第31話 次章の舞台は②
大海原を青き者、トライスシが飛翔する。
その速度は地球の航空機にも引けを取らない。
依然の洞窟内の閉鎖的で入り組んだ空間で飛ぶ速度とはまるで違う。
進む先は今も遠くへ見える海から天空へそびえ立つ高く巨大な塔。
じわじわと塔に近付いてきているのが分かる。
『後少しであの塔へ辿り着く。
海から少し上にある入り口に着地するよ。』
「「分かりました!」」
そう話してから1分も経たない内に塔の入り口である1階層に着地する。
トライスシは助太郎とシナンの2人と交代し戻る。
「ここが後々シナンが登る事になる塔か。
とても…大きい…。」
塔自体は石垣のようだが何度も波が当たっているはずだが削れた後も風化した後もない。
とても巨大な筒抜け出入り口が空いているが中は更に広い。
もう夕日が沈みそうで暗めだが、塔内部は夕焼けが側面の窓であろう穴から入り込み橙色に染める。
塔内部の構造は1階毎に凄まじく広い階層。
壁には窓の穴がいくつも空いており、螺旋階段が伸び天井まで続いている。
この構造が百階層まで続いているのだ。
塔は海底から伸びており海中には部屋はない。
「今日はもう夜になるからここで休んで明日出発しよっか!」
シナンはこの塔一階で野宿をする事を提案する。
助太郎、トライスシも異論はない。
波が当たらない程度の距離で焚火を起こし、夜食は海で釣りをした。
1時間程釣りをしたが1匹しか釣れなかったため手持ちの食料も使う事にした。野菜がそこそこあるため鍋にする事にした。
助太郎は渡された調理道具一式で魚を捌く。
「スケタローって魚を捌けるんだね。」
「故郷にいた時は料理動画をよく見てたからね。
その時魚の捌き方もよく見てたんだ。」
助太郎は料理を見るのもするのも好きなのだ。
「家でもやってたけど、あっ、やっぱり難しいな。
剥いだ皮に身がかなり残ってる...。
上手い人のようにはいかないな。」
捌いた魚は決してプロ程の出来ではないが、素人がするよりは上手い出来であった。
捌いた魚と野菜もいいサイズに切り、鍋で茹でてしばらくして完成する。
「「いただきます!」」
味は調味料が地球程発達してないのもあって薄味だが、不味くはなく十分食べられる出来であった。
残さず食べ終える。
「「ごちそうさまでした。」」
使った調理道具や食器を洗い片付ける。
ちなみに海には何も流していない。
食事からしばらくして2人は焚火を囲う。
「次はサバイヴ大陸の〈筋の試練〉だよ。
サバイヴ大陸は乾燥した荒野の大陸で、今までよりも過酷な旅路になるからしっかり休もうね。」
「うん、分かった。
それにしても〈混沌の邪神〉の手掛かりが全然掴めない。」
助太郎はこの星へ連れ去った(自称)宇宙人に〈混沌の邪神〉を討伐する事を帰す条件にされている。
シナンの旅路が優先されているとはいえ、手掛かりは掴めていない。
〈混沌〉というモノには会ったが関係性があるかは不明。そもそも〈混沌〉が何なのかも分からないのだ。
「ごめんね、私が最低限の地域しか向かわないから…」
「いや、そんな事はないよ。
人助けでよく寄り道してたからね。
まあ、〈混沌の邪神〉は一般的に知られていないモノという事は分かったからね。
そろそろ寝ようか。」
「…うん。」
2人は寝袋に寝静まった。
次の日の朝、
「おはよー。」
「おはよう。」
2人は目を覚まし寝袋と焚火を片付ける。
朝食に軽くパンを食べる。
シナンは軽く身体をほぐし、飛ぶ準備をする。
地図とコンパスのような物を見て方向を確認する。
「さ、そろそろ行こうか。
私を離さないようにね。」
「うん、頑張る。」
シナンは助太郎を担ぎ上げ、おんぶする。
「よーし、行っくよー!」
シナンはサバイヴ大陸の方角に目掛けて赤い光の翼を展開し飛翔していった。
大海原を飛翔する事3時間、サバイヴ大陸に着陸する。
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