第4話
「悪いが俺の勝ちだな」レイガは大量の銀貨を巾着に入れながら勝利宣言をした。
「くっそー、レイガ本当につえーよな」
「なーに?カガはまた負けたの?」ヒロが隣からのぞき込んでいる。
「はいはい、負けました、レイガはギルドでゴールドの冒険者とやっても勝つんだもんな、俺じゃ相手になりませんわ」
「男ならしゃきっとなさい、負けると分かっているなら最初からやらなきゃいいのに」
「そこはロマン!」
「ロマンねー、カガはロマンで身を滅ぼしそうだわ」
「そういうなよーヒロ」
「まあまあ、カガの滞在費は俺が出すからって言っても依頼者の家に泊まる予定だからお金はかからないのか」レイガが助けになりそうもない助け船を出す。
「レイガが勝った十銀貨、全て回収してもいいのよ」マリの声は冷たかった。
「マリ様、それはお許しを」
「当機は着陸態勢に入ります、シートベルトの着用をお願いします」機内アナウンスが流れる。
「あ、もうこんな時間か、そろそろ到着だな」四人は少し緊張した面持ちでシートベルトを締めた。
到着予定の八時はすでに過ぎていた。若干遅れたようである。船体は徐々に降下を始め、オーガニアの街の明かりがはっきりと見える。
飛空艇は乗り場に到着し、百人ほどいた乗客は整然と降り始める。
「はぁー長かった」ヒロはあくびをしていた。
「長かったなー、背中痛いわ」カガもあくびをしながら背伸びをしていた。
「ほんとに暖かいな、ラーの五月くらいじゃないか?」レイガは手をパタパタとうちわにしている。
「とにかく、まずはオーガニアの協会ね」マリは次の目的地を口にした。
飛空艇乗り場から三キロほど歩いたところにギルドはあった。
ギルドとしては、ラ・カーム王国の王都ラー、イグニクェトゥアの首都クェトゥアにそれぞれ本部があり、キリスオーの首都オーガニア、レグニヤーローの首都レッグスターに支部がある。
本部にはそれぞれ一名のギルドマスターを置くこととなっており、現在ギルドマスターは二名だけである。
オーガニアとレッグスターにはクラウンランクの冒険者がそれぞれギルド責任者として常駐していた。
ギルドマスターなどのギルド責任者は各国政府との折衝にもあたるため、ゴールドランク以上の冒険者の互選によって選ばれる。ただし、被選挙権はクラウン以上の冒険者にしか認められておらず、クラウンとギルドマスターは合わせても十二名しか在籍していない。
「まずいな、ギルドが閉まる、みんなちょっと走るぞ」レイガは走り始めていた。
「まだ、体がなまっていますよー」ヒロがちょっと抗議する。
「飛空艇が遅れたからな、みんなダッシュだ」カガは身体能力が高く、すでに三人から距離をとりつつあった。
「カガ、クエストリスト、二千五百二十一、四人パーティー、ラーの冒険者、そう言って」マリはギルドで登録に必要な最低限の情報を流す。
「はいな、了解、さきに行っているよ」カガははるか先でそう答えるとさらに加速していった。
「二人は離れずにゆっくり来て、俺もカガを追いかける」そう言うとレイガもカガを追っていった。
「こっちはゆっくり行こう」ヒロがマリに同意を求めた。
「でも、正式な手続きは四人でしないといけないはずだから」
「もう、マリは真面目なんだから、でもそっか」ヒロも諦めて走り出す。