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レリック・ハンター  作者: 中川あとむ
第二十話 地球連邦
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20-4 地球連邦会議

 俺たちはオルニー大佐の車で、マイアミ空港まで送ってもらった。


 このオルニー大佐なら、ある程度話してもいいかもしれないな。百パーセントはまだ信用できないが、軍人にしては話が分かりそうだ。

 もしかしたら、今後異星人の事件が再びあった時に、アメリカ宇宙軍の手を借りることが出来るようになるかもしない。


 俺は車を降りると、宇宙空間で待っているイーサンを無線で呼ぶ。

「もう降りてきていいぞ」


 するとオルニー大佐が、

「おい、また何か来るぞ」

そう言って、俺たちの後方を指した。


 俺は振り向いてそれを確認すると、すぐに無線で訂正を入れる。

「イーサン、ちょっと待った」


 三機のVトールが、こちらに近づいてくるところだ。


「ありゃ、近衛部隊だ」

と、オルニー大佐。


 おそらく、さっきの国家保安局のやつらが通報したのだろう。


 俺は焦って、横にいたエレナ博士を見る。

「エレナ博士、逃げないと嘘がばれるぞ」


 しかしエレナ博士は、そのVトールを見ながら

「しょうがない」

と、ボソッと言った。


 しょうがない? どういうことだ?


 そのVトールは、俺たちから三、四十メートル程離れた所に着陸した。


 儀礼服のような飾りのついた軍服を着た兵士が数人降りて来て、近づいて敬礼してくる。

「エレナ様ですね?」


「そう」

「陛下が、お会いになりたがっています」

「もし、やだと言ったら?」

「強制はできません。私たちが叱られるだけです」

「しょうがないわね。わかったわよ」


 え?


「ありがとうございます。では、皆さまもどうぞ」


 俺たちとオルニー大佐は、近衛部隊のVトールに乗り込んだ。

 近衛部隊の送迎用Vトールだからか、機内はまるで応接室のようだ。


 Vトールの中で、オルニー大佐が俺とエレナ博士を交互に見てくる。

「君たちは親子なんだろ? 何で『エレナ博士』って呼んでいるんだ?」


「まあ、いろいろあってね」

と、俺。


 オルニー大佐は他にも色々と聞きたそうな顔をしていたが、俺はそれには構わず考えを巡らせる。


 エレナ博士は、いったいどういう魂胆なんだ?

 まあ、「ロックフェルド」という苗字が本当だったとして、あまり聞かない苗字だが他にいないことは無いだろう。たまたま同じだっただけで、王様と関係あるとは限らない。


 でも、王様が呼んでいるということは、遠い親戚だろうか? それとも昔、アメリカ政府で働いていて、知り合いなのか?

 まさか、アメリカの王様から何かの密命を受けて、火星で諜報活動をしていたとか?

 あのハッキングの腕からして、その可能性もあるな。


 エレナ博士をチラッと見るが、機嫌が悪そうだ。あの様子では、聞いても答えてくれないだろう。



 壁のモニターにはVトールの前方の映像が映されていたが、やがてホワイトハウスが見えてくる。

 そのホワイトハウスのすぐ後ろには、王国制になってから建てた宮殿も見えていた。

 ニュースかなにかで見たことがあるが、今も政務をするときはこちらのホワイトハウスを使っているらしい。


 俺たちを乗せたVトールは、後ろの宮殿の中庭に着陸した。

 Vトールから降りると、先ほどの兵士が俺たちを案内して宮殿内に入るが、エレナ博士以外はボディーチェックをされてレイガンを預けさせられる。


 俺たちは応接間に案内されて少しの間待っていると、六十代の国王と思われる人と、四十代ぐらいの身なりがいい男性が二人で入ってきた。


「陛下だ」

オルニー大佐は俺たちに小さい声で言うと、ソファから立ち上がって敬礼をする。


 俺たちも立ち上がった。


「本当に、エレナか!?」

アメリカ国王が、嬉しそうに声をかけてきた。


「父上に、兄上か。元気そうね」

と、エレナ博士はいつもと変わらぬ口調で。


 うそだろ?

 俺は、ユリーと顔を見合わせた。


「心配しておったぞ。火星で病気になって、冷凍睡眠に入ったところまでは聞いておった」

そう言ってエレナ博士と国王はハグをしたが、エレナ博士は少しよそよそしい。

 もしかして、照れているだけかもしれないが。


 次にエレナ博士は兄とハグしたが、こちらは普通のハグっぽい。


 王様が続ける。

「エレナ彗星の報道の時に、もしやと思っていたが、あまりにも若いのでな」


「十五年間も寝ていたからね」

「なるほど。して、そこの者たちは?」


 エレナ博士が、俺を親指で指す。

「この子は私の息子のショウ。冷凍睡眠に入る前に生んだ」


「そうなのか。会えてうれしいぞ」

そう言って、王様は俺にハグしてくる。

 俺は、祖父である王様と、伯父さんに当たるエレナ博士の兄とも挨拶した。


 続けてエレナ博士が、ユリーを紹介する。

「隣にいるのがショウのフィアンセで、火星の公爵の娘さんのユリアナ」


「はじめまして」

ユリーは膝を少し落として、貴族らしい丁寧な挨拶をした。


「ああ、初めまして。よろしくな」


 王様は俺とユリーの肩に手を掛けて満面の笑みを浮かべる。

「そうか、そうか。孫のショウのフィアンセが、次期国王と言われている公爵殿の娘とはな。これで火星との縁ができたわい」


 すると、エレナ博士は少し迷惑そうな顔をする。

「私は父上の、そういう政治ですべて見るところがいやで、家を出たんだ。政治の道具にはされたくなかったから。だから、ショウには何も教えていない」


「まあ、そう言うな」


「なーんだ、ユリーと一緒じゃん」

俺はエレナ博士と、ユリーに小声で言った。


 エレナ博士とユリーは複雑な顔をしている。


 次に王様が、少し離れて立っていたオルニー大佐の方をチラッと見ると、彼が姿勢を正す。

 

「私はアメリカ宇宙軍大佐、ジャック・オルニーであります」


「で、君は例の件で捜査をしていたのかね?」

王様がオルニー大佐に聞いた。


「はい、その通りであります」


 俺たちがエリルさんの宇宙船を海から引き揚げたのを、国王も注目していたようだ。

 国家保安局からも、報告が来ていたのかも知れない。


 王様がエレナ博士の方を向く。

「エレナよ、そのことについて話を聞かせてくれんか? 軍や諜報機関が騒いでおる」


 エレナ博士は、ため息をついて俺を見てくる。


「いい機会だから、背景とか知っておいてもらってもいいんじゃないか?」

と、俺。


 すぐにまた、敵対的な異星人がやって来ないとも限らない。

 今までみたいに俺たちだけで対処できればいいが、出来ない場合は強力な宇宙軍を持つアメリカの助けが必要になるかもしれない。

 

 エレナ博士は肩を少しすくめた。



 俺たちは、オルニー大佐も含め、皆で会議室に移った。


 俺から説明することにする。

「少し長くなりますが、初めから話します……」


 俺たちはワープの実験中に暴走して一万光年を飛び、サクバス人に会ったこと。そのあとエルフに助けられたこと。宇宙には凶悪な種族もいること。金星でおきたクモの様な異星人のことや、地球で起こったサクバス人の事件のこと、エレナ彗星のことなどを順に話した。


 そして、ワープ・システムの技術をエルフから教えられたが、その技術は地球が完全に統一されてから公開する約束になっていること。

 地球が統一された後は、向こうに外交を結ぶ意思があること。

 今回海から引き揚げたのはそのエルフの種族の宇宙船で、これから母星に送り届けようと思っていることなどを話した。


 その間エレナ博士は、俺の話に相槌を打っていた。


「ジョージはどう思う?」

王様はエレナ博士の兄に意見を聞いた。


「にわかには信じがたい話ですが、でもこれで昨今の事件の説明がつきます。エレナが私たちに嘘をついたこともありませんし」


 おっ? エレナ博士は親兄弟に嘘をついたことがなかったのか。

 まあ、確かに俺たちにも嘘はつかないが、はぐらかしたり、ごまかしたことは何回もあるけどな。


「ショウが説明した通り、彼らとの約束で、ワープ・システムの技術は地球が統一後に公開するつもりよ。その方が地球のためになるわ」

エレナ博士が、念を押して言った。


 王様が今度はオルニー大佐の方を見る。

「大佐は、ワープについてはどう思うね?」


「宇宙軍としては一刻も早く欲しい技術ではありますが、地球を早く統一してしまえば、すぐに手に入ることも事実ですから」


 王様は少し考えてから、

「どうだね、エレナ、ショウそれにユリアナ殿。明後日、地球連邦会議が開かれる。その席で、今の事を他の王たちにも話してみないか? うまくすれば、地球の統一を早められるぞ」

と、言ってきた。


 え?

 地球の統一を早められるなら、それに越したことはないな。


 今は通貨や言語、法律の統一までは行われているが、政治や軍の統一はまだ先だ。

 統一されれば国同士の武力による紛争の懸念が無くなるし、連邦軍ができれば敵対的な異星人への対処を任せることができるかもしれない。


 でも、エレナ博士は意外に思ったようだ。

「父上がそんなことを言うとはね」


「私は十七年前とは違う。それに統一のメリットは大きいからな。軍備を削減できれば国家予算が大幅に減らせるし、無駄飯を食わせている外交官や諜報機関も減らせる。その分を社会保障費に回せば、社会はもっと安定する」


 やはり地球統一は、国王にとっても民にとっても、いいことが多そうだ。

 統一後は国王の権限も少し減るが、今の国王たちは統治を続けるし、民が満足すれば昔みたいに革命も起きなくなって国王も安泰か。


 俺はエレナ博士の方を見て、

「こう異星人との接触が増えてきていては、異星人の事を他の国にも知っておいてもらう方がいいんじゃないか? もし今回地球が早く統一できなくても、防衛のために連邦軍の創設だけでも、前倒して検討してもらうとか」

と、言った。


「そうね……」

と、エレナ博士。



 俺たちはとりあえず、エルフの女性エリルを彼女の星に送り届けてから、その会議に出席することにした。

 祖父の王様も今後のエルフ族との外交を考えると、それで納得してくれた。


 そのあと俺は宮殿までスターダストを持ってくる許可をもらい、イーサンに連絡して迎えに来てもらう。

 イーサンには完全には着陸せずにそのまま地表から数メートルの高さで待機してもらい、俺は人が見ていないスキに、エレナ博士とユリーの肩を抱いてコックピットにテレポートした。

 急に消えて不審に思われるかも知れないが、次にもし聞かれたら、これも異星人の技術とでも言えばいいだろう。


 俺がそうしたのは、祖父である王様たちを疑うわけでは無いが、スターダストが降りたとたんに何かされないとも限らないからだ。

 心配しすぎかもしれないが、エリルさんも乗っているし、念には念を入れておく。


「大丈夫でしたか?」

スターダストに戻ると、エリルが聞いてきた。


「いろいろあったけど、おかげで地球の統一が早められるかもしれない」

俺が応えた。


「そうでしたか」


「じゃあ、エリルさんを母星に送りに行きましょ?」

ユリーが言ってきた。


「ああ。行こうか」

と、俺。


 イーサンが操縦し、俺たちはすぐに宇宙空間に出る。

 そこで、エルフのエクエルに亜空間通信を入れた。


「どうしました?」

エクエルが聞いてきたが、すぐに俺たちと一緒にいるエリルに気が付く。

「……そこにいるのはエリルか!? 千年前に行方不明になって心配していたぞ。無事であったか」


「はい、兄上。この方たちに、地球の海底から救出していただきました」

エリルが応えた。


「兄上!?」「千年!?」

俺たちは絶句した。


「そうだったか。ありがとう、みなさん」

と、エクエル。


「俺たちもあなたに救っていただいたし、礼には及びません。それで、今からそちらに送り届けようとしているところです。それでは後ほど」

俺はそう言って、通信を切った。


 エリルは千年間寝ていても記憶を失わないし、体も大丈夫そうだ。さすがエルフの技術だ。

 今の地球の技術では、エレナ博士のように十数年寝ているだけで記憶がなくなってしまう。


「千年間も寝ていたんですね?」

ユリーがエリルに聞いた。


「そういうことらしいです」

「どうしてまた、あんなところに?」

「私は、アミルというエルフを探しに来たのです。そうしたら、ユーメセスの船と遭遇して、戦闘になりました」


「アミルだって!?」

俺たちは再び驚いた。


 アミルというエルフは、センテカルドの建国物語に出てきたエルフと同じ名前だ。

 あの物語の中ではセンテカルドの中興の祖であるレオニード・オーマールと旅をして、一緒にドラゴンを倒し、最後にはレオニードと結婚したはずだ。


 俺はそのあたりを聞いてみる。

「もしかしたら、八世紀ごろのセンテカルドの王様と結婚した、あのアミル?」


「センテカルドという国は知りませんが、彼女は地球人と結婚して一人で地球に残りました。地球人の旦那さんは、とっくに亡くなられたはずですから、一人で寂しい思いをしているのではないかと思って、探しに来たのです」


「なるほど」

 

 そうか、昔はセンテカルドという国名ではなくて、あの当時はモラブ王国だったか。

 あのモラブ王国の建国物語は、千四百年ぐらい前のことだから、アミルがその王様と結婚してから四百年後に様子を見に来たわけか。

 なんとも、俺たちと時間の観念が違いすぎる。


「では、行くわよ」

エレナ博士がワープゲートを開いた。


 

 俺たちはエリルをエルフの星まで送り届けて、彼女の宇宙船もそこに降ろし、すぐに火星に帰って来た。


 夕飯の時に、皆にいつものように今回の出来事や連邦会議に出席する事を知らせる。

 すると、カトリーヌやエマも一緒に行きたがったので、当日は会議に出席してもらうことにした。

 カトリーヌはエジプト王の孫だし、エマはセンテカルドの姫だ。彼女たちも地球の早期統一を望んでいるので、何か役に立ちたいらしい。

 

 そしてユリーは伯父の火星王に、今回の成り行きを連絡をしていたみたいだ。



 二日後、俺たちはヘリオスに乗り、前回のメンバーにエマとカトリーヌを加えて地球に行った。

 今回は、会議が行われる日本の茨城に直接向かう。


 ヘリオスは元々駆逐艦だが、船室が多く部屋も広いので、大人数で行くときにはこちらで行くほうが便利だ。

 そして、会議に出席する他の国の王様たちも護衛艦を一隻は伴って来ているので、今回俺たちがこの船で行っても特に問題にはならない。


 前回来た時は民間の空港を利用したが、今回は会議に出席するためなので、他の王様たちと同様に連邦政府の専用空港に降ろす許可をもらった。

 そこからは、空港の地下に張り巡らされたリニアモーターの移動システムに乗り、連邦政府のビルに直接向かう。


 議事堂に着くと、俺たちは先日会った連邦政府議会の議長スカーレットと再会した。


「また会ったわね。アメリカ国王から話は聞いているわ」

と、スカーレットは言いながら、エレナ博士を意味有りげに見る。


 エレナ博士はスカーレットにうなずくと、今度は俺に、

「今だから話すわ。スカーレットは私のいとこよ」

と、言ってきた。


「なーんだ。親戚なんだ」


 それで俺はやっと、前回サクバス人の件で依頼を受けた時のスカーレットとエレナ博士の含みのある会話が理解できた。

 そしておそらくスカーレットは、いとこのエレナ博士にここで会ったことはエレナ博士に口止めされていて、親戚であるアメリカ国王にも知らせていなかったに違いない。


「スカーレット。私の息子のショウよ」

エレナ博士が、議長に俺を改めて紹介した。


「あら、そうだったの? よろしく」


 エマやカトリーヌを紹介した後、俺は会議の中で王様たちに見せたい映像や資料の入ったメモリーを、事前にスカーレットに渡した。

 スカーレットは、マル秘扱いでそれを係官に渡す。タイミングよく、会議に出席している各国の国王や大使に配信してくれるはずだ。



 連邦議会が始まり、俺たちは最後の議題で呼ばれて議事室に入った。

 議事室の形状は、前に演壇や議長をはじめ連邦政府関係者が座る席があり、それに向き合うようにすり鉢状になった席に各国の国王たちが座る形だ。

 各国の国王は大使などを伴って来ているので、議場には四百人近くが席に座っている。


 俺とエレナ博士、ユリー、エマ、カトリーヌの全員で入り、演壇の横にある席についた。そして、議長のスカーレットがまず俺たちの名前を紹介する。

 俺たちのことは国王たちに先入観を持ってもらいたくなかったので、火星のレリック・ハンターという事だけ言ってもらった。


 その後、議題の討議に入る。

「お手元に急遽配信した最後の議題について、このショウさんから説明していただきます」

と、スカーレット。


 俺は王様や大使たちの前で、一連の事を説明する。

 ワープの実験で偶然エルフ族に会ったことから始め、金星の近くで起こったクモの様な種族との事件や、カリフォルニアで起きた事件、エレナ彗星、そして先日の一般市民の異常行動がサクバス人の仕業であることを、映像を見てもらいながら説明した。

 もちろん、エルフ族は友好関係を結びたいと願っていることも話す。


 海底で見つけたリザードマン=ユーメセス人の宇宙船の中にあった、骨の映像も見せる。

 このユーメセス人は、人間を捕食するということも話した。


「……このように、異星人との接触が増えてきた現在、地球を一刻も早く統一して、異星人に対応するべきだと思います。そして私たちは、ワープの技術をエルフ族から教えてもらいましたが、それを公開するのは、地球が完全に統一された後にするという約束になっています」


 ワープの技術の公開を餌にするわけでは無いが、それを望んでいる国は、早く統一することに賛成してくれるかもしれない。


 しばらくは誰も発言せずに、国王たちは隣りに座っている大使や、近所の国王たちと話していた。

 にわかには信じられないのかもしれない。


 ここで、東洋のある国の王が発言する。

「これは本当の事なのか?」


「今お見せした映像には、すべて偽造防止証明が付いています。あとは信じていただくしかありませんが、金星の近くで起こったことや、サクバス人が起こした事件は、皆さんのお耳にも入っているのではないですか?」


「君たちが提案している、統一の前倒しについてもう少し説明してくれ」


「皆さんのお手元に配信した異星人の資料は、エルフ族からもらったものですが、宇宙には凶悪な種族もたくさんいます。もし彼らに地球が見つかった場合、一国では対処できません。それが今回提案する最大の理由です。少なくとも連邦軍の創設は早急に検討していただきたいと思います」


「ワープシステムの公開は、すぐにはできないのか?」

他の王様が聞いてきた。


「統一前では二つ危険があると考えています。一つは内戦の危険。もう一つは先ほどの通り、宇宙には危険な種族もたくさんいます。探検などでその種族の星にワープしてしまった場合、彼らを地球に招く危険性もあります。それに将来、エルフ族との信頼関係を継続するには、ここで約束をたがえない方がいいと思います。ただ、技術の公開はしないことになっていますが、必要ならこれから創設される連邦軍に、一光年程度の制限付きのワープシステムを搭載した艦船を造って渡すぐらいのことはできるかもしれません」


 どこかの王様が発言する。

「君は何の権限があって、我々に指図するのか?」


 俺が、押し付けてるように聞こえたか?

 まあ、半分そうだけどな。


 すると、遠隔のテレビ会議システムで参加している火星王が、

「そこにいるユリアナは私の姪で、ショウ殿には私も何度も助けられているし、姪と婚約もしている。私はショウ殿を信じ、彼の提案を支持する」

と、助け舟を出してくれた。


 すると今度は、ヨーロッパのある国の王が発言する。

「君は火星の出身だろ? 婚約者も火星の姫だ。火星だけがその技術を持つことは無いと言えるかね?」


 そこでアメリカ国王が発言する。

「この青年は、そこにいる私の娘、エレナの息子だ。つまり私の孫になる。私は娘と孫を信じる」


 議場が少しざわついた。


 次にエジプト王が発言する。

「そこにいるカトリーヌは私の孫娘だ。カトリーヌもショウ殿と婚約しておる。私もショウ殿を信じる」


 実際には、婚約はまだ口約束だけどな。


 次にセンテカルドの王も発言した。

「そこにいるエマは私の娘だ。エマもショウ殿と婚約している。したがって私もショウ殿を信じるし、支持する」


 議場が騒がしくなった。婚約者の数が多いことに驚いているのだろうか?


 すると、アジアのある大国の王が、

「ショウ殿、私の所にも姫が何人かおるが、一人貰ってくれんか?」

と、言ってきた。


 はは。何を言い出すやら。


 それを聞いて会場がますます騒がしくなった。


「うちには姫がいないぞ、どうする?」

なんて話している声も聞こえてきた。


 やれやれ。



 二時間の休憩後に、地球の統一を早めるかどうか、連邦軍の創設を先にするか、ワープの技術の公開を求めるかどうかの議決をとることになった。


 まあ、約束を破らせてまで技術の公開を迫るかどうか。将来エルフたちとうまくやっていきたいかは、王たちが決めることだ。俺が一人で騒いでもどうにもならない。

 もし、最悪の事態になっても、俺は俺で最善を尽くすだけだ。


 でも心配をよそに、休憩の二時間の間に、ロシアや東ヨーロッパの国王たちをセンテカルドの王様が説得して意見をまとめてくれた。

 アフリカと中東はエジプト王が説得し、旧西側の国々はアメリカ国王が説得してくれた。

 アジアの国々は、先ほどのアジアの王様の発言を聞いて忖度そんたくしたようだ。


 もしかしたら本当に、あのアジアの国の姫様と結婚させられるかもしれない。うーん。


 そのあと国家間で調整がいろいろとされて、議決をとった。


 本来は十年後ぐらいに地球連邦を完全統一するはずだった予定を二年後に早め、ワープ技術自体の公開はその時でいいことが決まった。

 やっぱり、準備に二年はかかるみたいだ。


 そして、異星人の研究のための組織が作られることになり、エレナ博士や俺はそこに協力することになった。

 また、連邦軍の創設は統一よりも先にすることが決まり、連邦軍に制限付きのワープができる軍艦をMHICで製作して配備することも、検討することになった。


 ワープの技術自体はまだ公開しないし、ワープできる船は連邦軍にしか提供しないので、これならオーケーだろう。


 一番重要な連邦軍の創設が早急にされることになったので、今回の会議は成功だ。

 これで今後は、対異星人の事件は連邦軍に任せられるかもしれない。



 会議の後、議長のスカーレットが俺に、

「あなた、これだけ王たちと縁があるなら、統一後は地球の大使として活躍できそうね?」

と、言ってきた。


 それを聞いて俺は、初めてエルフの星に行った時に、エクエルが未来を見て言っていたことを思い出した。

 俺が地球の大使としてエルフたちに会いに行く未来だ。それがだんだんと現実になりつつある。

 話の中に出てきたセンテカルドの昔の名前、モラブ王国は、ヨーロッパに実在したモラヴィア王国がモデルになっています。現在のチェコやスロバキアのあたりにありました。


 しかしながら、この物語はフィクションであり、実在の国々とは関係ありません。

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