逃走
声がした方を見ると、そこにはアグニが立っていた。「情けない顔してんな。シン・アスタルテ。」
そう言って、近づき、手を差し伸べた。シンはその手をとると、立ち上がり少し笑いながら、
「はっ。言っとけ。」
二人の視線の先にはスバルが立っている。ティアとマルトを含めれば、シンたちは四人になるが、相手には狙撃手がいるため、下手に動くことが出来ない。
「やはり、ここは逃げよう。あいつら相手に分が悪い。」
シンがそう言うと、
「了解!」「おっけー!」「うん!」
各々が返事をした。
作戦が決まったが、そこからどうするかが問題だった。目の前の敵を無視して全力で逃げれば、スバルは振り切れるが、カイトとメイジアの二人からは逃れられない。しかし、今ここでスバルと戦っても、ジリ貧になるだけだった。作戦が全く思いつかないシンにアグニが一つ提案した。
「三人の注意を3秒間だけ引き付けてほしい。」
シンは頷いた。(メイジアの気が引けてもカイトが周りを見てたら意味が無い。だったら、あれを使うしか…。3秒だけなら!!!!)
「命じる。我が身に集いて敵を穿て。ファルカス!!」
シンはその身に風の衣をまとった。全員が驚いた。シンの明かされていない能力の一つ、神の力を身に宿す神衣と呼ばれるものだった。
シンは右手を振ると、風の刃が発生し、その行く先にはカイトたちがいた。咄嗟に逃げたが、その先には、アグニがいた。
「スキあり。」
そう言って放った一突きはメイジアの左頬をかすっただけだった。しかし、アグニはさらに盾でメイジアを殴った。突きを交わし体勢を崩していたメイジアは直撃をくらって、倒れ込んだ。カイトがすぐによると、アグニは魔法を詠唱した。
「重力のおり。グラビティ・プリズン!!」
二人はその場から動けなかった。シンはそれを確かめると、
「風の障壁、ウィンド・ウォール!」
風の壁がスバルの前に現れた。シンは神衣を解くと、アグニたちと合流し南門まで走った。
「南門で仲間と合流できる、ドーン帝国の軍はもう引いてるから、俺たちも早く合流しよう。」
アグニが告げると、シンが立ち止まって尋ねた。
「なぁ。俺ってやっぱり、ドーン帝国の人間なのか?」
シンが一番聞きたい事を尋ねた。




