第39話 諦めない希望(挿絵あり)
手描きの挿絵があります。
苦手な方はご注意下さい。
「ど う し た、どうした?
殴るんじゃ無かったのか?当たらないよ?」
ウリョクは自身に回避能力を高める能力を三つ付与して、トライスシの猛攻を容易に回避していた。
「ン天使の君は地上では長時間、力を発揮できないだろう。
それにさっき混沌の邪神から受けた傷がー、癒えてないようだね。
私には関係ないがー、このままだとお前消滅するよ?」
「ここで逃げれば、貴方はまた同じ誤ちを繰り返すでしょう。
ならば、我が命に賭けても、貴方の性根を叩き直さなければならない!」
「ンー、声が弱ってるねぇ。
いっそ私の手で楽にしてやるか。」
ウリョクは自身に付与した能力を回避関連から、速度関連をそのままに攻撃関連に付け替える。
そしてトライスシの攻撃を捌き、地面に叩き付ける。
「神 と 天 使 の 力の差は歴然だよ。
ンだが、私は加減はしない主義でね。」
シナンは助太郎を抱え、空にそびえ立つ塔の横を沿い上昇する。
塔の最上階を目指している様であった。
(シナンは何を、そうか!
その命が尽きる前に天使か天人に進化する事で、生きながらえられる可能性を考えたのか!
今トライスシさんを追い掛けても戦力にはなれないなら、それが一番可能性があると思ったんだ。)
助太郎はシナンの意図を推測する。
その推測は実際当たっており、天使に進化する事でもうすぐ力尽きる運命を変え、あわよくば力を得てトライスシに援護に向かう算段だった。
シナンは塔の頂上を目指し、まだまだ飛翔するが、段々と速度が下がってきている。
速度の低下に気付いたシナンは、塔の筒抜けの窓から内部に侵入する。
そして残りの力を振り絞り、壁に沿った螺旋階段を低空飛行する。
塔の最上階の一つ下の階層を抜け、螺旋階段を飛行するが、
「ガっ」
赤い光の片翼が消え、その場にガチャンッと音を立てて倒れる。
「シナン?シナン!!まさか間に合わなかったのか!?」
ここまで連れて来られた助太郎はシナンが動かなくなり、絶望しかける。
だが、
「…いや、まだだ。
俺だけ、諦めちゃいけない!」
助太郎はシナンを背負う。
「ッ!」
左腕と左脚が金属製の義肢で身体の左半分は怪物なシナンは、並の人間よりも体重がとても重たいのだ。
それでも助太郎はシナンを背負い、先の見えない螺旋階段を登り始めた。
......、
助太郎はシナンを背負ったまま階段を登り続ける。
手足が痛む。特に足は止まりたいと言わんばかりに、内側からジワジワと痛む。
だが一度止まれば長時間、動けなくなってしまうだろう。
だから止まれない、休めない。歩み続ける。
階段を登り始めて何時間経過したかはもはや分からない。
空はもうすぐ夕方になりそうだ。
自分だけが諦めたくない。その一心で歩み続ける。
そしてその歩みは無駄ではなく、
「!」
上への階層が見えて来た。
歩む速度を上げ、最上階へどんどん近付く。
そして、塔の頂上、100階層。
周りは風は静かに吹き、何本か太い柱が立っている。
そしてこの階層の中心には、いかにもな広い台座があった。その台座には魔法陣が描かれている。
助太郎はシナンを背負ったまま、その台座へ向かう。
しかし、台座に上がってとうとう力尽きシナン共々、助太郎は倒れた。
「もう、身体が、動か、せ、ない...。」
助太郎の意識は薄れ、気絶する寸前、台座の魔法陣が光り、空から光が差し込む。
すると動かないシナンの身体は、光の差し込む空へ消えていった。
「シナ...ン...。」
助太郎はその光景を見て、深い眠りに着いた。
……………、
その数分後、助太郎の倒れる台座に何者かが勢いよく降り立つ。
その者はピンク色と赤色の体に緑色の両腕両脚が付き、緑色の四角い翼が4枚付いている。
「ツセナヲー!かいさ"のく!」
その者は何か言っているが、眠りに着いた助太郎には聞こえない。
「とくさ、ヌサえねうよんへ。
ね"よ、ノワキツチよナツせひキさはきのきせはきさわ、サキムスヤモクおヌサくろ。」
その者は助太郎に寄り添い、白い光を浴びせる。
「ん、疲れが、無くなって、そうだ!シナンは!?
うお!?」
「ろさっな、クヤすきっな。」
助太郎は疲労が無くなり目を覚ます。
目の前のピンク色の者に驚くが、見覚えがありすぐに落ち着く。
「もしかして、シナン、なの?」
「けーの、かか、とくな"。キヤまネンニほツサ"ナな"っなへ。
とえひツサ"ナまサけわえうんな"っな。」
ピンク色の者は一瞬光に包まれ姿を変える。
その姿は、身体が人間部分だけで着物も破れていないシナンの姿だった。
「やっぱりシナンだったのか!」
「ソノマ"まアさわはきせの"、ハヒおキっねうさハンのはすアさう!
とく、アナチなチハンな"!」
「その仕草、声や喋り方、シナンだ!
天使か天人になれたんだ!」
助太郎とシナンはその場で喜ぶ。
互いに言葉は通じていないが、何を言っているかは大体分かる様だ。
「たか、ノワキツチおナツせひキそく!ヌサやっね!」
シナンは助太郎に手を出す。
「捕まって、って事かな?」
助太郎はシナンの手を取る。
すると、シナンは助太郎を抱え込み、走って助走をつけて塔から飛び降りる。
「うおおおおお!?」
「そえさわアナチナニさ"マチ"えねカっなかほヨイめキスロ!
とそね"ノワキツチさ"ナナサっねう。」
シナンは再度、天使の姿となり助太郎を抱えてある場所へ飛翔し向かう。
その場所は、助太郎とシナンが初めて会った森、ピリオド大森林だった。
ご覧頂きありがとうございました。
今回の台詞を翻訳するとこうなります。
「ツセナヲー!かいさ"のく!」
→「スケタロー!ありがとう!」
「とくさ、ヌサえねうよんへ。
ね"よ、ノワキツチよナツせひキさはきのきせはきさわ、サキムスヤモクおヌサくろ。」
→「そうか、疲れてるもんね。
でも、トライスシも助けに行かないといけないから、回復魔法を使うよ。」
「ろさっな、クヤすきっな。」
→「よかった、上手くいった。」
「けーの、かか、とくな"。キヤまネンニほツサ"ナな"っなへ。
とえひツサ"ナまサけわえうんな"っな。」
→「えーと、ああ、そうだ。今は天使の姿だったね。
それに姿は変えられるんだった。」
「ソノマ"まアさわはきせの"、ハヒおキっねうさハンのはすアさう!
とく、アナチなチハンな"!」
→「言葉は分からないけど、何を言ってるか何となく分かる!
そう、私はシナンだ!」
「たか、ノワキツチおナツせひキそく!ヌサやっね!」
→「さあ、トライスシを助けに行こう!捕まって!」
「そえさわアナチナニさ"マチ"えねカっなかほヨイめキスロ!
とそね"ノワキツチさ"ナナサっねう。」
→「これから私達が初めて会ったあの森へ行くよ!
そこでトライスシが戦ってる。」