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レリック・ハンター  作者: 中川あとむ
第十四話 聖剣
54/156

14-2 センテカルド王からの依頼

 今回、この話の中に出てくる「センテカルド」という国の建国物語を、別のローファンタジーの小説として書いてみました。

 興味の有る方は、そちらもご覧ください。

「聖剣グラム」:https://ncode.syosetu.com/n7019eu/


(今回の14-2、3の中で、そのあらすじも出てきますので、必ずしも読む必要はありません)

 次の日の朝、俺たちはミュンヘンの空港に置いてあったスターダストに戻り、センテカルドのブラーノ宇宙空港に向かった。

 センテカルド王国は、地球連邦政府が発足したころに中央ヨーロッパのいくつかの国が集まってできた新しい国だ。

 八世紀ごろに、オイマール家が支配していた地域とほぼ同じらしい。


 空港に着くと、王宮から俺たちのこと知らされていたのだろう、ここでは税関職員などはやって来なかった。

 代りに王宮からの迎えの者がすぐにやってきたが、おそらく俺たちが時間より早く着いても大丈夫なようにずっと待っていたに違いない。

 

 俺たちは迎えに来たリムジンに乗り、王宮へと向かった。

 そのリムジンの前後には警察の車両が護衛していて、まるで国賓のような扱いだ。


 空港を出ると、周りは風光明媚な田園地帯だった。

 高速道に入り、二十分程でそこを通り抜けると、すぐにブラーノの市街地になる。


<ブラーノのイメージ>

挿絵(By みてみん)


 ブラーノの町並みは、ヨーロッパらしいバロックやゴシックなどの建物が並んでいた。

 その町並みの中をしばらく進むと、前方の丘の上に宮殿が見えてくる。


「あの宮殿は、十三世紀ごろに作られた城を改築して宮殿にしたのよ」

と、アデル教授が教えてくれた。


 その丘のふもとに門があり、敷地に入ると緑豊かな庭園になっていて、その中の坂道をリムジンは昇っていく。


 やがて、その宮殿の玄関前に着くと、昨日俺たちの所にやってきたバラーク氏が出迎えた。

「ご足労頂きありがとうございます。それでは早速ですが、こちらへどうぞ」


 俺たちは彼について宮殿に入る。


 もしこれが罠だったとしても、イーサンもいるから、待ち伏せなどはセンサーで事前に察知できるに違いない。

 俺やユリーは念のためにオートシールドを起動していたが、これは銀の宝珠を持っている本人しか守ってくれない。

 そこで俺は、何かあったらすぐにエレナ博士やアデル教授を自分のシールドに入れられるように、心の準備をしていた。


 俺たちはバラーク氏に案内され、豪華な装飾の廊下を通って、そのまま謁見室に入る。

 すると謁見室には、四十代ぐらいの誠実そうな王様がすでに玉座に座って待っていた。

 

 俺たちが部屋に入ると、王様が玉座から降りてきて俺たちを出迎えてくれる。

「ようこそ、いらっしゃった」


 次の瞬間、王様が俺とユリーの前でひざまずいた。


 え!?

 いきなりのことで、俺たちは驚いて顔を見合わせる。


「わざわざお呼び立てして申し訳ない。まずは、アルペルド伯爵のしたことをお詫びしたい」

王様が謝罪してきた。


「ちょ、ちょっと、お立ちください」

俺は、こんな展開は予想していなかったので焦った。


「いえ、特にユリアナ殿には無礼なことしてしまったようで、本当に申し訳ない」


「わ、わかりました、とりあえずお立ちください」

ユリーも焦っている。


 そこにバタンとドアが開く音がして、奥のドアから一人の女性が颯爽さっそうと入ってきた。

 赤い髪で、歳は二十才ぐらい。美人でスタイルもよさそうだ。

 下は黒っぽいレザーのパンツスタイルで、上から赤いレザーの動きやすそうなコートを着ている。

 その勇ましい印象が、映画の中の戦闘的な女性主人公を思い起こさせた。


「父上、何をされているのです? 国王がひざまずくなど」

彼女が、少し強い口調で言ってきた。


 父上ということは、彼女はこの国の姫様なのだろう。


「これはなんとも」

と言ってオイマール国王は立ち上がり、俺たちの方に会釈すると、姫の方に歩いて行った。


 そして彼女に話しかける。

「エマ、わかっておくれ。いかに国王といえども、迷惑を掛けた相手には詫びねばならぬのだ」


 エマ姫は俺たちをにらみつけると、プイっとそっぽを向き、出て行ってしまった。


「みっともない所を見せてしまい、申し訳ない。育て方を間違ったようだ」

と、王様。


 イメージしていたのとは全然違う王様だった。なんとも腰が低く、善良そうだ。

 でもあのお姫様は、センテカルドに対して抱いていたイメージ通りだが。


 王様は俺たちの近くに戻ってくると、小声で俺たちに、

「見ての通りきつい性格なので、一人だけ嫁の貰い手がないのだ。おまけに男性にも興味がないらしい」

と、言ってきた。


「はあ」

俺たちは何て言ったらいいかわからない。

 

 俺たちは顔を見合わせた。


 するとバラーク氏が横から、

「陛下、お客様の前で、あまりぐちをこぼされませんよう」

と、いさめた。


「いかんいかん。そうであった。おはずかしい」



 あとで聞いたところによると、エマ姫は三人いる姫の一番上で、すでに妹たちは他の国の王子様と結婚したらしい。


 そのあと、俺たちは応接間に案内されて、ソファに座って王様の話を聞くことにした。


 王様が説明してくる。

「あのアルペルド伯爵は母親が庶民の出で、肩身が狭い思いをしていたらしいのです。それで彼は功を焦って、火星の方々始め、この地球でも問題を起こしてしまいました。今は謹慎処分にしてありますが、すべての行いが明らかになったら、重い処分をしなければならないと思っておるところです」


「私は大した実害はありませんでしたが、父や伯父の国王がなんといいますか」

ユリーが言った。


「誠に申し訳ない。あなたの父上や、火星国王にも先日お詫びの書簡をお送りしました。今は返事を待っているところです」

「そうですか」

「我が家系は、本来婚姻によって勢力を伸ばしてきました。防衛以外で武力や陰謀に頼ったことはありません」


 すると、アデル教授が俺をちらっと見た。そろそろ、遺物を探すという仕事の話を聞きたいのだろう。


「ところで、何かご依頼があるそうですが?」

俺が聞いてみた。


「実は、地球連邦の発足でわが国も王政になり、そのときに国名も変えました。昔のここの言葉で『センテ』は『聖』、『カルド』は『剣』という意味です。あなたがたは優秀なレリック・ハンターだと耳にしました。そこで、この聖剣を探して頂けないか、というお願いです」


「これはまた! 神オーディンがもたらしたといわれる聖剣ね?」

アデル教授が驚いている。


「そうです。それは単なる伝説かもしれません。でもこれは我が家の悲願なのです」


「なるほど。それに関する文献などは見せていただけますよね?」

俺が聞いた。


「もちろん、最大の便宜を計ります。そして依頼料ですが、前金で五百万ギル、もし発見していただければ、さらに五百万ギルをお支払いします」


「五百万!?」 (注釈 五百万ギルは五億円相当)

俺たちは驚いた。


 見つかれば前金と合わせて一千万ギルになる。

 俺はエレナ博士の方を見ると、エレナ博士は予想通りニコニコしていた。


「前金の五百万は、聖剣が見つからなくても差し上げます」


「それは……」

ちょっといくら何でも多い。俺は遠慮するべきか迷った。


「いえ、これはアルペルド伯爵の迷惑料だと思ってください」


 そういうことか。

 聖剣は自分たちでも探しているだろうし、もしかしたら俺たちが見つけられるとは思っていないかも知れない。

 王様は俺があまり金に興味がないというのをどこからか聞いていて、それで仕事の依頼という形を取ったのだろうか。


 俺は皆の顔を見る。

 皆は、やろうという顔だ。


 やるだけやってみるか。これも仕事だ。

「わかりました。ご期待に添えるといいですが」


「文献の閲覧や移動のエアカー、他にも必要なものは、このバラークに申し付けてください。彼が最大の便宜を計ります」

「わかりました」


 その後俺たちは、それぞれの宿泊する部屋に案内された。

 荷物はもちろん、先に運び込まれている。



 少し休憩した後に昼食会が開かれ、その席で大臣や跡継ぎのアンドレイ王子に紹介された。

 アンドレイ王子はハンサムで、思った通りエレナ博士がちらちら見ている。

 その隣に座ったエマ姫は、俺のことをにらんでいた。


 はあ、まいったな。ずっと俺をにらんでいる。


 昼食は、宮廷料理とともにローストダックやジャガイモでくるんだソーセージの料理など、この地方独特の料理も出された。


「こうやって、地元の料理を食べるだけでも旅行に来たかいがあるわ」

エレナ博士が喜んでいた。



 午後からは、さっそく王宮の図書室に案内してもらう。


「まずは文献を調べないとね。この国特有の伝説や物語、そして地名も洗いましょ」

そう言ったアデル教授は、本領発揮だ。目が生き生きとしている。


 俺たちも文献などを手分けして探した。

 殆どの文献が現代の共通語に翻訳されているので、問題なく読めるのは助かった。


 まず俺が読んだのは、聖剣の由来だ。


 もともとこの国に伝わる「グラム」という聖剣は、ある王の結婚の饗宴に、神オーディンが剣を携えて現れ、リンゴの巨木にそれを突き刺して、これを引き抜くことが出来た者に与えると言った。

 そこにいた者は順に試したが抜くことができず、この国の王の祖先がこれを抜いて貰い受けた。


 ところがその後、ある戦いにオーディンが現れて、槍の一撃でこの剣を折ってしまった。


 それを鍛えなおして、ドラゴンを退治したのが、この国の中興の祖レオニード・オイマールだ。

 彼の死後、遺言により賢者がその聖剣を隠した、と言う事だった。



 アデル教授が読んだのは、レオニード・オイマールが剣を鍛え直すために旅をして、ドラゴンを退治した話だ。

 かいつまんで説明してくれた。


 そのころ、オイマールの家は落ちぶれていて、地方の一豪族として細々と暮らしていた。

 彼は飼っていた鳥が友人という寂しい生活をしていたそうだ。


 そこに、この国にドラゴンが現れ、困った当時の国王は国中から勇者を集めた。

 ところが、ほとんどの勇者は返り討ちに合ってしまう。


 普通の剣では歯が立たないと知ったレオニードは、女神の神託を受けて家に伝わる聖剣を探し、五つの聖なる元素を集めて剣を鍛え直し、ドラゴンを退治することになった。

 そして、その旅の途中で出会った仲間とともにドラゴンを退治した。


 という話だ。


「ドラゴンなんて、本当にいたわけないよな?」

俺が聞いた。


「わからないわよ。恐竜の生き残りかもしれないし」

と、エレナ博士。


 アデル教授が、

「まあ、一説によると、侵攻してきたローマ軍の旗がドラゴンだったので、ローマ軍の侵攻がドラゴンの攻撃というふうに伝えられたという説もあるし、大きなワニだったという説もあるわ」

と、言った。


 ユリーが机に両肘をつき、その手の上に顎を乗せる。

「ふーん?」


 そして次に読んだのは、その後のオイマール家の話だ。

 オイマール家は婚姻によって大きくなり、九世紀ごろにはこの地域一帯を治める大帝国を築いたが、隣の国の画策により徐々に衰退していく。


 二十一世紀には名家として家はかろうじて存続していたが、地球王国連邦の発足により再び王に返り咲いた。

 国の名前もセンテカルド(聖剣)という名前にして、先祖が行ったように婚姻によって次第に拡大してきた、というのがこの国の大雑把な歴史だ。


「だいたい歴史はわかったわ。次は聖剣をどこに隠したかという事ね」

エレナ博士が言った。


「ねえそこのアンドロイド」

アデル教授が、イーサンを呼んだ。


「イーサンです」


 イーサンは自分の名前を呼んでもらいたくてそう言ったようだが、アデル教授はそれを無視する。


「この本を全部記憶しておいてね」

「……はい」


「でもここの本を読んでると、なんか懐かしい気がするわ。なぜかしら」

アデル教授がつぶやいた。



 俺は本を探しながら、アデル教授から十分離れたところで、エレナ博士に聞いてみる。

「アデル教授は、なんでいつまでたっても『イーサン』って呼ばないのかな?」


「これは内緒だけど。学生時代に振られた男性と名前が同じらしいわ。前に酒に酔っぱらて、ポロっと言ってたわ」

エレナ博士が、小声で教えてくれた。


 なんだ。そういうことか。失恋の傷か。



 その後俺たちは、剣の隠し場所に関する文献を探したが、唯一の手がかりはこの国の紋章である「鷲」が関係していることぐらいしかわからなかった。


 さらに今いるこの宮殿は、十三世紀ごろに建てられた城を改築したもので、聖剣が隠されたころは、ここにはオイマール家は住んでいなかったようだ。

 ということは、おそらくこの宮殿内には無いだろう。


「本当に聖剣なんてあるのかな? ただの、おとぎ話なんじゃないか?」

俺はアデル教授に聞いた。


「私はなんとなく、あるような気がするわ。やるだけやってみましょ?」



 次の日も俺たちは図書室に来ていた。でも、エレナ博士だけはどこかに遊びに行ってしまったようだ。


 イーサンはアデル教授の手伝いをしていて、共通語でない文献を翻訳したり、重要そうな部分を記憶していた。

 俺とユリーはアデル教授の横で、その様子を見ている。


「エレナ博士は、どこに行ったんだろう?」

俺がぼそっと言った。


「アンドレイ王子と、うまくやってるみたいよ」

ユリーが答えた。


「えー!?」


「ねえ、ちょっと町を見物に行きましょうよ」

ユリーは、図書館にこもるのは息が詰まるようだ。


「でも、アデル教授が頑張ってるからな」

俺たちだけ遊びに行くのは気が引けた。


「どうぞー、行ってらっしゃい。私はこうやって調べ物をしているときが一番幸せだから、いいのよ」

アデル教授が、本に目を向けたまま俺たちに言ってきた。


「じゃあ、ちょっと行ってくるか」


俺がそう言うと、アデル教授の相手をずっとしていたイーサンが、顔を輝かせて俺たちを見る。


「では私も」


 しかし、アデル教授が、

「あなたはだめよ。手伝ってちょうだい」

と、引き止めた。


「は、はい」

イーサンの表情が再び暗くなる。



 王宮は町の中の高台に建っているので、町は歩いてすぐのところにある。

 俺とユリーは、二人で町へ歩いて行くことにした。


 町並は、ドイツのローテンブルクとはまた違う、ヨーロッパの古い建築が並んでいる。

 ところどころに新しい近代的なビルもあるが、高さの制限があるようで景観を悪くするような高層ビルは無かった。


 俺たちは町を散策して、雰囲気のいいカフェを見つけて休憩することにした。

 この地方独特の菓子と茶を注文する。


「ねえ……ショウ?」

小さいテーブルの反対側に座っていたユリーが、もじもじしながら話しかけてきた。


「なに?」

「えーっとね。来週ラムも火星に来るし、そのー、そろそろ丸い……輪になったものが欲しいかなーって」

「輪になったもの? ドーナッツか? この店にあるかな? えーっと……バームクーヘンみたいなのはあるな」


「もー。いいわよ!」

ユリーが不機嫌になった。


 あれ? そんなにドーナッツが食べたかったんだ。



 俺たちは休憩後、その店を出て再び町を歩いたが、ユリーはまだご機嫌斜めだ。


 俺たちが土産みやげ物屋の前を歩いていると、目の前にサッカーボールが転がってきたので拾い上げる。

 すぐあとに少年が追いかけてきたので、俺はそのボールを渡した。


「ありがとー。……ねえ観光してるの?」

少年がニコニコして聞いてきた。


 ユリーが背を少しかがめて、少年にニコリと微笑みかける。

「そうよ」


「じゃあ、うちの店に寄っていってよ」


 あれ? もしかして客引きか? まあいいか。


 ユリーが少年に手を引かれ、俺はその後に続いて店に入った。


「いらっしゃい」

少年の母親らしき女性が声を掛けてきた。


 店の中には、マグカップやクッキー、置物などたくさんの土産物が並べてある。

 ユリーはそれらを手に取って見てく。


「お客さんたちは、もういろいろと見てきたの?」

その母親が聞いてきた。


 ユリーが土産物の置物を見ながら、

「まだ来たばかりで、これからなの」

と、答えた。


 そうだ、ちょっとここで聞いてみようかな。


 俺はその母親に聞いてみる。

「どこか、八世紀ごろの古い城とかはある? 鳥の紋章がある城跡とか?」


「うーんそうね。このあたりは十三世紀以降の城ばかりかしらね」


 すると先ほどの少年が、

「鳥の彫刻なら見たことがあるよ」

と、言ってきた。


「どこで?」

母親が子供に聞いた。


「渓谷の方だよ」

「あーあれか」


「それはどこ?」

俺は、その母親と少年を交互に見て聞いた。


 母親は観光用の地図を出してきて、その場所を指さす。

「ここね」


「この地図、買うからマークしてくれる?」

俺がそう言うと、母親がペンで丸を書いてくれた。


 俺はその地図を買い、ユリーはユウコやカトリーヌへお土産を買う。


 店を出るとユリーが、

「思わぬところで、情報があったわね」

と、言ってきた。


「ちょっと下見に行くか」

「そうね」


 俺たちはタクシーを拾って、先程の観光地図を見せ、丸印の場所に案内してもらう。


 タクシーの運転手によるとこの辺りは、ブラーノ・カルスト洞窟群といって、千近い鍾乳洞があるそうだ。

 鳥の彫刻があるのは、その内の一つらしいい。

 

 その洞窟の近くの、車で行けるところまで行ってもらい、タクシーの運転手には車で待っていてもらった。

 俺たちは、二人で歩いてその場所に行ってみる。


 洞窟へつづく細い道の手前には案内プレートが立っていて、ここは八十五番洞窟と書いてある。

 俺とユリーは、そこから洞窟までの約ニ百メートルを歩いた。


 タクシーの運転手によると、ここは観光客がめったに来ないところで、来るのは地元の人が、ときどきピクニックに来るぐらいだそうだ。

 なぜなら、他の人気のある洞窟と違って中に入れないらしい。洞窟の入り口が水に浸かっているそうだ。

 昔調査も行われたらしいが、水に潜ってもすぐに行き止まりになっているということだった。


 人があまり来ないためか、洞窟へ向かう途中の道は草が生えていて歩きづらかった。

 それでもなんとか八十五番洞窟の近くまで行って見渡してみると、一番長いところで五十メートル程の縦穴になっている。

 タクシーの運転手が言った通り、その中に水が溜まっていた。


<洞窟入口のイメージ>

挿絵(By みてみん)



 俺たちはそこの縁に立って、鳥の彫刻を探してみる。


「あそこ」

ユリーが反対岸の壁に、鳥の彫刻を見つけた。


 携帯端末のカメラの望遠機能を使って拡大して見ると、あれはこの国の紋章の鷲ではなく、フクロウの様だ。

 しかも反対岸の壁は少し高い垂直の壁になっていて、そこには歩いて行けそうにない。


 とりあえず俺たちは、それを写真に撮って皆の所に帰ることにした。



 俺たちがアデル教授のいる王宮の図書室に戻ると、エレナ博士もそこに戻っていた。

 でも、エレナ博士はちょっと不機嫌そうだ。


「どうしたんだ?」

俺は、エレナ博士に聞いてみた。


「あいつ、私の本当の年齢を言ったら、急に冷たくなりやがった」


 ぷっ。

 俺は思わず吹きだしてしまった。

 エレナ博士はどうやら、あの王子に振られたようだ。


「なによ!?」

エレナ博士が俺をにらんだ。


「まあまあ」


「よく言うじゃない? 人は見た目だって。なのにあいつめ……」

と、エレナ博士。


「え、そうだったかな?」


 人は中身、だったような?


 そこでユリーが、先ほどの話を切り出す。

「ねえ聞いて?」


 ユリーは、皆に先ほどの八十五番洞窟の話をして、撮影した写真を見せた。


 アデル教授が写真をのぞき込む。

「これはかなり怪しいわ」


「でも、この国の紋章の鷲じゃないのよ」

ユリーが言った。


「もともとこの国の紋章はフクロウだったのよ。のちに威厳のある鷲に変えられたの。さっき昔の文献で見つけたわ」


「じゃあここが正解か?」

俺が聞いた。


「でも、水が溜まっていて、タクシーの運転手によると、潜ってもすぐに行き止まりになっているらしいわ」

ユリーが先ほど聞いた話をした。


「何か仕掛けがあるかもしれないわね」

と、エレナ博士。


「よし、じゃあ準備して、明日行ってみようか」

俺が皆を見て言った。


 皆がうなずく。


 俺たちは、旅行中だったので探検用の装備は用意していない。そこでバラーク氏に頼んで、ライトやロープ、携帯食や探検用の服、そして一応潜水具も一式だけ揃えてもらうことにした。

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