第25話 案内人
目を覚ますとふかふかの布団にその身が包まる。
ぼやける視界が鮮明になると知らない室内。
そして火傷で痛む体。
「アイテテテッ!」
「目を覚ましたか。」
火傷による痛みで声を上げる赤き魔物、レッサーゴブリン。
その様子を見て隣にいた白いコートの男性が話しかける。
「イテテ…、誰ダオ前ハ!?」
「俺は勇者教団に入信してる1人だ。
もう火傷用の薬は塗ってあるし回復魔法もかけておいたから大人しくしてればすぐ治る。」
「…何デオレヲ助ケル!?
何ヲ考エテンダ!、イテェッ!」
自分を育てた盗賊団に裏切られた直後なのもあり疑い深くなっている。
「ある冒険家の2人が君を助けたいと必死でな、教団としても害がないなら助けたかったから。
それが助けた理由だな。」
「ヨク分カラン…」
このレッサーゴブリンは通常のレッサーゴブリンよりは賢くとも、頭脳が優れている訳ではない脳筋である。
「そうだ、君には名前はあるかい?」
「名前?ネーヨ、ソンナモン。必要ナノカ?」
「必要さ。これから人の暮らしをするんだからな。
呼び名がある方がいいからね。」
名前の必要性をレッサーゴブリンは理解できず首を傾げている。
「まあ名前は君を預かる人に決めてもらうか。
保護者になる人を連れて来るからちょっと待ってて。」
そう言って白いコートの男性は部屋から出て行った。
そして1分も経たずに部屋に老人の男女2人が入ってきた。
「今から君の親替わりになる、フレイ・アルエとそっちはフレイ・ハーマね。話には聞いてたけど赤いねぇ。」
「まだ名前がないんだってね。よし、今日から君は、
フレイ・ヒイロだ!
よろしくな。」
「オ、オウ?」
赤いレッサーゴブリン改め、ヒイロは老人夫婦の家族に加わり新しい生活が始まるのだが、それはまた別のお話。
シナンが〈魔の試練〉を攻略するために精霊の森へ向かう助太郎とシナン。移動手段はもちろん徒歩である。
何事もなく森へ向かうこと翌日、精霊の森の入り口に着いた。
森へ入る前に勇者教団の1人がやって来て手紙を届けて来た。内容は助けたレッサーゴブリンの預かり先が決まった報告であった。
手紙を読むとシナンと助太郎は安堵の表情を浮かべた。
森の内部は大きな木々が立ち深い霧に覆われ湿っぽく視界は悪い。
何やら周りに気配を感じる事もあるがとりあえず進み続ける。
歩き続けること15分、3回は入り口に戻っている。入り口に戻る度に違う道を進んでいるが結果は変わらず。
「これ、このままだと何回進んでも先に進めないんじゃない?」
「スケタローもそう思うかー。よし、目印になるものを置いてみよう。」
シナンは落ちていた枝を拾うとその場に突き立てた。
そしてそのまま先へ進んでみた。
しばらく歩き、突き立てた木の枝が目の前にあった。
「入り口に戻ってたね。」
「ゲームでありそうな事だな。」
森の奥へいくら進んでも何故か入り口に戻る事が分かり2人は途方に暮れていると、近くの茂みが揺れる。
2人がそちらに視線を向けるとそこには橙色の毛色に黄色の瞳の狸がいた。
狸はしばらく2人を見る。
「…ここに住む動物かな?」
「こっちを警戒して様子見してるのかな。」
狸は振り返ると奥へゆっくり歩いて行く。
2人がその様子を見て止まっていると狸は足を止め再び2人を見る。
『2人とも、彼はこちら側に対して敵対心も警戒心もないようだ。どうやら着いて来て欲しいそうだよ。』
「「そうだったの!?」」
トライスシが2人に狸から読み取った絆を伝える。
聞いた2人は狸の後を追う事にした。
狸も案内するように先へ進み出す。
狸に着いて行き5分程、霧が薄まりだした。
そして門のような形の大木を通過すると、
そこには木々が開けて人が何人か住めるような空間が広がり辺りは様々な色の灯りが蛍のように浮いている。
「ここは...。」
2人が幻想的な光景に見惚れていると案内していた狸が寄って来る。
そして狸は橙色に光ると人間の男の子ような体型をした二足歩行の狸がそこにいた。神主のような服を着ている。
「おおっ、獣人だったのね。」
「ああ、街にもたまにいたね。」
2人は驚きながらも狸は獣人であったと理解する。
街にいた獣人は人間と同じような体型で頭はほぼ動物で毛深かったが、目の前の狸の獣人も似た感じである。
「ようこそ、俺はここに住む1人のタヌ、狸の獣人のタヌだ。魔の試練を受けに来たんでしょ、まずはご飯でも食べていきなよ。」
「…そういえばそろそろお腹空いてきた!」
「では、お言葉に甘えて。」
シナンと助太郎はタヌの案内で周りの木々の中でも特に大きな大木の、空いたほら穴に入っていった。
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