第20話 魔法大陸最大の都市
特に問題もなく旅客船は目的地である東の大陸、マジク大陸の都市部に到着する。
助太郎とシナンの2人は他の客達と並び、船から降りていた。
この都市部は前のナチュラ大陸の和風もしくは日本ぽい雰囲気とは異なり、レンガの家が並びファンタジー感のある洋風な雰囲気が港からも見られる。
この都市部にも大きな城は建っているが和風の城とは違い、高い壁の頂上に見える凹凸に三角錐型の屋根とまさに想像に難くはない外見な洋風の城が建っていた。
「前回の所とは全く違う雰囲気だね。」
「そう、ここは魔法が特に発展した大陸なんだ。
この地に来てから何か魔力的な何かを感じるでしょ?」
「え?そんなに違うかな。特別変わった感じはしないけど。」
「あー、そういえばスケタローの故郷は魔法がなかったんだっけ。なら仕方ないね。
この地は魔力が豊富で魔法が発展したんだよね。
私がよく使う魔法薬も元々ここで作られた物なんだよ。」
「へー、そうなんだ。」
この大陸は他の地よりも魔力が溢れ、それ故に他の大陸では実らない特別な植物がありふれており、 その辺の石ですら特殊な効能を持つのである。
その代わりに別大陸では普通の植物や動物はこの大陸では希少なのだ。それらが必要な場合は別大陸に行くか輸入品を購入するしかない。
「私もナチュラ大陸以外はあまり知らないからまずは散策でもしようか。」
「そうだね。」
港から街に入るとそこには商業区で多くの店があった。
人も多いがその人の中には、頭からツノもしくはケモ耳が生えている者や肌が緑の者など、普通の人間ではなさそうな人がとても多い。
(もしかして前にシナンが言ってた人間と交流する個体の魔物なのかな。
人間にツノとか何かが付いてる人も魔物なのかな。)
「…ああ、魔物が交流しているのは確かだけど中には獣人とか人間の一種もいるね。
ナチュラ大陸ではちょっと珍しかったね。」
「獣人とかいたんだね。
…よく俺の考えてる事が分かったね。」
「トライスシが教えてくれたんだ。
分からない事があったら遠慮なく聞いてよ。何も知らないのは当たり前なんだからさ。」
「うん、ありがとう。」
商業区で買い物をしていると何やら騒ぎが聞こえてくる。
助けを求める声ではなくイベントに立ち会う興奮のような騒ぎであった。
「なんだろう、気になるし行ってみる?」
「シナンが良いならいいよ。」
気になった2人は声のする方へ向かう。
着いたのはこの都市部の大通り。
そこでは道の端に侵入禁止のフェンスが張られ人が集まっている。
そして道の真ん中には、地球の遊園地でたまに行われるパレードで使われるような大きな乗り物が徐行していた。
乗り物の周りは銀色に輝く鎧を着た兵士が着いて歩き、そしてその乗り物の頂上には白銀のドレスを着た女性が立ち笑顔で手を振っている。
どうやら今日はイベントがある日だったらしい。
周りに人が多くあまり近付けないが遠くからでもよく見える。
助太郎とシナンは大通りの端の更に端からパレードの様子を見ていた。
「あの人、この大陸のお姫様だよ!
今日はパレードの日だったんだ、凄い奇跡だよ!」
「お姫様!?しかも偶然だったのね。
あんなに慕われてるなんて、相当良い人なんだろうね。」
「うん、あの人はナチュラ大陸でもいい噂はよく聞くからね、かなりの人々を救っているのだとか。
羨ましいな…。」
シナンが憧れの表情で姫を見ている。
(シナンもお姫様に憧れるんだな。
...いや待て、お姫様への憧れはあれどシナンの事だから多くの人々を救っているであろう姫の行動力に憧れているのでは?)
(あのお姫様はたくさんの人を助けて笑顔にしているんだよね、ああ、羨ましい。
私ももっと頑張らないと!)
『……。』
助太郎の推測は間違っていなかった。強いて言えば姫の立場に対する憧れはシナンにないのだが。
トライスシもあえて黙っていた。
姫のパレードを見た後2人は買い物を再開し今後の方針を話し合うのだった。
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