の欠片もない2人には丁度いいお灸だ。
最初は流尾さんを選んだ。職場はわかっていたので試しにネットでホームページを見てみたら流尾さんのフルネームがそこに掲載されていた。PB社が誇るセキュリティの精鋭たちみたいな触れ込みで堂々と顔写真付きで名前が公表されてんだから滑稽だ。
ネット時代における個人の特定など容易ものだ。
――――
ことはあっさりと片付いた。最初は怪我をさせるだけが目的だったのにいつの間にか人を殺すことが目的になってた。でもまあ、そんなことはどうでもよかった。警察は無能だからどんなに罪を重ねてもオレは捕まらないって自身があった。
しかもオレの真似をして殺人を犯したやつがいることがデカかった。模倣犯の登場で警察が混乱してるのは確実だ。
それよりも大切なのは勇を救うことだ。
――10月11日――
「警察!? なんだよそれ!?」
勇が取り調べを受けたという話を聞いて思わず驚いた。まさか警察がオレの存在に感づいたのか!?
いや、そんなはずはない。絶対にない。
勇がオレに疑義の視線を向けていた。
「カツ丼うまかったか?」
心の裡を悟られないようにとアホなセリフを吐いてみせた。たぶん、うまく誤魔化せたはずだ……
…………
次のターゲットは米座さん。彼の職場はわかっていたので事前にそこに足を運んで彼の名前は調査済みだった。個人で経営するアウトドア用品店の店舗内に合った責任者表示のプレート。こんなところからでも個人の名前は特定できるのだ。
そして今日オレは作戦を実行するため上納市へ向かったのだが米座さんの店は閉まっていた。臨時休業だった。さすがのオレでもそんなの把握できるわけなく諦めて帰ることにしたのだが、その帰り道の途中偶然にも米座さんを発見した。しかもなぜか彼は同じ学校に通う日高と一緒にいたのだ。意味がわからなかったが、そのことは一度忘れ2人の後を追った。
そして、ファミレスに入った2人に続いてオレもファミレスに入った。店員に案内されたのは仕切りを挟んで隣の席。首を伸ばし隣の席を覗いてみると、案の定米座さんと日高が会話をしていた。
この2人がいったいどんな関係なのかそして何を話しているのか俄然興味が沸く。オレは耳をそばだて2人の会話を盗み聞きすることにした。
――――
2人の会話はオレにとって有益な情報だった。
まず驚いたのはあの日高がカムライ教の前の教祖の息子だということだ。いわば悪の元凶とも言えるこいつを手にかければ、カムライ教は少なからずダメージを受けるはずだ。それから話題はここ最近上納市内で起きている連続殺人事件の話になった。
米座さんは犯人がカムライ教の人間だと思っているらしい。もしかすると、同じ理由で警察も犯人がカムライ教の人間だと思ってるのかもしれない。オレに捜査の目が及んでいないことを考えるとその可能性は大いにある。そして勇が事情聴取を受けた理由もきっとそっち関係だったのだろう。
それならそれでこっちとしては好都合だ。そして日高も勇を救うための犠牲になってもらうことにした。
オレ先に店を出て2人が店から出てくるのを待った。そして店のからでてきた2人は店の前で別れた。オレは気づかれぬように米座さんの後を追った。
米座さんの向かった先は自分の店だった。裏口から店に入って店の品出しをやり始めた。明日に向けての準備ってことだろう。
――でも残念なことに店は永遠に開くことはない。
なぜなら……オレは米座さんにばれないように店内にあったピッケルを握りしめた……オレが今オマエをここで殺すからだ!
一撃必殺!! 米座は息絶えた。
米座さんの後頭部には登山用のピッケルが刺さったままになっていた。山好きの彼にとっては本望だろう?
ピッケルを選んだオレって、ちょっと優しかも……
――10月12日――
もう5人も殺した……
でも勇は相変わらずカムライ教に通い続けている。
理由はわかってる。テレビや新聞では連続殺人と銘打って報道されているが、被害者が全員カムライ教の信者だということは一切報道されていない。警察が気づいてないはずはなく、意図的に黙っているのだろう。そのせいで、勇は被害者が全員カムライ教信者だってことに気がついてすらいなかった。
――これじゃ何のためにわざわざメールを送ってまでして罪を重ねてるのかわかんねぇよ……
だが次は日高の番だ。
アイツを殺したら何かが変わる。なにせ前の教祖の息子だ。必ず大きなニュースになるという確信があった。
――10月13日――
日高を捜し回ったがどこにも見当たらなかった。同じ上ノ木町に住んでるんだから簡単に見つかると思ったんだがそう簡単にはいかないみたいだ。
でも慌てる必要はない来週になればアイツは学校にやって来る。そうなりゃどうとでもなる。
オレは日高を殺すことばかり考えていて勇にメールを送ることをすっかり忘れていた。それを思い出したのは翌日の14日の朝のことでオレは慌てて勇にメールを送った。




