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アセンブル2 ― 14days  作者: 桜木樹
第六章 楡金八重 編

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10月9日

 その日の夜わたしが調査に出かけようとすると明里も一緒についてくると言い出した。わたしは一度は「自分の仕事を優先すればいいよ」と彼女の申し出を断ったんだけど、彼女は一緒に行きますと頑なに譲らなかった。

 明里がそこまでこだわる理由は先日の歓楽街での出来事のせいだとわかっていた。あのときわたしの身に何がったのかは明里には話していない。だけど、それはその時のわたしの態度を見れば嫌なことがあったのはまるわかりだ。明里は明里でわたしのことを守ろうとしてくれている。そんな明里の親切心を無碍にはできず一緒に調査に向かうことにした。


 そして、張り込みをするわたしは三度同じ光景を目にしていた。


 仕事を終えた旦那さんはその足で例のファミレスへと向かった。そこには浮気相手の女性がいて、2人は仲良く食事を始める。


 なんとも不思議な感覚だった。


 これまで何度か浮気調査の依頼をこなしてきたけどこんな経験初めてだった。なぜ同じ場所で会うんだろうか、しかも席が毎回同じ窓際ときてる。もっと言えば日曜や祝日の昼間に会おうとしないのも変な感じがした。

 もしかして奥さんに対して罪悪感とかがあって遠慮してるのだろうか。でもそんなことで罪悪感を感じるような人なら他の女の人とホテルとか行かないしそもそも浮気なんてしないはずだ。


 それ以前につい先日市長の娘さんが亡くなったばかりのこの時期に、市長を支えてあげなければいけない立場の人間が他所の女と会うことを優先するなんて正直その神経を疑ってしまう。これがもしマスコミに嗅ぎつけられでもしたら、ただの不倫スキャンダルでは終わらず、ボロクソに叩かれるはずだ。


 ――それも覚悟の上ってこと?


「八重様。あの2人一体何がしたいんでしょう?」


 一緒に張り込みしている明里もあの2人の行動を不思議に思っているようだけど、それはこっちが聞きたいくらいだ。


 食事を終えた2人がファミレスを出ると同じ方向へ歩いていく。2人の行き先は役所の隣りにある立体駐車場だ。明里に直ぐに車をまわすように言って、わたしは立体駐車場の出口に先回りする。明里の運転する車が到着するとわたしはすぐに助手席に乗り込んだ。それとほぼ同じタイミングで駐車場から車が出てくることを知らせるオレンジ色の警告ライトが回転する。


 オペラグラスを使って出口を見る。出てきた車の運転席と助手席に乗っている人物はあの2人で間違いなかった。


「追いかけよう明里」


 明里ははいと頷いて車を発進させた。


 …………


 2人の行き先は歓楽街だった。


「資料によれば旦那さんはそんなに若くないはずですが、ずいぶんとお盛んのようですね」


 明里が何の感情ものせずにそんなことを言った。


「もしかして体の相性が――」


「わー、きーこーえーなーいー」


 耳をふさぐ。そういう話は苦手だ。明里もそれは知ってるはずで、わざとやってるのかもしれない。


「でも八重様。浮気の原因、知りたくありませんか?」


 どうやら大衆寄りの下世話な話に興味があるようだ。


 普段何考えてるかいまいちわからない明里だけど、人並みにミーハー心を持っているようだ。


「わたしの受けた依頼は浮気の原因追求じゃなくて相手の女性の住んでる場所と名前だよ。あと職場もね」


「そうですね。すいません、八重様」


「わかればよろしい」


 旦那さんたちが車を降りる。少し間を空けてわたしたちも車を降りる。ターゲットの後を尾行しながら歓楽街へ入る。


「八重様」


「うん? ――ってなにごと!?」


 明里はいきなりわたしの肩に腕を回し体を抱き寄せる。


「女性が2人で歓楽街を歩いていると事情を知らない人間に声を掛けられる可能性があります。ですので恋人のふりをしましょう」


 ナンパとか客引きとか、はたまたスカウトとか……たしかになくはない。


 実際、結構な注目を浴びている。主に明里が。パンツスーツのメガネの黒髪美人が歓楽街を歩いていればそりゃ目立つ。


 明里は……尾行には向かない。


 いやそもそも女性2人で恋人を装うって無理がある気がしないでもない。ただし――ちらりと明里の顔を見上げる――前だけを見据えて歩くその顔はとても頼もしく見えた。


 2人が例のホテルに入っていくのを確認して、わたしたちは向かいにある建物の影で2人が出てくるのを待った。


 そして……


 2人が出てきたのは日付が変わってから深夜1時を回ってからのことだった。

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