第1話 黒い渦
初めまして、小説を書くのは初めてなのでお見苦しい点があるかもしれませんが楽しんで頂けると幸いです。
ここは地球の日本。時刻は朝の7時40分、平日。
多くの人や自動車が通勤、または通学のために大きな交差点を進行または信号で止まっている。
人は大人から小学生まで大勢おり、自動車も普通車にバイク、トラックやバスも多く並んでいる。
その中の1人に大学生2年生の男性、参橋助太郎がいた。
外見は黒髪に薄めの肌色、身長は170cmで健康体と個性際立つ要素は特にない。
彼は講義のための教材が入ったリュックを背負い、横断歩道前の最前列で信号待ちをしていた。
今日の講義は午前11時からだが、自習時間を確保するために早めに登校をしている。良い企業に就職し今まで自分を育ててくれた親に恩を返すという目標があるため、一生懸命に勉強をし早く登校する事が習慣となっている。
車両用信号が赤となり一時的に交差点の道路には誰も何もいない状態となった。そして青信号となる直前に異変は起きた。
道路の中心に突然衝撃と轟音が響き、空間に黒い渦が発生したのだ。
突然の異様な光景に周りが騒つく。困惑しその場に立ち竦む者もいれば、スマホで写真を撮りSNSへ投稿しようとする者も少なくない。
その渦は現れたしばらく後に吸引を開始する。空気を吸い始め風が渦に向かって吹く。その辺の小石が段々と吸われてゆく。吸引力は段々と強くなり、辺りの者達は危機感を抱き始める。
「な、な、なんだァ!?」「に、逃げろぉ!」
歩行者達は逃げ惑い、車両に乗った者達は渦の逆方向に車を発進する者と車を乗り捨て逃げる者に分かれた。
渦によって道路のアスファルトが砕け始め、瓦礫が吸い込まれる。吸い込まれた瓦礫は渦の中に消滅した。吸い込まれると戻れなくなるかもしれない。
助太郎も当然逃げていたが、一瞬振り返り気付く。小学生の女の子が1人、逃げ遅れたのか渦に吸い込まれそうになり泣き叫んでいた。女の子の友達が泣きながら名前を叫ぶ。
「…や、いやあ、誰か助けてぇ!!!」
「!…はなちゃああああん!!!」「はなちゃん!早くこっちに!!」
吸引は強くこのままでは女の子が吸い込まれるのは時間の問題。
助太郎はその様子に気付くとすぐリュックを投げ捨て女の子を助けるために走った。
(助けないと…!)
女の子は吸引に必死に抗い、泣きながら手を伸ばしている。
その手を駆け付けた助太郎は掴み、女の子の友達と思われる子達の元へ勢いのまま投げる。
「うおおああああああ!!!」
その子は怪我不可避だろう。掴んで一緒に逃げるのが互いに良かったか。しかしその時の助太郎は助けることに必死でそこまで考える事ができなかった。
投げられた女の子は道路を転がるもすぐに復帰して必死に逃げる。なんとか電柱に掴まりながら離れていき、なんとか友達と合流でき逃げ去って行った。
女の子と場所が入れ替わった助太郎は渦に抗い前進する。幸い男性大学生の力ならば抗えるようでゆっくりと距離を取れている。
この交差点にはすでに乗り捨てられた車と助太郎を除いて人はいない。渦に吸い込まれた人はまだいない。このままならば誰も吸われずこの辺りは危険地帯になることだっただろう。
しかし黒い渦は唐突に吸引力が大きく増幅した。まるで目の前の人物を吸い取りたいように。
「うおっ!?」
彼は立っていられなくなり倒れる。それでも匍匐前進して進み続ける。アスファルトを掴みながら必死に逃げる。
(逃げる…!逃げ切って、見せる!……何か、不吉な、音がする、よう、な…)
彼は逃げながら息を切らせそんな事を考えていた。
横から何か大きな物が引きずる音が聞こえ、嫌な予感がしその方向を見る。そこには乗り捨てられたトラックや車両が横転し道路に引きずりながら助太郎の元へ迫っているのだった。
「う、嘘だろ…!?」
思わず声が漏れる。吸引に抗うのに精一杯の彼には車両を避けるか逃げる速度を上げる余力はなく、
バァンッ!
と衝突し渦に向かって吹き飛ばされ意識が途切れかける。
(これは、あの女の子を無傷で助けられなかった天罰だろうか…。父さん、母さん、親孝行も出来ずに、ゴメン…)
そう思いながら彼は渦に吸い込まれ、消えた。
人1人吸い込んだ渦は目的を達成したかのように即消失し、そこにはボロボロになった交差点に半壊または横転した車や誰かの私物が散らばる光景となった。
後日、その光景は無事だった数台の監視カメラや逃げる前に撮った者達がSNSに上げた事で大きなニュースとなった。とても信じ難いが証言と証拠が多く、フェイクニュースだと思う者は少なかった。
逃げる際に怪我をした者は何人かいたが、[参橋助太郎]という男子大学生1人だけが行方不明者となった。起こるかもしれない2度目の黒い渦に警戒しながら捜索が行われたが、彼の所持品であったリュックは見つかるも本人が発見される事はなく、家族や教師、友達など親しい者達は深い悲しみに追われる事となった。
参橋助太郎が黒い渦に吸い込まれ数時間後の事。
「…ん、んん、俺は、ここは…?っ、いっ!?」
瓦礫の上で彼は目を覚ます。迫るトラックに吹き飛ばされたダメージが残っている。周りは金属らしき素材でできた部屋に先ほど黒い渦が吸ったであろう瓦礫や誰かの所持品が無造作に散らばっており、その上に彼は倒れていた。
「ン目が覚めましたか?異星の人間よ。」
何者かが話しかけて来た。
ご覧頂きありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
定期更新はおそらくできませんが、完結できるようにはいたします。次があればまた見て頂けると喜びます。
後書きも見て頂きありがとうございました。