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ラ・カーム戦記 Ⅱ  作者: 神名 信
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第9話

迷宮の地下一階は明るかったし、外よりも暖かかった。一行は入ってから三十分ばかり平坦な道を進んでいる。

 地下に降りるとダンジョンの北東角であり、西に行くと小部屋があるはずだった。どんな宝箱があるのか探索してみたいが、今回はそういう冒険ではない。まっすぐに南へ向かった。

 さらに南へ向かうと足音が聞こえた。レイガの指示で左右に分かれて息を殺す。

 カガは完全に気配を消して足音のほうへ近づいて行った。

 どうやら盗賊のようだ、ダンジョンを探索するつもりはなく冒険者を襲って金品を奪うつもりらしい。数もちょうど五人いた。

・・・どうする、とりあえずアジトだけでも見つけておくか。

 どうやら先に気づけたらしく、盗賊はまだこちらに気づいていない。

 先行するカガを目印にレイガたちも距離を取りながらあとをつける。

 一時間ほど尾行すると、盗賊たちは小部屋に入っていった。地下一階をアジトとしている盗賊ではたいした腕ではないだろう、しかし、パーティーが全滅した噂もあり、盗賊にやられたのかもしれない。

 盗賊が全員入ったのを見極めて、カガが戻ってきた。

「このまま進めば後ろから盗賊に襲われるかもしれない、戻ってボスを倒して部屋を抜けよう」レイガは小声で指示を出した。

 五人は今まで来た道を戻り、地上へののぼり階段の脇まで戻ってきた。

「ここを西へ行けば通り抜けられるはず」レイガは地図を見ながら呟いた。

さらに三十分歩くと、目の前に部屋が現れた。

「この部屋は大型のスライムがいるはずだ、核への攻撃しかダメージは当たらない、酸をまき散らすはずだからやつが縮んだら距離を取って」レイガが戦闘の指示をする。

 小部屋を開けると、三匹の大型スライムがいた。入口に向かってゆっくりとしたスピードで迫ってくる。

「カガは左、ヒロは右、俺は正面、マリは待機」掛け声と同時に動き出す。

 スライムには核が三つあった。レイガは最初の一撃でその一個を早くも潰していた。正面のスライムの動きが鈍る。

 カガは短剣だけに核への攻撃は辛そうだった、的確に攻撃するもスライムの体にはじかれ核にはわずかなダメージしか通ってないようだ。

 ヒロは弓で攻撃するが、中距離からの攻撃では核をピンポイントでは攻撃できず、スライムの足を止めることしかできない。

 レイガは二度目の攻撃で二個目の核も潰し、スライムは完全に動きを止めた、しかし、そこからノーリアクションで酸を飛ばしてきた。

「ッ」危うくレイガは後ろへ飛び去りかわす。

 そこから、勢いをつけて走り出すと三つ目の核めがけて刀を振る。

 ズバッ、という音と共に三つ目の核が割れ、スライムはその場に崩れ落ちた。

 レイガはカガのほうを一瞥するとそのままヒロの応援に向かった。

「ヒロ後ろに下がっていてくれ」

「はいな」

 レイガは一匹仕留めてコツをつかんでおり、二匹目のスライムも三回の攻撃で倒した。

 ほぼ同時にカガも一匹仕留めており、これでこの部屋は制圧できた。

「ヒロ、二人を呼んできて」

「りょうかい」

 四人そろったところでレイガとカガについては治療が行われた。気づいていなかったが、やはり酸にやられていたらしい。マリがラ・ケアの術式で二人を治療する。

 ボスの部屋には返り討ちにあった冒険者の遺留品が集まる。それはボスを倒した冒険者の所有物になるというルールがあった。

 この部屋には、錆びた剣など武器類はめぼしいものがなかったが、数個の巾着があり、それを合わせると九十銀貨ほどになった。

「マリ、預かっていてくれ」

「はい、それと刀見せて」

「ん、はいよ」

「・・・やっぱり、これ少し呪われているわ、私がエンチャントをかけておく、水属性は少し呪いを打ち消せるはずだから」

「ありがとう、どうも重かったんだよな、刀、あのくそオヤジが・・・」

「どうせ訳ありで安く買ったんじゃないの?」ヒロがレイガの顔をのぞきこむ。

「ま、まあなんかあるとは思っていたけどさ、安かったし」

「使うたびにエンチャントをかければ大丈夫、忘れないでね」

「ああ、マリも覚えておいてくれ」

「この奥に隠し扉があるはず、カガ分かるか?」

 カガは言われる前から奥の壁を用心深く叩いていた。

「ああ、ここだな、開けていいか?」

「ちょっと待った、いきなりモンスターかもしれないからな、みんな左右に散らばって・・・よし、開けてくれ」

「おう」

 ゴオオオン、大きな音がして隠し扉が開いた。

 開くと同時にカガが扉の向こう側を偵察する。問題なしの合図を後方へ。

 隊列を崩さずレイガたちも扉の向こう側へ移動した。

 ここから西へ数十分歩けば地下二階へ降りる階段があるはずだ。

 現在時刻は十四時三十分。回り道のおかげでだいぶ時間を取られてしまった。それに先ほどの盗賊たちと遭遇するのも避けたい。このまま地下二階へ行くか、地下二階へのルートを確保して地上へ戻るかレイガは考えながら進んだ。

 十五時ちょうどに地下二階へと降りる階段に到着した。

「今日はここまでにして戻ろう」

 レイガの指示に全員が同意し、今まで来た道を地上方面へ戻る。

 途中スライムのいる部屋を確認したが、すぐにまたスライムが出てくることはなさそうで、順調にいけば明日は地下一階での戦闘は避けられそうだった。

 一時間ほど歩くと北東角の地上へ戻る階段のところへたどり着いた。

「地上で待ち伏せなんて最悪だからな、カガ偵察よろしく」

「了解」短く言ってカガが地上に出て周囲を見渡す。

「問題ない」

 カガの声と同時に全員がダンジョンから生還した。

「十六時か、明日は一時間で地下二階まで行けるはずです、大きな問題がなければ明日にはクリアできそうです」

「そうなの、よかったわ」

「当初はダンジョン付近でキャンプをするつもりでしたが、やはり危険ですね、馬車で一時間くらい離れたところにキャンプを張りましょう」

「お任せするわ」

「カガ、また頼めるか、来た道を一時間くらい戻る感じで」

「ああ、問題ない」


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