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アセンブル2 ― 14days  作者: 桜木樹
第四章 磯山みなよ 編

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10月11日

 暗い部屋。電気を消してカーテンを締め切った部屋で私は布団をかぶってノートパソコンの画面をボーッと見つめていた。


 画面ではしゃべりながらゲームをする人の動画が再生されている。いつもなら楽しいはずのその時間も今日はまったく集中できなかった。


 私の頭の中は朝倉くんの前で恥をかいたことでイッパイだった。気持ち悪い顔の女と街中を歩かせてしまったことに対する申し訳なさでいっぱいだった。


「どうして……」


 呟いてみても答えは返ってこない。


 それもこれも全部あの女のせいじゃないか――!!


 私の人生が狂い始めたのはあの女に虐められるようになってからだ。それがなければこんなことにはなってなかったはずだ。


 ――だから復讐した! だから殺した!


 でも私の日常は何も変わってない。むしろ悪くなってる。


「……そうだ……」まだ終わってないじゃない……


 あのとき私の目の前に現れた美守さんは戸波さんのことを下僕と言っていたじゃないか。


 つまり美守さんが黒幕。戸波さんを倒せば終わりだと思っていたら実はその裏にはまだ別の存在がいるっていう、2人の関係はバ○モスとゾ○マのような関係だったんだ。


 戸波玲香を裏で操っていた性根の腐った女。美守茜――


 私は再生していた動画を閉じて、BP社のホームページにアクセスして新しいメールアカウントを作成する。そして早速新しいメールを作成する。


 件名には『divineition of the spirit』


 本文には『美守茜』


 そしてなんの躊躇いもなく送信ボタンを押す。送った相手はもちろん朝倉くんだ。


 美守さんには連続殺人事件の犠牲者の一人になってもらう。戸波さんのように……


 一度人を殺しているせいか不安は一切なかった。戸浪さんと比べたら美守さんは大したことはない。所詮は金魚のフンだ。それに戸波さんがいなくなったことで独りになる機会も多そうだから今回はことがスムーズに行くはずだ。


 私はベッドの脇のサイドテーブルに視線を移した。


 自然とクスリのブリスタが目に入った。13錠だったクスリが残り3錠になっていた。


 …………


 一度寝て起きたら夕方の5時を過ぎていた。何もやる気が起きず、食欲もない。


 食欲はないけど渇望はあった。私が求めるのはクスリだ。


 サイドテーブルに手を伸ばし残り3錠になったブリスタを手にとった。なんとなくこれがどういうものなのか理解している。

 

 ここ最近のことを思う。たまに身に覚えのないことが起きている。それはまるで、自分の中にもうひとりの自分がいて、私が眠っている間に勝手に行動しているような。いわゆる夢遊病のような。いわゆる二重人格のような……


 ――二重人格? 本当に? もしかしたら多重かもしれない……


 漠然とした不安。恐怖――


 わからない――


 自分はどうすればいいのか……


 ――でも、美守さんは殺さないといけない……魔王討伐はニコチンさんとの約束だから……


「ニコチンさん……? ――って、だれ?」


 思い出そうとすると、頭が割れるように痛む。


 魔王って何? 約束? ――誰との?


 そもそもどうして私は美守さんを殺さなくちゃいけないんだっけ……?


 そのとき、つけっぱなしだったパソコンからピコンという電子音が聞こえた。


「!?」


 メールの着信を知らせる音。どうやら今朝作ったアカウントにログインしたままになっていたらしい。


「アカウントの削除を忘れてた!?」


 慌ててアカウントの削除をしようとすると、今届いたメールの頭に『Re:』の文字が見えた。


 メールの返信を示す文字。


 このアカウントを使ってメールを送った相手はたった一人しかいない。


 それってつまり……


 朝倉くんだ――!


 急いでメールを開くとそこにはこう書かれていた。


 ――杏奈さんですか?――


「杏奈さん? ……だれ?」


 もしかして私以外に別の女がいるの?


「ううん。そんなわけない。朝倉くんは浮気するような人じゃないし、そもそもそういう人がいたら疑問系の文で送ってくるのはおかしいもん」


 そうだ……そうだよ……


 目を閉じて、朝倉くんの姿を思い浮かべる。あの夏の日、私が虐められているとき、彼は私を助けてくれた。虐められるようになってから、私のことを気にかけてくれたのは彼だけだった。


 私はどうして今まで思いつかなかったんだろう。辛く苦しい時は彼に頼ればいいんだ。ほかの誰も助けてくれなくても彼は私を裏切らない。


 自然と涙がこぼれた。


 私はダメな女だ、また彼に頼ろうとしている。これ以上迷惑をかけたらダメなのに。


 頼りたいという気持ちと頼ってはいけなという気持ちで頭がぐちゃぐちゃになって、その絞り汁が涙となって目から溢れ出る。止めようと思っても止まらない涙。


 でももうこれしかないんだ――


 悲しみが押し寄せ私は自然と朝倉くんに助けを求めていた。


 朝倉くん。助けて――


 メールを送信した。


 また返事が来るかもしれないからこのアカウントは残しておこう。ほんの少しだけ不安が解消されると、ちょっとだけお腹が空いた。その空腹を満たすように私はくすりを一錠口に含んだ。

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