第30話 天使の故郷
マジク大陸の西部にある小さな村に助太郎とシナンの2人は辿り着く。
この村で次の目的地サバイヴ大陸へ行くための支度をするので早速店らしい建物に入る。
「いらっしゃい。」
店内は簡素で日本にある駄菓子屋程度の広さだ。
とても広いとは言えないが最低限の商品はあるため買い物に支障はない。
食料をいくつか購入し店を後にする。
「ありがとうございました。」
旅支度は終えたので後は村の先にある海へ行ってサバイヴ大陸まで飛んでいくだけだ。
「これで準備は終わったかな。」
「この村、地図には載ってたけどとても人が少ないね…。
欲しい物は揃ってたけど。」
『…。』
「じゃあ海へ行って少し休もうか。」
シナンが飛んでいくため浜で少し休んでから向かう予定だ。
海へ向かおうと村を歩くと人の写真が貼られた掲示板が目に付く。
掲示板にはこの村から旅立ち、功績を残した者が貼り出されている。
その貼り紙には〈トライ〉、〈スクラー〉、〈シミュレ〉の名前と顔が書かれていた。
シナンが掲示板の前で足を止める。
「んー?」
「どうかしたの?シナン。」
「この〈トライ〉って人、何処かで見た事ある気がするんだよね。思い出せそうで思い出せない...。」
「ん、あ、確かに!なんか見覚えがある。
…この3人、同じチームだったのか同じ模様が入った服を着てるね。この模様も見覚えがあるような。」
「ホントだ、見覚えある。
そうだ、この模様はコレで…」
シナンが懐からトライスシのリングを取り出す。
「「……そうだ、トライスシだ!!」」
『…。』
掲示板のトライという人物の外見は青肌に目上に前髪がかかった黒髪である。
ちなみにスクラーは黒髪の人間の男性でシミュレは額の左に角が生えた鬼人という種族の女性だ。
『気になるなら話そう。
これは365、いや382年前の事だ。
ワタシは元々この村の出身だったのだが、精霊の森に迷い込んだ日に成り行きで魔の試練を攻略できてしまってな。』
「うんうん。」
『それからノリで他の試練にも挑戦する流れになってしまってね、幼馴染みだったスクラーとシミュレも同行したんだ。』
「なるほど。」
『それでナチュラ大陸で気の試練、サバイヴ大陸で筋の試練を受けてそれらも攻略できてしまったわけだ。』
「そうだったんだ。」
『そしてここまで来たら塔も登ろう、とスクラーとシミュレにも言われてね。
それで2人の協力もあって塔を登り切る事に成功したんだ。
流れとは言え塔を登り切れたのだからワタシは天使に進化する道を選び、スクラーとシミュレに別れを告げて天(衛星)へ行った。
そして天使となった際に別の名を名乗るとワタシは決めていて、トライスシと改名したんだ。
村に功績者として讃えられいるのは、村に帰ったスクラーとシミュレが旅路を語り村の伝承になったからだろう。』
「詳細はかなり省略されてるけど大まかな流れは分かったよ。
でも大陸を跨ぐ移動なんてよくできたね、かなりお金がかかったんじゃない?」
『旅の費用は当時の勇者教団が負担してくれたんだ。』
「ああ、あの団体は凄いなぁ。」
「トライスシはこの村を見ていきたいとは思わないの?」
『天(衛星)にいた時から地上を見るついでに故郷の様子を必ず見ていたからね、この村の様子は分かっているよ。
だが、昔話をしてスクラーとシミュレの墓参りをしたくなったかな。』
「じゃあそこに行こうよ。」
『いいのか?』
「もちろん、トライスシにはいくらお礼をしても足りないからね。」
『礼が足りないのはこちら方だと思うが、御気遣いありがとう。』
会話をした後2人は村の高台、墓地へ向かう。
トライスシの頼みでシナンと助太郎はトライスシと交代する。
トライスシは2つ並んだ墓の前に立つと跪き、数分間その場で祈った。
数分後、祈り終えて立ち上がる。
『よし、ありがとう2人とも。
この際だ。サバイヴ大陸へ行く道中、塔までワタシが飛んで行こう。』
「え、いいんですか?
トライスシは地上では長くいられないよね。」
『だから塔までなんだがな。まだ数分は出ていても問題はない。
では行くぞ。』
トライスシは墓から少し距離を置き、4枚の翼を展開させ静かにその場を飛び上がる。
「ゴオォッ!」
そしてそのままサバイヴ大陸の方向へ真っ直ぐ飛んで行ったのだった。
ご覧頂きありがとうございます。




