第16話
第二章 試験監督
ラーのギルドに着くと四人はそれぞれにクエストボードを見渡した。
[害虫駆除:二十ポイント:五銀貨:ラー協会]
[自警団募集:三百ポイント(毎月):二十銀貨(毎月):ラー協会]
[炎怒王討伐:三千ポイント(シルバーランク以上):百金貨:クェトゥア協会]
[海賊退治:七百ポイント:一金貨:ラー協会・オーガニア協会]
「最新のやつはどれも微妙だな」カガはクエストボードを見ている。
「ああ、ところで炎怒王・・」
「却下だ」
「ですよね」
「マリたちのほうはなにかあるかな」
マリは一つのクエストの前で止まっている。
「マリ、何見ているんだ?」レイガが声をかける。
[ギルド試験監督:五十ポイント:十銀貨:全ての協会]
「試験監督か、これは一人ずつ受けられるから悪くないかも」
「なになに?監督?やってみたい!」ヒロはテンションが上がっているようだ。
「こういうのもいいんじゃないか?」カガも賛成のようだった。
「じゃあ、申し込む、みんな来てくれ」
四人は受付に集まった。
「このクエストを受けたいのですが」クエストカードを提出する。
「試験監督ですね、皆さんのギルドカードを提出してください」
四人はそれぞれにギルドカードを提出する。
「監督期間は二日間、三月五日、六日、集合場所はここですがよろしいですか?」
「はい」
「まずはギルドカードをお返しします」
「はい」
「試験監督となっていますが、場合によっては模擬戦を担当していただく場合もありますが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「では、登録は終了です、当日よろしくお願いします」
「お願いします」
四人が共同で借りている部屋は寝室が三つとリビングルーム、キッチン、大きめの風呂がある。寝室は男子と女子が二人で一部屋を共用にしており、寝室の残り一つは客用になっている。
四人が部屋に戻るとリビングに人の気配がした。四人ともすぐに気づいた。
「団長!」レイガが少し驚いた声を出した。
「おう、悪ガキども、元気にしているか?」ダナ・カシムであった。ラ・カーム王国の北部方面軍団長である。王国最大軍団の指揮官ということであり、大陸一の剣士としても名高い。
「元気にしていますよ、団長」カガも嬉しそうな顔をしている。
「団長、なにか飲みますか?」マリが気を遣う。
「あ、悪いな、酒はなさそうだから、お茶でいいぞ」
「はい」マリはキッチンへ向かう。ヒロもマリの後ろについてキッチンへ向かう。
「なんだ?ヒロはお腹でも壊したか?」
「多分嬉しすぎて何を話したらいいのか分からないんですよ」レイガはヒロを見ながら説明した。
「お前らキリスオーまで行ってきたそうじゃないか」
「ダンジョン潜ってきたんですよー、団長に話したくて」カガはなおもはしゃいでいる。
「オーガニアダンジョンか?」
「はい、地下二階までですけど、それで女王オオカミを狩ってきたんですけど、きつかったっすよ」カガが説明を加える。
「おい、レイガ」ダナ・カシムの声がやや低い。
「はい」
「ヒロは腕を怪我しているな」
「はい」
「ダンジョンでか?」
「はい」
「ヒロは怪我を見せたくなくて近寄らないんじゃないか?」
「そうかも、しれません」
「まあ、いい、それが冒険者だ。ただな、お前の判断ミスで仲間を失うことになりかねない、気をつけろよ、な」ダナ・カシムはレイガの頭をなでた。
「はい、団長」
「お説教はここまでだ、お前らも立派な大人だからな、俺もお茶を飲んだら王宮に戻る」
マリとヒロがお茶を持ってきた。
「はい、団長」マリがお茶とお菓子を出す。
「マリのお茶はいつ飲んでもうまいな、いい奥さんになるんじゃないか?」
「私より、団長が結婚してくださいよ、どうなんです?風の噂では恋人さんとうまくいっているとか」
「こいつは一本取られたな、まあ俺のことはどうにでもなる、な、ヒロ?」
「あ、うん」
「ヒロがいつか結婚相手を連れてきた時にそいつの顔をぶっ飛ばすのが夢なんだよ」
「団長、相手が三回くらい死にます!」カガが突っ込んだ。
「冗談だ、カガを連れてきたらほんとにやるかもしれんが」不気味に笑った。
「ひええ、ヒロの相手は僕には無理です」
「そろそろ戻る、みんなレイガの言うことはきちんと聞けよ、そうしていれば問題ない」
『はい、団長』四人の声がきれいにそろった。