第21話 人助けの代理人
シナンと助太郎は商業区で地図を買い、この大陸の情報を集める。
この大陸でも試練を挑むのだが、試練のある場所が分からないため手探り気味だ。
幸いにも親切な人は多かったため欲しい情報が集まった。
この大陸にある冒険者ギルドの机を1つ使わせて貰い2人は話し合う。
試練のある場所はこのマジク大陸の東側の陸地に広がる“精霊の森”という場所の奥地にあるそうだ。
地図には細かい観光スポットなどは書いていないが、この大陸全域と地名は記載されている。
現在地はマジク大陸の西側、海岸沿いの大きな国だ。
最短ルートで向かっても数日はかかりそうである。
「とりあえず道に沿って進む?」
「うーん、他に行く所もないからねー。」
そんな話をしてると、ギルドに冒険者の団体が慌てて入ってきた。みんな少し焦げてるか火傷をしている。
「またあの盗賊団が現れやがった!
“炎のレッサーゴブリン”を連れた盗賊団だ!」
盗賊に襲われたらしい冒険者達がギルドに報告に来たようだ。
シナンがその団体に話しかける。
「あの、凄い火傷ですけど大丈夫ですか?
よかったらこの火傷治し使いますか?」
「おお、ありがてぇ!
盗賊の奴らに所持物盗られて薬買う余裕無かったから助かるぜ!」
「嬢ちゃん、強そうだけどこの都市から出るなら注意しろよな。」
「お気遣いありがとう!」
シナンは笑顔で返す。
冒険者達の話に寄れば例の盗賊団は“精霊の森”を行く道に出没している。
この道は他の地域によく繋がっているため冒険者や商人が頻繁に通行するため、狙われたようだ。
注意して進むか遠回りが必要かもしれない。
「多少遠回りしてでも安全な道を進むべきか?
盗賊が出ると分かる道を進むのは得策ではないし…」
「いや、もし会ったら私がスケタローを担いで飛んで行けばいい。少しくらいなら飛翔しても体力は温存できるから。
それにあまり時間をかけたくはないんだよね。」
「そ、そう。分かった、もしもの時はよろしくね。」
盗賊団に会ったら即逃走と決めて最短ルートで通る事にした。
冒険者ギルドを出て出発しようとなったが、案の定困ってる人が見えるか聞こえるかすると助けに行っていたためあっという間に日が暮れてしまった。
その日は適当な旅館で休み次の日出発する事になった。
次の日、助太郎がこの星に連れて来られて1週間。
早朝に起きて支度し出発の準備ができる。
だが早朝でも困っている人がいない訳ではないため助けていると、何やら怪しげな団体が2人に近付いてくる。
長袖で丈の長い白いコートと性別に違いのない服を着ている団体だ。
それに様々な種族が見られる。
「突然の会話、ご容赦いただきたい。
我々は勇者教団。あなた方の人を助ける姿を何回か見させていただきました。
普段であれば我々が行うのですが昨日は別の任務があり奉仕活動ができませんでした。
あなた方の行動を見込んで是非教団に入信しませんか?」
「いえ、私はなるべく自由に活動したいのでお断りさせてください。」
「そうですか。
自由な立場から人々を助けているのですね、流石です。
では、出掛ける際はお気を付けて。」
勇者教団を名乗る団体は勧誘を断られるとあっさり引いて行ってしまった。
実はこの教団、この大陸ではかなり有名で奉仕活動を行っているいわばボランティア団体のような集団なのだが、この大陸に来たばかりなのでシナンでもその存在は知らなかった。
この都市の出入口へ向かう途中、勇者教団であろう人たちが困っている人を助けている光景を何度か見る事ができた。
昨日は本当に忙しく活動ができなかったのだ。
「本当に人を助けてたんだね。
この大陸には良い団体がいていいな。」
シナンが独り言を述べる。
人助けをする教団の姿を背景に都市の出入口に着く。
当初の予定通り、最短ルートで精霊の森へ向かうと決めて都市の外へ出るのであった。
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