第33話 筋の試練
転送の光が薄まり辺りの様子が段々と見えてくる。
目の前には底が見えない奈落の上に浮いた床が間隔を空けて設置されている。
その先には流れが強い水場が見える。
そして何より身体が重い。
「これが、アスレチック?」
「立ち上がるのでやっと何だけど!?」
それもそのはず、この空間では重力がこの星の20倍高いのだ。
突然そんな負荷がかかれば立ち上がる事すら厳しいだろう。
そして試練開始の鐘が鳴り響く。
「制限時間は5分だったか。
シナン、早く行った方がいい!」
「う、うん。分かった、先に行くね!」
シナンはジャンプで浮いた床を渡り先へ向かって行った。
助太郎も走って助走を付け、床を渡ろうとするが、
「あ、やばっ、あああああああ…!」
助太郎は思ったよりも高くジャンプできず奈落の底へ落ちていった。
「…はっ!」
助太郎が気付くとスタート地点に戻っていた。
奈落に落ちてもスタート地点に戻るだけで済むのである。
ほんの少し時間は遡り、シナンは逆流の激しい水場を泳いでいた。
水中以外に進む道がないからだ。
体左側の改造された箇所が重く水泳にはかなりの体力を使わされる。
幸い水泳距離は短く泳ぎ切るのにあまり時間は取られなかった。
水場を上がると風が吹いているのが分かる。
目の前には一切の凹凸がない傾斜が急な坂がそびえ立つ。
シナンは坂を駆け上がる。
この坂に吹く逆風と凹凸のない床に体力を奪われる。
距離もそこそこあり転ばないようにかつ、早く駆ける。
なんとか坂を登り切るがシナンの息は上がり始めている。
坂を登った先は崖になっており、下には横長の鉄棒が宙に浮いている。
「ここから飛び降りてあれを掴めって事ね。」
シナンは助走を付けて崖から飛び降りて浮いた鉄棒に手を伸ばす。
一方、助太郎は、
「あああああああっ…、はっ!
やっぱりこの間隔には慣れないや。」
未だスタート地点にいた。
1つ目の浮く足場に届く事は安定してきているが、2つ目の浮く足場には中々届かない。
「せめて、これだけでも成功したいな。」
シナン側に戻る。
シナンは鉄棒を掴む事に成功している。
そして鉄棒を掴んだと同時に、前方に横長の鉄棒が現れる。
その光景は足場がなく、先が見えない巨大な雲梯だ。
(この棒を掴みながら進んで行くのかな。キツイなぁ。)
シナンは前方の鉄棒を掴みながら雲梯を進んで行く。
進んで行くとすぐに足場が見え始める。
シナンは足場を目指し腕を進ませる。
足場の下まで辿り着き、手を離して着地する。
「はぁー、はぁー、腕がっ」
この地点は左右が高い壁に挟まれて、下り坂になっている。
シナンは数秒休み、足場から先へ歩く。
すると、背後に高い壁が現れる。
その壁には異常な数の針が付けられている。
針の付いた壁はゆっくりと一定の速度で進み、迫り来る。
「休ませてっ、貰えないかっ!」
シナンは下り坂を駆ける。
道中に障害物はなく、壁が迫るまで割と猶予はある。
下り坂を駆けて行くと、先に入り口が見える。
シナンは見えた入り口に飛び込む。
飛び込んだ部屋は暗く、中央に一筋の光が差し込んでいる。
光には1本のロープが下がっていた。
(この部屋の中は灯りにロープがあるだけ。
つまり、このロープを登れって事ね。)
シナンはロープを手に取り、登り始める。
20倍の重力下で自身の飛翔能力で飛ぶかロープで登るかを考えて、登る方がいいと判断した。
(残りの制限時間は分からない。急ごう!)
一方、助太郎は、
「とおっ!よっ!はっ…あら?あああああああっ…!」
浮いた床の2つ目まで安定してきたが、まだ成功しない。
「ゼェ…勢いを止めずにっ、一気に跳んだ方がっ、安定するかっ。ゼェ…
残り1分、間に合うかっ?」
シナン側に戻る。
シナンは無我夢中でロープを一気に登る。
すぐにロープの先の足場が見えてくる。
勢いそのままにロープのコースを登り切る。
「はぁーっ、はぁーっ、はぁー…」
シナンは息が上がっている。
それでも時間がない事は分かっているため、すぐに目の前を見る。
目の前には上への階段があった。
階段の頂上は見えないが、
(行ける!)
シナンは階段を駆ける。
息は上がり、腕は痛むが、まだ足には負担が少ない。
足を止めず階段を駆け進む。
助太郎は浮いた足場の突破を目指し、何度も挑戦する。
この時、2人は同じ事を考えていた。
((間に合えっ!!))
試練終了まで、残り15秒。
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