第3話 この愚か者めがぁぁ
二人の同級生の異世界転移に巻き込まれたこの話の主人公亀井義人は本来であればそれにより次元の波にのまれ死ぬはずだったが。創造神の助けにより無事異世界転移することとなった。
________________________________________
ふぅ、ついに来てしまったか。ここは街までの道ってところかな。
結構開けた場所だなどっちに行ってよいやら。
よくみると草とか地球のものとは全然違う。
真っ白の葉の植物とかあるぞ、気持ちわる。
木とかなんか今にも歩き出しそうだな、顔みたいなの書いてあるし、不気味だな。
とりあえず一本道の上に立っているしこのまままっすぐ行くしかないか。
義人は急に創造神に会い。普段よく使いもしていなかった脳に多くの情報を与えられたためか、一番すべきことである状況確認をおこなわず、成り行きのままにその一本道を進んでいった。
なろうの小説みたいに馬車とか通らないよなぁ。
さっきまでは不気味に見えていたが歩いているだけならいいところだな、風がとても気持ちいい。
さっきまで神様と話していたんだよな。
ボッチの俺がなんであんなに普通にしゃべれたんだろう。
これも異世界効果なのか。ついにボッチ卒業かな。
えへ。
そんなどうでもいいことを考えていた義人であったが、重大なことを忘れていたそこが平和な日本ではなく、モンスターが跋扈する異世界であることを。
こまるよなぁ。
これを機に僕もモテモテハーレムとか。
どうしていいかわからないぜ。
ふっ。
先ほどまでは自分が奴隷になる創造するほどに卑屈になっていたのに、すっかりいつもの大馬鹿者に成り下がっていた。
あー、なんか楽しくなってきた。
マジでこっからモテちゃったりしたら、ぼ、僕は、ふ、ふひょひょひょひょ。
「ギッ、ギ~」
一体の緑色の肌をもつ生命体が、義人の後ろから近付いていた。
いわゆるゴブリンといわれる魔物である。注意を張っていれば気づけとことであろう。
仮にそうでなくても普通にしていれば耳からゴブリンの鳴き声のようなものを聞き取ることができたであろう。
しかし、普段ボッチである義人は逆に周りを気にしないようにするために考えすぎる癖のようなものがあった。
これからどうすっかなぁ。
勇君とかといっしょに勇者の冒険についていくのもいいかも。
「ギー、ギガガガガァ」
そっと義人の真後ろまで近づいたゴブリンは手に持っていたこん棒のようなものを義人の後頭部に振り下ろした。
「いっっっ」
なに、なに、痛い、怖い、痛い、痛すぎる。
前がよく見えない。
なんで今学校生活を思い出しているんだ。
幼稚園の時周りの子が怖くて母さんの足にしがみついていたこととか。
小学生の時に明美ちゃんが好きだったのに何もできずに卒業と同時に離れ離れになったこととか。
中学でいじめられるかと思いながらびくびく過ごしていたけど、空気すぎて存在がそもそも覚えられていなかったこととか。
ていうか、碌な思い出がなさすぎるだろ。
悲しすぎて泣けてくるわ。
なんか涙出てきたし。
走馬灯で精神的な痛みを伴うとかなんなのこれ。
哀れすぎるだろうがよ。
今思うと伽耶さんは名前覚えていてくれてうれしかったなぁ。
勇君も優しかったし。
母さんには今まで心配しかかけてこなかったなぁ。仕送りもできてないし
綾乃にもいい兄ではなかったな。
よく考えたら創造神様も寛大だったのかもしれない。
俺自身が甘過ぎたんだろうな。
俺つええしてもらっていないのにも関わらず、創造神様にあったことで勝手に自分のことを過大評価していたのかもしれない。
これで俺の人生も終わりか。
義人は後頭部の痛みと自分の走馬灯に苛まれながらも自分の死が近いことを悟った。
それは本当に偶然の産物であったのかもしれない最後に創造神との会話を思い出しながら消え入る声で義人はそっとつぶやいた。
「へ、へん…し…ん」
「ギ?ギ!ギ、ギガァ!」
………
________________________________________
義人とゴブリンがいたはずの場所は、気持ちの良い風が吹き、木や草花に囲まれた一本道のはずであったがすでにそんな場所は存在せず。
砂埃が吹き荒れ、月のクレーターのようになった地面とその真ん中に横たわる裸体の義人の姿があった。
そうして義人は自分でもわからないうちに、気を失ったのであった。
________________________________________
<時空のはざま・シャノワール>
馬鹿なのかこやつは、最初からゴブリンに負けかけるとかありえないじゃろ。
しかもせっかくゴブリン倒しても瀕死じゃし、ていうか死んでいたりして。
口から泡吹いて、白目むいているんですけど。
「仕方がない、せっかく異世界に送ったのに、これでは何の意味もないではないか。
そもそも、わしは寛大かもではなく、寛大なのじゃ。あんなに無礼を働いたのを許してやったのをもう忘れたのか。しょっぱなから力を使いすぎるから体から魔力が枯渇しておるな。後頭部の打撲も軽くはないの」
特別に治療してやるとするか、あとは知らん。なんか忘れている気もするがまぁこれで十分じゃろ。
やはり創造神はどこか抜けていた。
________________________________________
義人が目を覚ました時、自身は磔のようになっていることに気が付いた。思わず義人は呟いた
「これってもしかしてハードモードじゃね」と。
________________________________________
<ヤンジール王国辺境拍・サリアル>
我、辺境伯サリアルはこの地位についてからついていないことがたくさんあった。
そもそも我は先代が中央の政変により地位を追われ急にこの辺境伯という地位に就くことになった。
そこからは我はこの辺境伯領のことを知り、死にたくなった。
思い出補正であったのであろうか、我が住んでいた豊かな領地はすでにそこにはなかった。
いや、そもそもなかったのかもしれない。
先代はどうにか中央で地位を気づこうとしてほとんど帰っていなかったのだろう。
私自身もあまり領地には帰らず王都で勉強ばかりしていたからな。
気づいた時には領地は荒れ果て、民は税を払えず、経営状況は負債を積み重ねるのみであった。
だが我はそれでも希望を捨てなかった。
冒険者という存在に目をつけ、その多くを呼び込むことで領地の商売発展の肥やしにしようと考えた。
それにより税も収めやすくなるだろう。
加えて、魔物に対する防衛費も浮くことになる。
治安は多少悪くなるかもしれないがまあそこは仕方がないということにした。
結果は上々、冒険者は一般人の人とは違う価値観を持つ。
稼いだ金はその日に使う。
酒、装備、その他もろもろ、多くを必要とし、金を落としてくれる冒険者は金蔓といっても過言ではない。
まあそれは少し言い過ぎた。
一番の成功の要因はわが領土が辺境であり魔物のが多く発生する森、通称死の森が近いということであった。
つまりは魔物がたくさん出るということである。普通の領地経営では最悪の要因でしかないのだが、冒険者には宝の山である。
冒険者は一般の人が近寄らない場所に果敢に飛び込み多くの魔物を狩って、それを金に換えたり、装備の素材とする。
一番懸念されるであろう冒険者の維持費は冒険者ギルドを領地に呼び込み、それに関する建物の建設費や月の運営費を少し負担すればよかった。
すべてがうまくいっていたはずだった。
はずだったのだ。だのに、だ・の・に!
あの黒髪の男は何なのだあいつは、どうやったらあんなバカでかい穴ができるのだ。
あんなのができたら冒険者はこっから森に通うよりほかの領から行ったほうが近くなるかもしれん。
復興費もばかにならん。
森までの近さが売りなのに遠くなったら本末転倒じゃないか。
くそっ。
ヤンジール王国・辺境伯サリアルは自身に降りかかる不運からは逃れられないことを悟りながら、机に突っ伏した。
とりあえず外国の田舎道をググってもらってそこに出てくる自然いっぱいの画像をイメージして下さい。