表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アセンブル2 ― 14days  作者: 桜木樹
第一章 朝倉勇 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/87

10月8日

 10月8日、月曜日。全国的には祝日である。しかし、二学期制が採用されているぼくの高校には適用されない。授業時間の確保という名目で登校日になっている。


 …………


 本日の授業がすべて終わり、帰りのホームルームが始まる前、学校の前が少し慌ただしくなっていた。

 その事に気がついたクラスメイトが教室の窓から身を乗り出すようにして校門の方に興味を向ける。ぼくもと赤木くんも同じように外の様子を見ていた。隣のクラスをはじめ、校門側に位置する教室の窓際は全部同じような状態だった。


「なんかマスコミぽいよ」


 クラスメイトの誰かが言う。その言葉のとおり、腕章をつけた人、それから撮影用と思われるカメラを構えている人も見える。


「でもなんでマスコミ? 誰かなんかした?」


「章とか取った?」


 あれやこれやとクラス中がざわつく中、教室の扉が開き、担任の先生が入ってきた。窓に集まる生徒は一斉に自分の席についた。


「ええー、皆さんに大切なお話があります」


 いつもと違う厳粛な態度で先生は咳払いし、こう告げた。


 ――昨夜、戸波玲香さんが亡くなりました――


 教室がシンと静まり返る。ただひとり、


「ウソでしょ!?」


 美守さんが荒々しい音を立てながら立ち上がる。


 それからクラス中でひそひそ話が始まる。


「うそ……だろ……?」


 前の席に座る赤木くんがゆっくりとぼくの方を振り返る。相当なショックを受けている様子だった。


 ぼくも同じ気持ちだった。


 赤木くんとぼくは、ほかの生徒と違って戸波さんが死んでしまったことの重大さを別の意味で理解している。


 予言――


 予言がまた当たってしまったのだ……


「皆さん落ち着いてください。それから美守さんは一旦座りなさい」


 先生が続ける。


「すでに校門前の状況を知っていると思いますが、決して相手にしないようお願いします。いいですか?」


 クラスのみんなが「はい」と返事をする。


「中には謝礼という言葉をちらつかせて話を聞き出そうこうとする者もいるそうですが、そういった物に惑わされないように。彼らの仕事は戸浪さんの死を面白おかしく報道することです。適当な発言をして彼女の死を弄ぶことに協力することのないようにお願いします」


 その言葉でホームルームが終わった。


 先生が教室を出ていくと教室内は一気に騒然となる。しかしそれもクラスメイトの数が減るに連れ少しづつ落ち着いてきを取り戻していく。


「これって……やっぱあれだよな?」


 ぼくに話しかけてくる赤木くんはいつものおちゃらけた感じがない。至って真面目な様子。


「いや確かに、戸波はムカつく奴だったけどよ。あのときは死ねばいいって言ったけどよ……ほんとに死んじまうのかよ……」


 ぼくは開いた携帯を見つめる。


 本文に書かれた戸波玲香の文字――


 屋上で言っていた『返り討ちにしてやるよ』という言葉は現実にはならなかったわけだ。彼女ほどの腕自慢がこうも簡単に殺されてしまうなんて……


「犯人の目的は何なんだろう……こんなことをして楽しいのかな?」


 自然とそんな言葉が口をついて出た。


「さぁ……面白いとは思ってねぇんじゃねぇの。ただ、本人は至って真面目なんだろう」


 赤木くんが犯人に寄った意見を述べた。


 それに対してぼくは犯人は根っからの殺人鬼なんだと思った。きっと人を殺すことを心から楽しんでいるに違いない。

 戸波さんを除けばこれまで殺された人たちは赤の他人だ。戸波さんにしたってあの件を除けば全くと言っていいほど交流はなかった。

 そんな人たちでも、殺されたという話を聞いていい気分はしないものだ。


 許せない――という感情さえ湧いてくる。


 しかもその殺人鬼が犯行に及んでいる場所は上納市だ。そいつがぼくの活動範囲内に潜んでいたっておかしくはない。


 すると、突然。携帯電話が振動する。


「うわあっ!」ぼくが驚くと「のわああ!」と赤木くんが、驚いたぼくに驚く。


 驚いた拍子にぼくは携帯を床に落としてしまう。


 それを拾って携帯を確認する。


 なくなんとなく予想は付いてるけど……


「やっぱり――」


 それは予言のメールだった。


 アドレスは相変わらずの適当な英数字の並びで、件名は『divination of the spirit』。本文には『流尾寛平』と書かれている。読み方はよくわからないけど、人の名前であることはもうわかっている。


 このタイミング、まるで今のぼくの心情をあざ笑うかのようだ。


 ぼくの携帯を覗き込んでいた赤木くんと顔を見合わせる。2人同時に深いため息をついた。


 …………


 夕方のニュースでは、早速戸波さんのことが報道されていた。


 “同じ学校に通う生徒”というテロップが表示され、インタビューに答える生徒の姿が映る。顔は隠れていて音声も加工されているけど、着ている制服が上ノ木高のもだった。


 ――人の口に戸は立てられないと言うから、こういう生徒が出てくることは予想できていたけど……


 今回の事件は、先に起こった3つの事件よりもより大きく報道されていた。


 無理もない……


 なにせ戸浪さんは上納市町の娘なんだから。もちろん直近に起きた事件だからってこともあるだろうけど、市長の娘というファクターはかなり大きいようだ。


 生徒のインタビュー映像が終わると、テレビには上納市役所が映し出され、その入口付近をカメラが捉える。そこに映るのは数人のスーツ姿の男性。その中心にいるのが市長。


 市長は悲痛な面持ちで自分の今の心情を吐露し、話をしているうちにヒートアップして犯人に対して怒りをぶちまけ始める。隣りにいた秘書と思われる男性にたしなめられると視聴は落ち着きを取り戻す。


 最後に市長はカメラに向かって犯人に自首するよに訴えかけていた……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ