事件
東西南北それぞれに分かれた、クロニクルは各方面でそれぞれクーデターを鎮圧していた。1時間ほどで鎮まったクーデターを城内で見ていた女王らのもとに、一通の手紙が届いた。
「この国にドーン帝国と繋がる、内通者がいる。」
その言葉と共に一つの写真が同封されていた。
クーデターを鎮めた、クロニクル・ナイツをハルバは呼び集めた。
「貴様らの中に、ドーン帝国と内通している者がいるな。白状しろ。今なら、死刑だけは免れられるぞ。」
しかし、誰も名乗り出る者はいなく、ハルバはため息をつきながら、
「ならば、仕方があるまい。貴様のことだ。一ヶ月ほど前、森で訓練をしていた、と、言っていたな。それは、本当か?シン・アスタルテ。」
そう言うと、一同は揃ってシンの方を向いた。
「そうですが、それがどうかしましたか。」
少し、不満げに言うシンにハルバは問い詰めた。
「内通者は君ではないのかな。」
「断じて、違います。」
シンはそう答えた。
ハルバは残念そうに、
「これが何よりの証拠じゃないのかな?このローブはドーン帝国の物だ。それを着た人物と、こんな森の中で話しているなど、不自然じゃないかな。」
シンがすこし、驚いた表情を見せた。
「あれは違います。あれは、俺が…」
シンが言いかけている途中で言葉を切るように、ハルバが、
「君はもう喋らなくて良い。君のことなど誰も信用していないのだから。警護兵、連れて行きなさい。」
シンは警護兵につれて行かれ、地下の牢屋に入れられた。
時を同じくして、女王のもとでも、ある事件が起きていた。
王宮騎士団が、女王陛下に向かって、剣を抜いたのだった。
「女王陛下。クーデターを起こした兵士の中にドーン帝国と繋がる者がいました。その者が言っていました。あなたがこの事件の犯人だと。詳しく話を聞きたいので、拘束させてください。いや、させろ。ティア・グレーツァ。」
すると、ティアが、
「な、何を根拠に言っているのですか。私がクーデターの犯人って…ありえないです。」
ティアは必至になって弁解をしていたが、王宮騎士団は聞き入れず、地下の牢屋に連れていったのだった。
国内で、女王陛が捕まったことはもちろん、民から絶大な支持を得ていたクロニクル・ナイツのリーダーまでもが、捕まったことで、セラータ皇国は混乱していた。
この事件をきっかけに止まって歯車が動き始めたのだった。




