スパイ潜伏中
「なんか、隠れるのって楽しいね。」
「遊びじゃないんだぞ。静かにしろ。」
ディルガとディルアが話している。2人とも異国に来たから少し気分が上がっているんだと思う。それは、あの2人だけでなく、クロニクルのほぼみんながそうだろう。
しかし、今思うと、スパイとは無理な話だ。俺たちは世にも珍しい遊撃特務部隊。世界で知らない者はいないと言われている。しかも、戦闘がメインなのだから、隠密行動など、不向きにも程がある。隣の2人が早速そわそわし始めている。
「だぁー。かったりぃなぁー。なんかすることはねぇーのかよ。暇すぎる。」
「スバル少しうるさいっす。でも、確かにつまんないっすよね。なんかないんすか。」
すると、シルヴィアが、
「トランプなら、ありますよ。ババ抜きなんてどうですか?」
「他にすることねぇーから、やろーぜ。暇すぎて逆に死んじまうわ。だれがやんだー?」
「はーい」「はーい」「はーいっす」
ナーバ兄妹とアランが返事をした。
「シンとかはやんないのか?」
「俺は少し考えたいことがあるから。」
「そっか。じゃあ、俺らだけでやるか。」
みんなといる号車を抜け、テラスのある号車に入った。ちょうど、椅子が空いてたから座ると、
「あ、シンじゃん!」
不覚にも前にはティアが座っていた。
「なになに?何であんたもここにいんの?仲間はずれにでもされた?うけるんだけど。」
「うけねーし。ていうか、仲間はずれにもされてねーし。俺は、考えたいことがあるからここに来たの。お前こそどうしてここにいるんだ?」
すると、ティアから少し元気が亡くなったように感じた。
「ちょっとね。昔の仲間のことを思い出してたの。とても懐かしい記憶。今は、あなた達といれることが幸せだよ。でも、やっぱり昔に戻りたいって気持ちがどっかにあるんだ。」
ティアが自分のことを喋るなんて珍しいこともあるんだと、思った。
「俺も、思うよ。昔のメンバーのこと。俺が力を隠さなきゃ助けてあげられたんじゃないかって、すっごく思うよ。だからこそかな、今は、自分の出来ることを精一杯やりたいって思うんだ。」
お互いのことを少し知れた気がした。2人とも昔に何かがあって今がある。少なくともそれだけは理解出来た、理解されたと思う。
「お前ら、なんでそんなしんみりする話してるの?」
笑いをこらえながらの声が聞こえた。カイトだ。
「でも、なんか安心したかな。素が見えなかった2人のことを少し知れたから。俺は2人のこと信じてるよ。過ごした時間は短いけどさ、2人とも凄かった。誰よりも俺たちのことを考えてた。いつも助かってるよ。今更だけどさ、これからもよろしくな。」
「ああ。俺もこのメンバーを信用してる。だから、ティア。お前も俺らのことを信じてくれよな。」
「え。あ、うん。信じてるよ。」
俺はこの時、何故ティアに言ったのか、正直わからなかった。しかし、後にこの一言によって俺たちの未来が変わっていたことを、僕はまだ知らなかった。