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レリック・ハンター  作者: 中川あとむ
第十五話 夢魔
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15-3 乗っ取り

 エレナ博士が病院の受付で、イーサン・レインの病室を聞いてきた。

「彼はやはり、この病院に運ばれているわ」


 俺はもう放っとけばいいんじゃないかと思うが、皆は許せないみたいだ。


「じゃあ、やはり行く?」


 俺が皆の顔を見回して聞くと、皆がうなずいてくる。


 しょうがない。


 俺たちは元気になったアデル教授を連れて、イーサン・レインの病室に向かった。

 

「でも、家族でもないのによく病室を教えてくれたわね。最近はどこの病院でも、そういうのはうるさいのに」

エマがエレナ博士に言った。 

 

「受付の女性はアンドロイドじゃなかったので、いろいろおしゃべりしたら教えてくれたのよ。それで、イーサン・レインの所にさっき面会者が来たらしいけど、すぐに帰って今は病室には彼以外誰もいないみたいよ」


「家族が来たのか?」

俺が聞いた。


「そうじゃないらしいわ。でもなんか、すごい色っぽい女性だったらしいわよ」


「恋人かしら?」

と、ユリー。


「まさか、その彼女に浮気を疑われないように、イーサン・レインはアデル教授のことを知らないと言ったのか?」

俺が言った。


「もしかしたら、その彼女が資産家の娘で、お金目当ての結婚が控えているとかね?」

ユリーの想像が膨らんでいいく。


 それは映画の見過ぎじゃないか?


 俺たちは彼の病室の前に着くと、近くに病院関係者や医療アンドロイドがいないのを確認して中に入った。


 別に何をしようと言うわけでは無いが……たぶん。


 病室の中に入ると、この部屋も個室なので邪魔は入らないで済みそうだ。

 ベッドにはイーサン・レインが横になっているが、どうやら彼は寝ている様だった。


 奥のサイドテーブルには、彼のものと思われるバッグと携帯端末やら、小物がいくつか置いてある。

 おそらく、先ほど面会に来たという女性が持って来たのだろう。


 俺はまず、彼の怪我を宝珠の白の癒しの光で治した。

 いくら自業自得とはいえ、俺にも少しは責任があるからだ。


 俺は怪我を治し終わると彼を起こす。

「おい。イーサン・レイン? 起きろ!」


「……ん?」

彼が目を覚ました。


 エレナ博士が、俺と入れ替わりでベッドに近寄る。

「あんたイーサン・レインね?」


 先ほどアデル教授のことを知らないと言ったので、念の為に聞いたのだろう。


「そうだが、誰だ?」

そう言って、彼は肘をささえに上半身を半分起こす。


「あんた、この子のこと、本当は知ってるんでしょ?」

エレナ博士が、少し離れて後ろにいるアデル教授を指した。


 アデル教授は子供が母親の陰で守ってもらうかのように、エレナ博士の後ろから近づきエレナ博士の腕を掴んでイーサン・レインの方を見ている。 


 彼は、アデル教授や俺たちの顔を見回してきた。

「あっ。またお前たちか。さっきも言ったが、知らないね」


「うそ!」

アデル教授が思わず声を上げた。


「……いや、知っているかもしれない。それならいいんだろ?」

イーサン・レインは面倒くさそうに言った。


 いい加減に俺たちにいなくなって欲しくて、適当なことを言った感じだ。


「え? じゃあなんで……」


「くそ。地球人とは、うるさいやつらばかりだな」

と言って、彼は枕の下からレイガンを出してきた。


 何!?


 俺はすかさずシールドを張って、そこにいた皆を守る。


 レイガンはきっと、面会者が持って来たに違いない。


 すると彼が、レイガンをアデル教授に向けて撃った。


「キャ!」「ヤダ!」

アデル教授とエレナ博士が、それをよけようとしながら小さく叫んだ。

 でもレイガンは、俺のシールドで吸収される。


 俺もすぐにレイガンを抜いて撃ち返した。もちろん麻痺モードだ。

 イーサン・レインはそのまま意識を失った。


「なんで、教授がレイガンで撃たれるの?」

エマが、わけがわからないでいる。


「さっき、地球人がどうとか、って言ってなかったか?」

俺がみんなに確かめた。


 ユリーが相槌をうつ。

「そうそう」


「アデル教授は、宇宙人とお知り合いだったんですか?」

俺たちのイーサンが、アデル教授に聞いた。


 でも、アデル教授は呆然としている。撃たれたことがショックみたいだ。


「こんな時に何冗談言ってるの? 宇宙人なんているわけないでしょ?」

エマがイーサンに言い返した。


 俺たちはエマを見て、首を振る。


「え? ……まさか、いるの?」


「詳しいことは後で話すわ」

と、エレナ博士。


「さて、どうするか。聞き出すにも麻痺してるから。二時間は起きないな」

と言って、俺は時計を見た。


「ショウ? さっきの力で頭の中に入ってみたら?」

ユリーが言ってきた。


「……本当に宇宙人なら、まったく違う夢を見ているかも」

と、エマ。


「そうか。じゃあ、やってみるか」

俺はそう言うと、イーサン・レインをベッドの上であおむけに戻し、その横に座る。

 そして、アデル教授にしたのと同じように、彼の右腕をつかんで左手を頭に置いた。


 すると、意識が遠のいていく。


 ん? ここは、彼の夢の中なのか? 真っ白で、何もないぞ。


 辺りは真っ白で、壁もないし、床や天井もあるのかどうかわからない。

 立っているのか、空中に浮いているのかわからないような感じだ。


 でも、見回してみると、離れたところに一箇所だけ暗くなっている場所があった。

 俺はとりあえず、その方向に歩いてみることにする。


 こんな空間でも、どうやら歩けるようだ。

 俺はその暗闇の方に歩いていくと、周りがだんだんと薄暗くなり、やがて真っ暗になった。


 その時、どこか上の方から声がしてくる。

「ショウは、何してるのかしらね?」


 この声はユリーだ。

 外の音が聞こえるのか?


「彼の夢の中で、裸の女性に誘惑されてるかもしれないわ」


 この声はエレナ博士だ。また適当なことを言って。


「そんなのだめよ」

ユリーが焦っている。


 もし俺が仮にここで誘惑されるとしても、現実じゃないんだけどな。


 すると今、暗がりの奥で何かが動いたような気がした。


 なんだ? イーサン・レインの意識なのか?

 よく考えないで入ってしまったが、もし彼が異星人ならどうなるんだ?


 俺は念の為にレイガンをかまえて、ゆっくり進む。


 でも夢の中なので、なんでもありだ。

 いっそのことミサイル・ランチャーでも出そうか?


 あれ? でも待てよ。もしこの夢の中で本人を殺したら、現実の本人はどうなるんだろう?

 こん睡状態にでもなるんだろうか?


 俺は念の為、レイガンを麻痺モードにした。


 その時だ、何かがこちらに近づいてきた。

 闇の中に、赤い目が光っている。


 そして、

「お前は何者だ? どうやってここに入った?」

と、野太い声で聞いてきた。


 これはイーサン・レインの声なんだろうか? 先程と随分違うが。


「そっちこそ誰だ?」

俺はそう聞いて、ライトを取り出し、照らしてみた。


 そこにいたのは、コウモリのような翼の生えた毛深い体に、人間っぽい顔の生き物だ。

 よく見ると頭には二本の角も生えているし、口には牙も生えている。


 なんだこれは!?


 俺は思わず後ずさる。


 これは彼の夢なのか? それとも、これが異星人の正体なのか?


 すると次の瞬間、奴の異様だった姿が変わった。色気のある人間の女性になる。

 ミニスカートで胸元も大きく見えていた。


「大丈夫よ。怖がらなくていいわよ」

と言って彼女は近づいてくる。声も艶やかな女性の声になっていた。


「さっきの姿はなんだ?」


「ここは夢の中よ、どんな姿にでもなれるわ。でも本当は人間なのよ。ほらよく見て?」

と言って、色気をふりまきながら近づいてくる。そして服のボタンを外し始めた。


 俺はおもわず警戒を解きそうになったが、先ほど「地球人とは……」と言ってレイガンを撃ってきたわけだから用心しないとな。


「だまされるか!」

俺がそう言ってレイガンを構え直すと、相手は一瞬で再び元の異様な姿に戻った。


「なぜだ?」

と、再び野太い声で言ってきた。


 つまり、なぜおまえは騙されないのだ、と聞いてるのか?


 すると、奴の手から爪のようなものが伸びて、俺を襲ってきた。

 俺はそれをよけながらレイガンを発射するが、その爪は俺の右腕に突き刺さる。


 痛っ!


 でもあいつは、俺のレイガンを受けても何ともないようだ。


「ふふふ。俺の領域で勝てると思っているのか?」

それが言ってきた。


 一旦引こう。

 

 俺はイーサン・レインの夢の中から出た。

 視界が病室の中に戻り、皆が俺の方を見ている。


 俺は思わず自分の右腕に手をやり、怪我をしているのか確認した。

 痛みは残っているが、実際の傷は無いようだ。


「どうしたの?」

エレナ博士が聞いてきて、他の皆も注目してくる。


「外に出よう」

ここでは、さっきのやつに聞かれるので不利かもしれない。



 俺たちは、イーサン・レインをそのままにして、病室の外に出た。

 病院内の誰もいない休憩所に行って、今の事を皆に話す。


 相手が色っぽい女性に変ったところを話すと、ユリーが反応した。

「やっぱり!?」


「別に誘惑に負けたわけじゃないから。で、その後やつはまた元の姿に戻って、爪で俺を攻撃してきたんだ」


「……夢魔かしら?」

エマが言った。


「え? 夢魔?」

俺は驚いて聞き返した。


「想像図で描かれている姿と似ているわ。そして伝説によると、人の夢の中に入って悪事を働くの。特に色仕掛けで来ることが多いらしいけど」

そう言ったエマは、少し嫌そうだ。


「つまりイーサン・レインは、そいつにやられているのか?」

「でもこの現代に、そんなことはありえないわよね?」


 俺の話を聞いて考え込んでいたエレナ博士が、なにか気が付いたようだ。

「待って、その特徴はエクエルから教えてもらった異星人一覧の、あのサクバス人みたいだわ。体を乗っ取っているのかも」


「え? あれがサクバス人なのか……」

俺は記憶を呼び覚ます。


 以前、初めてのワープの実験で一万光年ワープしてしまった時に、一番初めに会った異星人だ。

 おそらく幻影だと思うが、あの時は俺たちの記憶から、俺たちが警戒しない様に初めから人間の姿になって現れた。


 その後俺たちは金星の事件の時に、エルフのエクエルからこの銀河系に生息する異星人の特徴やテリトリーなどの資料を貰っていて、エレナ博士はそれに目を通してあったようだ。


「どういうこと? それじゃあサクバス人は、幻影を見せるだけじゃなくて、人の体も乗っ取るということ?」

ユリーが怖そうに聞いてきた。


「確か資料にそんなことが書いてあった気がするわ。スターダストに戻れば資料が見られるから、一旦戻りましょ?」

と、エレナ博士。


 とりあえず俺たちはイーサン・レインをそのままにして、アデル教授の退院手続きをしてから、ラムの家の庭に停めてあるスターダストに戻ることにした。


 ラムの家に向かう途中のエアカーの中でエレナ博士が、

「エマ? あなたもショウのお嫁さんになるなら、知っておいた方がいいわね」

と言って、宇宙でサクバス人やエルフ族のエクエルに会ったときのことを話していた。

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