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第28話 得られたもの

 時間は少し遡り、助太郎が背後からの足音に気付き振り返った直後のこと。


「な…!?父...さん…?母...さん…?」


 助太郎の目の前には自分の親、父と母がいた。

 助太郎は家族仲が良く、大学卒業後はいい企業に就いて親孝行をする予定だった。

 しかし、大学登校中に宇宙人の連れ去られ、地球から遠く離れた惑星スサノに連れて来られた。

 惑星スサノに来てから8日になる。

 寂しさの感情はない訳ではないがずっと押さえてはいた。なるべく早く元の星へ帰るには冷静でいなければならないと思っていたからだ。


「お前はいつ帰って来るんだ?」

「あの怪しい宇宙人の言う事を聞いて帰れると思ってるの?」


 親の姿をした2人は助太郎の気にしている事を聞いてくる。

 だが、


「父さん!母さん!会いたかったっ!」


 助太郎は2人にハグをした。

 目に涙を浮かべ喜びと悲しみが合わさったような表情になっている。


「…おい、分かってると思うが本人じゃないぞ。

 いいのかそれで。」

「このままだと試練は失敗するよ。」

「分かってる!だけど、分かってても、抵抗しようがない事もある!」


 助太郎はハグしている相手が親の姿をした何かである事は分かっている。

 しかしそれでも、拒むことはできない、そんな相手なのである。


「元々試練はシナンがやるついでで俺もやってるだけで、俺が攻略するかしないかは関係ない。

 …それと、あの宇宙人がもし帰らせてくれない場合は別の方法も考える。宇宙へ飛び立つ技術を何とか習得したりね。どれだけ難しいか想像も付かないけど。

 あと、シナンやトライスシに恩を返しきれていない。せめて助けてくれた人たちに恩を返したい。

 だからもうしばらく帰りは遅くなる。

 だけどいずれ、必ず、絶対に、帰ってくる。約束する。」


 助太郎の父と母の姿をした何かはそっと助太郎の背中と後頭部を撫でた。

 助太郎が長話を終えて親の姿をした何かから離れる。


「…って、本当の父さんと母さんじゃなかったな。

 なんか一方的に俺の意見をすみません。

 それと、ありがとうございます!」


 助太郎は目の前の2人に深く頭を下げた。

 2人は笑みを浮かべ、


「こちらこそお前の痛い所を突いて悪かったな。

 だがそれは試練の内容故だ。」

「試練は攻略失敗になる。正直成功としてもいいとは思うけど。」

「構いません。」


 助太郎はゆっくり頭を上げる。


「もう試練とは関係ないから言える事だが、故郷に帰れるといいな。応援してるぞ。」


 2人の姿はゆっくり消えていった。


「はい。ありがとう、ございます。」


 助太郎は声を絞り出した後、しばらくその場で立ち尽くしていた。



 しばらく時間が経ち、壁の1部分が開く。

 そこから何やら声が聞こえてからシナンが出てきた。

 シナンは立ち尽くしている助太郎の元まで駆け寄る。

 助太郎の目元は涙を流したかのように赤くなっている。

 シナンは察して話しかける。


「スケタロー、もしかして試練は…。」

「うん、ダメだった。

 でもいいんだ、これで。」


 シナンの方へ振り向いた助太郎の表情はどこか満足気だった。

 その表情を見てシナンは安心する。

 そして2人は眩い光に包まれる。


 光が収まると遺跡の外に出ていた。

 遺跡の前で待っていたタヌが寄ってくる。


「お疲れさん。2人とも、何か収穫はあったみたいだな。」


 タヌは2人の表情を見て何か察したようだ。

 2人とも表情は引き締まり口は笑みを浮かべている。


「ああ!試練は攻略失敗したみたいだけど、おかげでやりたい事ははっきりした。悪くない気分だよ。」

「私もやるべき事がハッキリとしたよ。試練も攻略できてなんだか魔力を感じるよ!」

「おお、試練攻略できてたんだね。おめでとう!」


 助太郎とシナンは結果を報告し合い、シナンは攻略成功したと判明した。

 助太郎もその事は祝っている。


「スケタローは攻略するまで試練を受ける?」

「いや、いいよ。特殊な力は故郷では不要だからね。」

「では、いつまでも立ち話するわけにもいかないだろうから戻ろうか。」


 2人の会話がキリのいいところでタヌが戻る事を提案する。

 2人ともそうしよう、と賛同しツネのいる地点へ戻って行った。

ご覧頂きありがとうございます。

何故か助太郎は攻略成功でもいいような雰囲気になってしまった…

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