第34話 結果は...
シナンは未だ先が見えない階段を駆け上がる。
助太郎は奈落に浮かぶ2つの足場を跳び、突破する事を目指す。
制限時間は残り10秒。
シナンは速度を緩められず、助太郎はこれが最後の挑戦になるだろう。
シナンはがむしゃらに階段を駆ける。
10段、50段、100段、1000段…
その駆け上がる速度は今後の人生で、もう出せないかもしれない。
それ程のスピードで突き進む。
そのスピードのおかげかとうとう頂上が見え始める。
シナンは更に加速し、靴や足が擦り減るような速さとなる。
助太郎はスタート地点の端から助走を付ける。
かなりの回数を行った分、コツは掴めている。
後は時間の問題だ。
走り、跳ぶ。
1つ目の足場に足を付け、勢いそのままに跳ぶ。
2つ目の足場にも届き、奈落の向こう側へ跳ぶ。
2人の結果は、
「はぁーッ、スーッ、はぁーッ、スーッ…」
「ゼェッ、ゼェッ…」
シナンは階段頂上の広場に、助太郎は1つ目のコースを突破していた。2人ともその場に息を上げながら倒れている。
ちなみにシナンが付いた広場は試練のゴールである。
しばらくして、2人は転送の光に包まれる。
「「…ハッ!」」
転送の光が収まり廃墟の外に出ると、試練を受ける直前の疲労具合になった。
突然の回復に2人は驚く。
「試練から戻ったら、試練中の疲れは無くなるんだね。」
「そうみたい。
お、身体いつもより軽い。」
試練中に受けた怪我や疲労は試練終了後に、試練開始前の状態に戻るのである。
シナンは〈気の試練〉,〈魔の試練〉,〈筋の試練〉を攻略したため、強い精神力,膨大な魔力,強力な力が足された。
また海の中心にそびえ立つ塔の頂上へ着けば、天使に転生するか、人間のまま天使の力をその身に授かるかを選ぶ事ができる。
シナンは天使に転生する事、一択である。
助太郎は〈気の試練〉のみ攻略できている。
試練を攻略はできなかったが、本人にとっては良い経験になった。
「そうだ、テンカさんにお礼言ってこようよ。
テンカさんが試練の内容を教えてくれたから、頑張れたところもあるからね。」
「たしかに、まだこの近くにいるかな。」
2人は来た道を戻る。
「あれ、何か聞こえない?」
「ん?あ、本当だ。
金属がぶつかる音が何度も聞こえる...。」
シナンと助太郎は急いで音の鳴る方へ向かう。
その音の正体は、テンカとアトウが何者かと交戦しているものであった。
アトウは巨大な刀を使い、テンカは全長2m越えの大剣を振るっていた。
テンカの厳つい体格と高い身長にも劣らない、巨大な大剣である。
そんな2人を相手に抗戦する者は1人。
全身が赤く肩は横に鋭く飛び出ており、背中からは赤く光る手の様なものが生えている。
目は黒いが瞳孔は赤黒く、まさに怪物の姿であった。
その怪物は腕や脚で相手の武器に対抗していた。
その者の後ろには、如何にも怪しい外見の科学者らしき人物が数人いた。
「テンカさん達が戦ってる、加勢する?」
「あ、あの人達は…」
「シナン?」
シナンは奥にいる科学者達を見て、驚愕する。
「間違いない。私の身体に改造したのはあの人達だよ!」
「なっ!?」
シナンの身体を左半分改造し、義碗、義脚を取り付けた張本人達を見つけてしまった。
「そうか、じゃあ、やる事があったよね。」
「うん、そのためにも一旦戦闘は止めてもらおう。」
シナンと助太郎は交戦している場へ向かう。
「探しましたよ!」
シナンの声を聞き、周りの人達が一瞬止まる。
テンカと怪物の様な人は互いに刃と腕を弾き、距離を取る。
「シナン!スケタロウ!こっちへ来るな!!」
「早く逃げるのだ!」
テンカとアトウは敵から視線を逸らさず、この場から離れるよう訴える。
「ん?誰だ?」
「あの姿、試作品ではないか?」
「いや、時期的に有り得なくね?」
科学者達はシナンを見て騒ついている。
「私は!皆さんにお礼を言いに、ここへ来ました!」
シナンは自分の目的を真っ先に述べる。
「まずテンカさん!試練の内容を教えてくれたおかげで、筋の試練を攻略できました!
本当にありがとうございます!」
「お、おう…だが今言う事か?」
テンカは変わらず敵から視線を逸らさないが、表情は少し困惑している。
「そして、科学者の方々!
理由はどうあれ、私に力をくれてありがとうございましたっ!
この力のおかげで、沢山の人を助けられました!」
シナンは自身に改造手術をした科学者達に、率直に思う事を述べた。
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