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第18話 遅い進展

 助太郎とシナンの二人はひとまず最初に訪れた街を目指し森を進む。

 相変わらず膝下まで伸びる草が生え放題で歩きにくいが、一度進んだのもあって慣れてはいる。

 このペースならば早ければ今日中に、遅くとも明日の午後までには街に着くだろう。


「ひえー!助けてくれー!!」

「うおー、かかってこいやー!」


 このペースのままではいかなかったようだ。

 遠くから悲鳴が聞こえてきた。

 悲鳴が聞こえた瞬間、やはりと言うべきかシナンは即駆けつけて行った。助太郎も当然追いかける。



「ケキャキャー」

「ゴブリンめ!お前には屈しないぞ!」

「ひいー!」


 男性と女性の二人が4体のゴブリンに襲われている。

 男性の方は頭を抱え蹲り悲鳴を上げている。

 対して女性の方は盾を構えゴブリンを相手にしている。

 ゴブリンは皆、藁を申し訳程度の服として着て木の棍棒を武器に襲いかかっている。

 女性は盾で4体のゴブリンの攻撃を上手く捌いている。

 男性の方は相変わらず大きい声音で悲鳴を上げている。もしかすればこの悲鳴でゴブリンの集中力が途切れているのかもしれない。

 ゴブリン側は決め手に欠け、女性側は防戦一方な状況が続いていると遠くから何かが近付いて来る音がした。


「…助けに来たよー!!」

「うえ!?」

「ひぃ!?」

「「「「ケキャ!?」」」」


 その場にいた全員が振り向き驚く。

 少女が飛んで来たのかと思えば、その少女は肌が人体とは思えない赤さで左腕と左脚は義手だ。

 近付いてくるに連れその顔も見える。

 左眼は半分黒目で破れた着物から見える肌はとても人体ではない。

 右側は普通の少女の外見なのだが。


「えーい!」


 その少女、シナンは右手でゴブリン達の足下の地面を殴る。

 その衝撃で土が巻き上がり、ゴブリンが吹き飛ぶ。


「カ、カヤ〜…」


 自分達よりも格上な者が乱入した事でゴブリン達は情けない声を出して逃げて行ってしまった。

 逃げるゴブリンが後から来た助太郎と対面する。

 ゴブリン達は相手が格下だと気付くが、今は後方にいる怪物から逃げる事が最優先なため、助太郎を完全に無視して通り過ぎて行った。

 助太郎は驚きながらもシナンと合流した。


「えっと、今の生き物は?」

「彼等は下級ゴブリン。

 前のレッサードランみたいに魔物の一種だよ。

 魔物はたまに知能がない下級が生まれる事があって今のはその下級の群れだね。

 魔物は基本的にそれなりの知能を持って生まれて、人間と交流する個体も少なくないよ。」

「へえー、そうだったんだ。」


 今更だがこの星の生物について少し知った助太郎であった。


「あ、あんた強いんだな、おかげで助かったよ。」

「え、えっと、助けて頂いてありがとうございます!

 これはお礼です、遠慮せず受け取ってください!」


 先程ゴブリンに襲われていた二人がお礼を言うために話しかけて来た。


「いいの、いいの。困った時はお互い様だから。

 これ、ありがとね!」


 シナンはお礼の品を受け取る。

 様々な果物を含めて作られたパンドケーキのようなお菓子であった。

 助けた二人と別れ、再び街を目指し進む。


「…誰かー!近くに誰かいないかー!?」


 しばらく進んでいるとまた遠くから何やら聞こえてくる。

 勿論シナンは即飛んでいく。

 助太郎も追いかける。

 声が聞こえた場所には大穴が空いていた。

 草むらに隠れ気味だが起動した事で見えるようになっているのだろう。

 穴の中には商人が馬と荷車ごと落ちていた。


「誰かー!!助けてくれーー!!!」

「今助けます!」


 シナンが返事をし穴の中に入っていった。

 穴の中は深く、幅も広い。

 誰かが巨大な動物の相手を想定して仕掛けた罠なのだが、近道をしようと通りがかった商人が引っかかってしまったのだ。


「私よりも馬と荷物を優先してくれ!」


 商人自身も怪我をしているが、今は商売道具が最優先にできる余裕は残っていた。

 相手の外見を気にする余裕はなかったようだが。


「分かりました。

 …怪我してる...。」

「ブルル...」


 シナンが馬を持ち上げようと近寄ると馬の足が怪我している事に気付く。

 足を怪我しているため馬は気性が荒くなっている。


「大丈夫、落ち着いて。

 私は君を助けるから。」


 シナンはそう囁いて手持ちの一番良い回復薬を取り出し、馬の足にかける。

 怪我した足はたちまち治ってしまった。

 商人も怪我をしていそうなため回復薬を渡しておいた。

 時間を置いて、


「安心して、私が助けるから。」


 シナンは馬を優しく且つがっちり持ち、上へゆっくり飛ぶ。


「シナン、この辺りにもう罠はなかったよ。」

「そう、分かった!」


 助太郎は周りに他の落とし穴がないかを確認していた。ちなみに自身が判断した行動である。

 シナンは馬を穴から離して地上へ降ろした。

 馬は足が治って間もないのとよく躾けられているせいか大人しい。

 荷車やこぼれた荷物も慎重に運ぶ。

 最後は商人を地上へ上げる。


「助かりました。

 わたくしはバイヤ セロ。なんて事ない商人でございます。

 こちらはお礼です。よければ私の商品をご贔屓くださいませ。」


 シナンはお礼に回復薬を貰った。

 割と高いものである。


「いいんですか、これ?とても高いはずですが。」

「いいのです。お礼に妥協はしません。

 それに高すぎて需要が低く売れ残りやすいのです...。」


 そんな会話を済ました後、荷物をまとめて馬が落ち着いたため商人は街へ向かって行った。

 途中までシナン達も乗せて貰っていたが、また助けを求める悲鳴が聞こえたため、商人とはそこで別れて向かって行った。


 結局、その日は森から出られず野宿になったのであった。

 次の日、助太郎がこの星に連れてこられて五日目の朝。

 朝食を済ませてテントを片付けて出発する。

 流石に早朝は人は少なく、魔物や肉食動物もシナンが少し力を見せればすぐに逃げていくため円滑に進む事ができた。

 それでも困った人がいない訳ではなく、ちょくちょく助けて周っていたため街に着いたのは昼頃であった。

ご覧頂きありがとうございました。

サブクエストを優先してメインストーリーが進まないやつ。

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