新しい命
王の執務室では、シア、アシュリ、アキ、パヴェルがああでもないこうでもないと騒いでいた。
「やっぱり、カスパルだ」
パヴェルが言い切った。
「いいや、エドヴァルドが良ろしいでしょう」
アシュリがそれに反論する。
「サウルなんてどうですか?」
負けずにアキも提案した。
「さっきから男性名ばかりだ。女の子が生まれるかもしれない。アイナとかいいんじゃないのか?」
シアが言うと、三人とも、怪訝そうな顔で、シアを見る。シアはすぐ、自分が何かおかしなことを言ったと気づいた。
「何がおかしい?いい名前じゃないか?」
「いや、名前はいいんです。名前はね」
アキが答えた。
シアは自分の提案した名前の何が悪いのか、さっぱりわからない。混乱するシアに、アシュリが助け舟を出す。
「シア様はご存知ないんですね。リュネ家は有名な男系家族で…。生まれてくる子供全てが男子なのです」
シアはリュネに連なる者の顔を思い浮かべた。
そういえば、本家、分家共に、兄弟が多い上に、全て男子のような気がする。リュネの娘を思い出そうとしても、誰一人として思い出せない。リュネの女性で思い出せるのは、みんな誰かの妻だった。果たして、そんな家系が本当にあるのだろうか。
「リュネ家といえば、もう一つ有名な伝承があるよな」
パヴェルは愉快そうに、みんなの顔を見回す。アシュリもアキも、知っているような顔つきだ。知らないのは、シアだけらしい。
「有名な伝承って?」
「男系家系な上に、子沢山。そのうえ、百発百中なんだ」
戸惑っているシアに、アシュリが説明した。
「その、関係を持てば、確実に妊娠させる、と言うことですね。なので、真偽のほどはともかく、リュネの男子は、結婚まで異性と特別な関係になることを許されていないと言われています」
「ええっ!?」
シアは思わず叫んだ。
「そんなことってあるのか?!」
アシュリは静かに頷いた。アキも黙って肯定している。
「はい。ですので、レティが去年すぐに妊娠しなかったことは、かなり話題になりまして…」
シアは心底驚いた顔をしている。
「それ、本当なのか…?」
「まぁ、二人が再度婚約して、やはりすぐに子供ができたので、リュネの伝承が健在であったことが、証明されたわけですが…」
シアはもう、苦笑いを浮かべるしかない。
パヴェルがぼそっと呟いた。
「しかし、あいつら、百発百中ってことは、結婚するまではどうしてるんだ? 俺はそこが気になって仕方がない!」
確かに、イェレやユルキに至っては、アレクスより年上なのに、まだ独身だった。しかし、そこにいるパヴェル以外のものは、そのことについて、深く知りたくはなかった。
扉が開いて、アレクスが入ってきた。
「おお!いいところへ来た。今、お前の子供の名前を考えていた」
パヴェルが言った。アレクスが嬉しそうに答える。
「気が早いね。どれどれ、カスパル、エドヴァルド、サウル、…アイナ?どれもいいね。でも、アイナが使われる可能性は低いかも。女の子が生まれたら、リュネではひと月眠らない祭りが始まるね。だけど、プロガムには普通に女の子も生まれるから、アイナを使う日が来るかもしれない。名前は何個考えてくれてもいいよ。この先たくさん必要になるから」
みんなの顔を見に来ただけなのか、果たして大した用事もなかったのか、アレクスはレティと夕方の散歩をすると言って、さっさと王の間から姿を消した。
残された四人は、それからしばらく、考えつく限りの子供の名前を紙に書き続けた。でも、シアだけは、そんなの信じられるかと、頑なに女の子の名前を候補にあげ続けた。
読んでいただいた方へ
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。
2週間前に、ここに掲載した際には、おそらく誰も読まないだろうと思っての掲載でした。ところが、3日後にページを訪れてみると、ブックマークをしていただいた方が1人、読んでくださった方も数人。
おお!一人でも 読んでれる人がいるのか!と感激して、それなら最後まで掲載せねばと、ここまでやってこれました。
読んでくださった方、そしてブックマークしてくださった方、最終回まで、くじけず、サボらず載せることができたのも、ひとえに皆様のおかげです。
心よりお礼を申し上げます。
あとがきにこんなに長く書いて良いのかわからないのですが、もう少しだけ…。
タイトルについて、なんで『2』なんだ?と思われている方がいるかもしれません。それは、私の頭の中に、『1』があって、これはその番外編だからです。いつか、『1』を完成させて、誰かに読んでいただければなと考えています。(ジャンルが『恋愛』じゃなくなってしまいますが)
それから、お礼にならないかもしれませんが、『むことり』に関係する短編を2篇ほど、後日載せたいと考えています。なるべく早い時期に載せるよう努力しますね。
あとがきが長くなりましたが、ここまで作品にお付き合いいただいた皆様に、改めてお礼を申し上げます。
拙い作品にお付き合いいただき、まことにありがとうございました。
かめちむら




