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アセンブル2 ― 14days  作者: 桜木樹
第一章 朝倉勇 編

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10月12日

 今朝のニュースで米座吾郎さんが遺体で発見されたことが伝えられた。そして映し出される顔写真。濃いヒゲはモミアゲから直接繋がっていて、とてもインパクトのある顔だった。

 そんな一度見たら忘れない印象的な顔はどこかで見た記憶がった。


「あ、そうだ――」――思い出した。


 たしか赤木くんが見せてくれた写真に写っていた人だ。


 今年の夏に登山へ言ったんだと自慢気に見せてくれたスマホで撮った写真。それは山頂から見える青空をバックに3人で写っていた写真で、赤木くんと赤木くんのお父さんともうひとり知らない人が写っていた。その知らない人がいまテレビに映し出された写真の人物と特徴が一致していた。


 まあそれはそれとして、せっかく情報を提供したというのに警察は何をやってるんだ。

 この体たらくぶりを見るに、美守さんのことも警察がちゃんと守ってくれるかどうかわかったものではない。とはいえ、じゃあぼくに彼女を守れるかと言うとそれも不可能だろう。


 ぼくは彼女に信頼されていないし――むしろ犯人だと思われている――今日も学校に顔を出していないためどこにいるかもわからない。そんな彼女をどうやって助けるというのか。

 仮に今言った条件がプラスの意味で揃っていたとしても、あの戸波さんでさえ太刀打ちできなかった相手をどうやって御せるというのか。


 ――あのタワーマンションの中に引きこもっていてくれればあるいは……


 セキュリティも高そうだし安全だろうとは思うんだけど……


 そんな事を考えながら歩いているといつの間にやら学校に到着。自分の教室に入るといつもより緊張した空気が張り詰めていた。その原因はすぐにわかった。久しぶりに美守さんが来ていたからだ。


 クラスメイトたちからは明らかに歓迎されていなかったが、ぼくにとっては彼女がここにいることは運がよかったと言える。

 昨日のぼくのアドバイスをどう思っているのか、できれば一緒に策を講じようと思って彼女に声をかけようとしたら、キッ――とものすごい形相で睨まれ教室を出ていってしまった。


 その後も美守さんと会話できるチャンスは一度も訪れることはなかった。彼女はぼくだけじゃなく周囲の人間に敵意を剥き出しにして何人たりとも自分い近寄らせまいとしていた。


 それは間違いなくぼくがメールの件を彼女に話した影響だった。


 でもその警戒心の強さと逃げ足の速さがあれば美守さんは無事でいられるのでは――と思った。


 …………


 明日もここに来てほしいという杏珠さんのお願いどおり、ぼくは放課後になってカムライ教にやってきた。ホールの中に入ると、偶像に祈りを捧げているはずの杏珠さんはいつもぼくが座っている席の隣りに座っていた。杏珠さんは律儀にもぼくが来るのを待ってくれていたようだ。


「あっ。朝倉さん!」


 ぼくに気がついた杏珠さんが顔を上げる。


「どうも……」


 と、声を掛けいつもの場所に座った。


「私、思いついたことがあるんです」


 昨日と同じように真剣な表情の杏珠さん。


「母の最期の予言を覚えてますか?」


 杏奈さんの最後の予言――


 ――7月21日、杏奈さんがこの世を去るということ。


 ――10月13日、世界は終りを迎えるということ。


 ぼくは覚えていると言ってとうなずいた。


「重要なのは2つ目の、世界の終わりの方です。この予言をした後母は『祈り続ければ世界の終わりを回避できる』と言ったのを覚えていますか?」


 それもハッキリ覚えている。


 だからこそ、カムライ教に残った信者の人たちと杏珠さんは、毎日偶像に向かって祈りを捧げていたんだから。


「私をはじめカムライ教に残ってくれた人たちは、これまでずっと祈り続けてきました。――ですが、その祈りが本当に天に届いているのかと言うと、それは定かではありません」


「え!?」


 敬虔なはずの杏珠さんが教義を否定するような発言をしたことに、ぼくは正直驚いた。


「ですけど、直接、確実に天に祈りを届ける方法を思いついたんです! それが朝倉さんのメールなんです!」


 杏珠さんはちょっぴり興奮しているようだった。


「ぼくの、メール?」


 杏珠さんの考えがわからず首をひねる。


「はい。昨日母からのメールに返信したらメールはちゃんと届きましたよね? つまりこれは天にいる母のもとにメールが届いたということです。だったら、そのアドレスに直接祈りのメールを送ればいいんじゃないかって思ったんです。それも1通や2通ではなくて、大勢の人で沢山の祈りのメールを届けるんです!」


「な、なるほど……」


 そうは言うけど、ぼくはほんとに10月13日に世界が終わるなんて思ってない。


 でも、それで杏珠さんの気が済むならいいかなって……そう思った。


 その後、杏珠さんはこれからの予定をぼくに語った。その内容を語る杏珠さんは生き生きとしていてとても輝いていた。そんな彼女の姿に見とれてしまって、杏珠さんの語る話の内容はほとんど頭に入ってこなかった。


 覚えていることだけを要約すると、10月13日――つまり明日の夜10時から一斉に祈りのメールを送ろうということらしい。

 10月14日を迎えることができれば世界の終わりを回避したことになるということで、とにかく翌日までの2時間を使って祈りのメールを送り続けるとのことだった。

 人はどうやって集めるのかについても語ってくれた。おそらく、今も足繁くカムライ教に通ってくれる人は絶対に参加してくれるだろうとのこと。それだと、全員集まったとしても人数は数十人ほど。

 ぼくは別にそれでも十分なんじゃと思ったけど、杏珠さんはもっともっと必要だという。

 そこで、毎年10月13日に行われる“お焚き上げ”に来る人に事情を説明して参加してもらおうということらしい。お焚き上げというのは宗教的な観点から自分で捨てることが躊躇われるようなものなどを神事の一環として燃やして供養することで、煙や灰を天に登らせることで神様の元へ送るというような意味合いが込められている。

 カムライ教ではその行事が毎年10月13日に行われていて、基本的にはカムライ教で配っているお守りを燃やす。そしてまた新しいお守りを購入するという流れ。


 ちなみに、神無月と呼ばれる10月にお焚き上げをやって意味なんてあるのかって思うかもしれないけど、それにはちゃんとした理由がある。それは毎年10月にお焚き上げをするから、神様はどこにも行かないでそこにいてくださいねという願いが込められているのだ。

 この町が昔、神に見放された町と呼ばれていたとかで、一時たりともこの地から神様がいなくなることを良しとしない考え方があるのだ。

 ただし、今年のお焚き上げはちょうど13日に台風の接近が予想されているため延期になるのだそうだ。


「カムライ教をすでにやめてしまった人は、お焚き上げの延期の話は知りません。連絡手段がありませんから。ですから、お守りをまだ大事に持っている人はカムライ教に足を運んでくれるはずなんです。せっかくここに足を運んでくれた人に、延期になりましたと言ってそのまま返すのもあれなので、どうせなら手伝ってもらいましょう」とは杏珠さんの発言だ。


 言い方は悪いけど、ちょっとずる賢い。


 そんなわけで、明日の夜はここカムライ教ホールで一大イベントが開かれることになった。

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