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アセンブル2 ― 14days  作者: 桜木樹
第六章 楡金八重 編

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10月11日

 わたしの携帯にねねちゃんから連絡がきたのは夕方頃だった。


 ねねちゃん経由で真理絵ちゃんからもたらされた情報は、朝倉さんの名前と仕事内容と勤務先の3つ。当初こちらの知りたかった情報が全部揃っていて正直驚いた。真理絵ちゃんはいろいろ頑張ってくれたようだ。

 朝倉さんのフルネームは朝倉紗耶子。職業はコンピューター関係で、勤務先は暁ITサービスというIT関連会社。ちなみにこの会社は先日朝倉さんを尾行したときにたどり着いたあのテナントビルの中に入っている会社なのでまず間違いない。

 この暁ITサービスという会社はその名の通りIT系の会社で、どうやらビューティープロテクトの一部業務を請け負っているらしい。偶然にも現在進行系で明里がハッキングを仕掛けようとしている会社と関連のある会社だったことにちょっとだけ驚いた。


 …………


「お忙しいところすみません」


 すべての依頼を終えたわたしは真柄さんに連絡し事務所に来てもらった。


「いえ、こちらからお願いしたことですし。――それで、相手の女性が誰だかわかりましたか?」


「はい」


 わたしはこれまでの調査でわかったことを彼女に報告する。女性名前、住んでいる場所に勤務先……


 わたしの話を聞く真柄さんの態度は至って冷静だった。


 相手の名前を知りたいとわたしに言ってきたときは割と感情的だったのに、いざ名前を告げても特に喜ぶでもなく、憤慨するでもなく……


「ありがとうございました。依頼料は指定の口座に振り込んでおきますので」


 すべてを話し終えた後の真柄さんの最初の言葉はそれだった。

 

 ――え!? それだけ!?


 もっと、こう……なにか言うものだと思っていたわたしはかなり拍子抜けしてしまった。そんなわたしの心情を察することもなく、ソファに座る真柄さんが腰を浮かそうとするので、慌てて制止する。


「――えっと、ひとつ注意事項がありまして……」


「なんでしょう?」


 彼女が訝しげな表情でこちらを見る。


 真柄さんが勘違いしてるといけないので、訴状の送付に関する話をわたしが知っている知識の範囲内で伝える。彼女くらいの立場であればおそらく顧問弁護士とかついてそうだけど、後に言った言わないのトラブルになるのだけは避けたい。


 すると……


「ああ、そのことですか……安心してください、存じ上げております」との答えが返ってきた。


 じゃあどうして勤務先を知りたかったの? ――とは、訊けなかった。


 知っていたのに敢えてその依頼をしたということは、そこに何かしらの事情があるってことだ。相手からその話が出ないということは、教えるつもりはないということ。

 依頼に関する話が終わると、真柄さんはすっと立ち上がりわたしに向かって綺麗なお辞儀をした。そんな彼女を玄関まで見送り、この件はこれにて終了となった。


 だけどはっきり言ってしまえば消化不良、そこにはいつものような達成感がなかった。


 …………


 明里は夜遅くまで事務所のデスクに向かってパソコンとにらめっこしていた。わたしの仕事は終わったが、明里が請け負った日高くんからの依頼はまだ終わっていない。


 最近はわたしの方の依頼に手を貸してもらっていたせいで、そっちの依頼は遅々としていた。かと言って、わたしはパソコンに関する知識は素人に毛が生えた程度しか持っていないので、歯がゆいけど明里を手伝うことはできない。


 わたしは事務所のソファに座って、パーティションの向こうで作業する明里を思う。


「八重様。お気持ちだけで結構ですよ」


「え!?」


 衝立越しに見ていたわたしに気がついたことに加え心情まで読み取ったことに驚きを隠せなかった。


「八重様の考えていることはわかりますよ」


「う、うん。根詰めすぎないようにね」


 明里の言うとおりで、ここにいてもわたしにできることはない。逆に明里の集中力を欠く要因となるのなら、ここにいては邪魔になるだけだ。お言葉に甘え、今日は一足先に休ませてもらうことにした。

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