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レリック・ハンター  作者: 中川あとむ
第二十五話 アルタイルとベガ
97/156

25-1 ニアミス

 これまでの登場人物紹介(今回主に登場する者)


<ショウ>  ……主人公。レリック・ハンター。前アメリカ王の孫だとわかった。


<ユリー>  ……本名ユリアナ。火星の公爵令嬢。主人公のフィアンセ。


<エレナ博士>……機械・物理・化学・電子工学博士。MHIC(火星重工業)の取締役。主人公の実の母。


<イーサン> ……エレナ博士が市販のアンドロイドに手を加えて作った。


<アミル>  ……エルフ。実は過去の記憶を封印していたアデル教授だった。普段は指輪のカモフラージュ装置で耳を隠している。


<ラム>   ……地球在住の人気シンガー。今後は火星に住む予定。


<スカーレット>……エレナ博士の従妹いとこ。地球連邦政府議会の議長。


<アッカルド>……シカゴのマフィア。以前主人公たちが、娘のフィオナの為に抗争の仲裁をした。

 地球連邦政府から、ワープができるようになったことが一般に告知され、MHICからワープができる宇宙船の販売が始まった。


 MHICでは、今までの客船や貨物船、軍艦の他に、新たに個人向けの船を何タイプか販売することになり、そのうちのクルーザーのプロトタイプを、またもやエレナ博士が貰って来た。


 一般向けに販売するものは、ワープ機能に制限をかけているが、そのプロトタイプは制限を解除してあるそうだ。

 これからその船は、主に俺のフィアンセたちが自由に使えるようにするので、彼女らは地球や宇宙の果までどこにでも、好きな時に行き来できるようになる。



 俺とユリー、そしてエレナ博士の三人は、俺たちのビルから空港側に出て隣接する格納庫にやってきた。

 実はちょうどラムが地球でのスケジュールを終え、芸能事務所の火星の支社に移籍することになったので、試しも兼ねてそのクルーザーでこれから地球に迎えに行くことにしたわけだ。


 俺たちは少し手前で立ち止まって、そのクルーザーの船体を離れたところから眺めてみる。

 その白く優雅なクルーザーは、隣のスターダストよりふた回りぐらい小さく、五十メートルぐらいの大きさだ。


「素敵な船ね?」

ユリーが気に入ったみたいだ。


「気品があるでしょ?」

と、エレナ博士。


「高そうだな。貰っちゃって大丈夫なのか?」

俺が聞いた。


「一応名目は、長期テストをすることになっているからね」


 なるほど。


 俺たちがそのクルーザーのハッチに近づくと、中からアンドロイドのアエロアが出てくる。

「出発準備はできています」


 アエロアは、先日の小惑星宇宙船タラリアから連れて来た女性型アンドロイドのうちの一体だ。


「今後は、このアエロアがこの船の専属パイロットになるから」

と、エレナ博士が俺たちに説明した。


 この船はこれから主に俺のフィアンセたちが使うから、操縦免許を持っていないカトリーヌやアミルの為に専属のパイロットを置くわけだ。

 ちなみにフィアンセたちは操縦免許がなくても、操縦はしようと思えば出来る。

 しかし、火星や地球の領空内では免許がなければ違法になるから、アエロアたちアンドロイドに免許を取得させて、専属パイロットにしたわけだ。

  

 そのアエロアは、今日はどこかの航空会社のキャビンアテンダントのような服を着ている。

 たしかアエロアたちは、シェリーたちのようなメイド服を気に入っていたはずだ。


「あれ? メイド服じゃないんだ?」

俺が聞いた。


「メイド服もキャビネットにあります。そちらの方がよろしかったですか?」

と、アエロアが自分の服を気にしながら聞いてきた。


「あ、いや。これはこれで、船の雰囲気と合っているからいいよ」

「私は、どちらも気に入ってます。では、中へどうぞ」


「じゃあ、地球までよろしくね」

ユリーがアエロアにそう言って、船に乗り込む。


 俺やエレナ博士も乗り込んだ。

 俺とユリーはこの船に入るのは初めてなので、まずは船室をざっと見ていくと、豪華なリビングや綺麗な客室も数部屋あった。

 それらの部屋のデザインは、現代的でモダンなデザインだ。


 でも今回はワープですぐに地球に着くこともあり、俺たちはコックピット内に備え付けられたソファに座った。操縦はもちろんアエロアに任せる。


 すると、アエロアがマイクを持つような格好をする。

「アテンションプリーズ。当機は間もなくアメリカに向けて出発します。シートベルトをお締めください」


 なんだ?


「ああ。今彼女は、スチュワーデスが出てくる昔のドラマにはまってるみたいだから」

エレナ博士が苦笑いした。


 はは。


「では出発します」

アエロアがそう言って、クルーザーを発進させた。


「でもこの船は、一人ですべて操縦できるんだな?」

俺は横に座っているエレナ博士に聞いた。


「そう。主に個人で使う想定だから、コンピューターが補助して、すべて一人で出来るようになっている」


 俺たちを乗せたクルーザーは、火星の第二空港を離れ宇宙空間に向かう。

 でも、ヘリオスなどに比べると、スピードが遅いようだ。


 それを察したのかエレナ博士が、

「この船のエンジンは、市販のものと同じイオン・エンジンだからね」

と、言ってきた。


 俺たちのスターダストやヘリオスはエルフの技術の推進システムになっているが、この船はイオン・エンジンだから、あの二隻ほどのスピードは出ないということだ。

 それでも、今までのロケットエンジンに比べたら、ずいぶん速いわけだが。


 火星から少し離れたところまで来るとアエロアが、

「まもなくワープします」

と、言ってきた。


 するとエレナ博士が、

「アエロア? 今回はワープする前にシールドを忘れないでね。地球はちょうど、みずがめ座流星群が来ているころだから」

と、指示した。


「かしこまりました」

パイロットのアエロアが、こちらを振り向いてニコリとしてくる。


 彼女は操縦席の横の端末を操作し、この船にシールドを張ってから、地球のワープ管制とリンクして自動的に地球へのワープ・ゲートを開く。


 ワープ管制とは、ワープの出口座標を自動的に管制するシステムだ。

 ワープができる船が多くなると、ワープから出た時に出会い頭の衝突をする可能性が高くなるので、それを避けるために作られた。


 ワープから出ると、早速小さい隕石がシールドに当たり、光って消滅する。


 とその時、警報音が鳴った。

 

「なんだ!?」

と、俺。


 船のコンピュータが、状況を知らせてくる。

「異常接近を自動回避しました。原因は他の船がすぐ右舷にワープアウトしたことによります」


 もう少しでぶつかるところだったみたいだ。

 自動で急なカジを切ったみたいだが、この船も加速度軽減装置が付いているらしく、揺れは大して感じなかった。


 すると、アエロアが右舷を見て、

「どこ見てやがる、このボケが!」

と、怒鳴った。


 俺は半目でエレナ博士を見る。

「何、教えてるんだ?」


「ああ、彼女は自分で色々な映画やドラマを見て、地球の習慣を覚えてるのよ」

エレナ博士が肩をすぼめた。


 そう言えば、さっきもそんなことを言ってたな。

 ユリーは、隣で苦笑いしている。


 でも、今は地球と火星の間でワープの管制も始まっているから、こんなニアミスは起こらないはずだ。

 俺は不思議に思って窓に行き、相手の宇宙船を見てみた。

 ユリーも俺の横に来て、俺に密着して一緒に見る。


「あれ? こんなタイプの宇宙船なんて売ってたか?」

俺がそう言うと、エレナ博士も横に来て窓の外を見た。

「これは……人類の作ったものじゃないわ」


 俺たちのクルーザーのすぐ横に、二十メートルぐらいの、球形に尾びれが付いているような形の小型宇宙船が並走している。

 その時、その宇宙船に少し大きい隕石が衝突した。


「あっ! シールドが無いのか?」

俺が言った。


 その宇宙船は、地球の方に向かって落ちて行くようだ。

 おそらく向こうの宇宙船は、俺たちとのニアミスに気を取られ、隕石の回避に間に合わなかったのかもしれない。


「でも、穴は空いてないわ。外板が相当硬いのね。だからシールドがいらないんだわ」

と、エレナ博士。


「じゃあ、大丈夫かな?」

「でもあの調子だと、中に乗ってる生物は衝撃を受けて気絶しているかもしれないわね。このままだと墜落するわ」

「この船には牽引ビームは?」

「積んでないわ、個人向けのクルーザーだから」

「しょうがない、俺がテレポートで行ってみるか」


 俺はすぐに宇宙服を着た。向こうの宇宙船に、酸素があるとは限らないからだ。


「アエロア、ぎりぎりまであの船と距離を一定に保ってくれ」

俺はそう言って、アエロアがスピードを合わせたのを確認すると、その宇宙船にテレポートした。


 この宝珠によるテレポートの仕組みはよくわからないが、宇宙船同士のスピードに差があるとうまくテレポートできない気がするので、距離を一定に保ってもらうわけだ。

 もしかすると、違う速度で動いている乗り物へも上手くテレポートできるのかも知れないが、わざわざ危険をおかしてまで試す気にはなれない。

 

 テレポートで出たところはコックピットのようだが、かなり狭い。

どうやらこれは、宿泊設備もない二人乗りぐらいの宇宙船のようだ。


 操縦席には、男性が一人コントロールパネルの上にうつぶせで倒れていた。

 彼は人間の姿をしている。


 宇宙服のセンサーによると、コックピット内の空気の構成は、地球とほぼ同じだ。

 それなら、彼をこのまま俺たちの船に連れて行っても大丈夫そうだ。


 俺はすぐに彼を抱えて、俺たちのクルーザーにテレポートで戻った。


 俺が戻るとアエロアは、

「では離脱します」

と言って、俺たちのクルーザーを落下中の宇宙船から離して、水平飛行にする。


 俺がコックピットの後ろのソファに彼を座らせると、ユリーとエレナ博士が彼に近づいて顔をのぞき込んだ。

 彼は東洋人のような容姿で、三十代ぐらいに見える。なかなかハンサムだ。


「生きてるの?」

ユリーが聞いた。


 エレナ博士が、脈を診ている。

「生きてるわ。彼はどうやら頭を打ったみたいね」


 俺は一応、宝珠の白の癒しの光を当ててみたが、彼はまだ起きない。


「エレナ博士? この船には医務室はないんだよな?」

俺が聞いた。


「無いわ。地球の病院に連れて行きましょ?」


 俺たちは念の為に病院に連れていくことにした。

 見た目は人間だから、きっと治療法も同じだろう。


 そのあとエレナ博士は、アエロアの横にレーダーを見に行く。

「彼の宇宙船は太平洋に墜落したわ。火星にいるイーサンにスターダストで来てもらって、あとで引け揚げに行きましょ?」


 エレナ博士は亜空間通信機でイーサンに連絡をとり、地球に向かうように指示をした。


 次にエレナ博士は、異星人がらみなので、念のため世界連邦政府のスカーレットに連絡して事情を説明する。


「……その彼は、異星人なのね?」

スカーレットが聞いてきた。


「見た目は地球人と変わらないけど、あんな宇宙船は地球では作られていないわ」

と、エレナ博士。


「じゃあ一般の病院よりも、連邦政府の病院の方がいいわね。茨城空港に救急車を向かわせるわ」

「じゃあ、よろしくね」



 俺たちは日本に向かい、茨城空港に着陸した。

 すぐに救急車がやって来たので、彼を担架に乗せて連れて行ってもらう。


 救急車が去るのを見ながらユリーが、

「彼の宇宙船を引き揚げに行くの?」

と、俺に聞いてきた。


 今日地球に来た目的は、ラムをアメリカに迎えに行くためだった。

 このままでは、ラムと約束した時間に間に合いそうもない。それでユリーは聞いてきたわけだ。


「そうか。ラムも家で首を長くして俺たちを待っているに違いないな。ニ手に別れるか」

「じゃあ私は、このままクルーザーでラムを迎えにアメリカに行くわね」

「たのむ。俺とエレナ博士は彼の宇宙船を海底から引き揚げて、そのあと彼に会いに、またここに戻ることになると思う」

「わかったわ」


「一人で大丈夫だな?」

俺がユリーにそう言うと、

「もう大人よ」

と、ユリーが少しふくれた。


「ああ、ごめん。じゃあラムによろしく。あとで火星の家で会おう」

俺はそう言って、ユリーを送り出した。


 クルーザーはユリーを乗せて発進する。


 まあ、アエロアもついているから大丈夫だろう。



 ちょうど入れ違いで、イーサンがスターダストで到着した。


 俺たちが歩いて近づくと、イーサンが中から降りてくる。

「社長、エレナ博士、お待たせしました」


 すると、イーサンの後ろからアミルも降りてきた。

「暇だったから来ちゃった」


「ちょうどよかったわ、アミルにも見てもらった方がいいと思ってたの」

と、エレナ博士。


「じゃあ、引き揚げに行こう」

俺たちはスターダストに乗り込み、太平洋の落下地点に向かった。



 俺たちは、前にエルフのエリルの宇宙船を引き揚げた時の様に、けん引ビームを使ってその宇宙船を海底から持ち上げ、そのまま海面から百メートルぐらいの高さまで上昇する。

 そこで、その宇宙船をスターダストの貨物室に入れた。


 俺たちはスターダストの操縦をイーサンに任せて、皆で貨物室に行ってみる。


 俺とアミルは少し離れたところから、その大型バスぐらいの大きさの、丸く白っぽい宇宙船を眺めた。

 早速エレナ博士はセンサーを使って、ドアの開け方を探りだしているようだ。


 アミルが記憶をたどっている。

「んー、この形の宇宙船、どこかで見たことあるわ。どこだっけ……。あっ、地球で言う『アルタイル』星系にこの形の宇宙船を作る人々が住んでいたはず」


「アルタイルにも人が住んでいるんだ?」

俺は宇宙船に目を向けたまま聞いた。


「そうよ。でも私は約千五百年前から地球にいたから、異星人に関する知識は千五百年前のものだけど、あの星の当時の科学レベルは今の地球と同じぐらいだったわね」


 その頃に、ちょうどワープが出来るようになった感じかな?


「たった十七光年しか離れていないから、ちょくちょく地球に来ていてもおかしくはないよな?」

「来てるんじゃない?」


「え?」

俺はアミルを見た。


「現に今回も来たわけだし」

「そうか」



 俺たちが話していると、いつのまにか宇宙船の中に入って調査をしていたエレナ博士が、ドアから顔を出す。

「推進システムは大したこと無いわね。といってもワープはできるし、今の地球よりは進んでいるけど。興味深いのはこの外壁の金属ね。すごく硬いわ。駆逐艦ぐらいのレーザー砲ではびくともしなさそうね。だから、隕石が当たっても太平洋に墜落しても壊れていない」


「へー?」

と、俺。


「でも、中に乗っている人への衝撃を吸収する装置が貧弱だから、今回彼は運悪く頭を打ってしまったのね」

「船自体は何ともないんだ?」

「シールドが無くても、たいていの事には耐えられそうだわ」


 俺は近寄って、その船の外販を軽く叩いてみる。

 音は響かないようだ。

 よくわからないが、よほど密度が高いのか、相当分厚いのかもしれない。


「この金属は、地球や火星でも作ろうと思えば作れそう?」

俺が聞いた。


「特殊な炉を作る必要があるけど、問題は材料が地球や火星ではあまり採れないことね。いわゆるレアメタルがずいぶん含まれているから」


 そうか。

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