第6話
四人がロビーで待っていると呼び出しがあった。
「アービィ旅団様、手続きが終了しましたにゃ、依頼主はオーガニア南東ブロックのジェニファー・サース様ですにゃ。これがギルドからの紹介状で、これが地図です。クエストが終わったら報酬の支払いもここだから、またくるにゃ」
「はい、なんか色々ありがとうございました」
「こちらこそにゃ、ヒロさん・・か、気を付けてね、あなたもすぐに女の子っぽくなるから、仲の良い男の子だからって油断したらだめですにゃ」
「はーい、でも私は男運ないから、あの人みたいなかっこいい人がそばにいてくれたらいいのだけど」
「団長と比べられたらたまりませんわ」カガは毒づいた。
オーガニアはキリスオーの首都であるが人口は二十万人ほどである。南側は海岸に面していて漁業が主な産業となる。
「ここが依頼主か?」大きな塀に囲まれた豪邸の前でレイガは地図を確認した。
門扉の横にもジェニファー・サースという名前が書かれていて間違いないようであった。
「でっかい家だなー」カガは本当に感心しているようであった。
「ほんと、あの人の家くらいあるかな」
「とにかく、挨拶しよう、向こうも待ちくたびれているはずだし」レイガは呼び鈴を鳴らした。
「はい、どなた様ですか?」呼び鈴を鳴らしてしばらくすると使用人らしき初老の男性が現れた。
「ギルドから派遣されてきました、アービィ旅団と言います、ダンジョンへの護衛の件で参りました」
「承知致しました。どうぞお入りください」男性が四人を邸内に導く。
応接室に通されると少し待たされた。
「お待たせしました、私が依頼主のジェニファー・サースです」凛とした声の主はまだ若い女性であった。ただ、若々しさというよりは落ち着きがある。
「ギルドから派遣されてきました。代表のレイガ・クウです」
「名簿は拝見させて頂きました、皆さん随分と若いですね」
「はい、クエストは規定数こなしていますので安心してください」
「そうね、この若さでシルバーということは大変な実力なのでしょうね」
「はい、ありがとうございます」
「早速ですが依頼の話をさせてもらいますね」
「はい」
「今回オーガニア・ダンジョンと呼ばれるダンジョンの地下二階まで、私が行きますのでみなさんにはその護衛をお願いします」
「はい」
「地下二階にはオビアヌスという花が咲いています。その花を持ち帰るのを手伝ってください、なおその他の宝物が入手された場合はあなた方にその所有権を認めます」
「え、いいんですか?地下二階だとそれなりの価値のものもありますよ」
「はい、けっこうです」
「もしよかったら、オビアヌスという花を取りに行く理由を教えてくれませんか?」
「我が家、サース家の伝統といいましょうか、代々の当主はオビアヌスの花を摘んで特別な技法でペンダントにします、それがサース家の当主の証であり、私にその番がまわってきたということです」
「分かりました、もう一つお聞きしたいのですが」
「はい、どうぞ」
「ジェニファーさんはなにか武器を扱ったりしますか?」
「いいえ、私はそのような心得はありません」
「了解しました」
「早速ですが、明日の朝にはダンジョンへ向けて馬車を走らせます三時間ほどで着くはずです。それまで当館でゆっくりされてください」