敗北の先
王都フィーネにまで帰還した、セラータ皇国軍は作戦会議を始めていた。
「こちらの軍は半数が滅ぼされました。しかし、向こうの戦力はこちらの10倍以上です。もはや、戦力差は歴然です。勝てるわけありません。」
指揮官の一人がそう言った。
「確かにそうかもしれない。でも、まだ終わったわけじゃない…奴らが攻めてくるのに時間はあまり残っていないかもしれない。だけど、少しでも時間があるなら、やれることはまだある!」
シンがそう言うと、軍の会議の場では、歓声があがった。
「そうだ!まだやれるぞ!」「諦めるには早い!」「俺達はまだ負けてないんだ!」
様々な声があがっていた。
シンは会議を途中でぬけ、クロニクルのメンバーを集めた。
「これから特訓を始める。あまり時間が無い。みんなも知っての通り、ドーンにはレグルスという遊撃部隊がある。これから幾度となく戦うだろう。だからこそ、俺たちに必要なことをいましておくべきなんだ!俺達の個の力を鍛える。誰にも真似出来ない、自分だけの技を作るんだ。そして、それを磨け!これが今俺たちのするべきことだ。」
「了解!!」
その日からクロニクルのメンバーは、様々なところで訓練を行い、力をつけていった。そして、セラータ皇国軍も、都市部だけでなく、村や集落からも兵士を募集し、並の兵士までレベルをあげたのだった。
ある日の夜、シンは1人で、フィーネから少し離れた森に来ていた。
「無に帰せ、セラフィータ!!」
その一言とともに、剣を出し、1振りすると、周りの木がほとんどなぎ倒されていた。
「よし!神衣をせずともここまでこれた!あとはー」
シンが言い終わろうとしたとき、後ろから、3本のナイフが飛んできた。
「何者だ!(いつから居たんだ!?周りの木はさっき切り倒したのに。)」
すると、黒衣のローブを纏った人間が出てきた。黒衣の人物は、出てきたのと同時に、駆け始めた。両手には、いくつかのナイフを持っていた。シンも走り始めると、黒衣の人物はナイフを投げてきた。シンは不意をつかれ、止まってしまった。それを逃さなかった黒衣の人物は、隠し持っていた剣を抜き、シンに突き刺そうとした。
「敵ばかりを見てるから、周りが見えてねーぞ。」
シンがニヤリと笑うと黒衣の人物の足下が光った。すると、突如魔法陣が浮かび上がって、黒衣の人物を拘束した。
「お前を殺す必要は無いからな。答えろ。お前は何者だ。」
シンは黒衣の人物のフードをとると、そこにいたのは銀髪の女だった。シンは動揺して、あたふたしていると、
「私は……あなたの…味方。でも……エル…ちゃんの味方……でもある。」
シンは何を言ってるのか分からなかった。だが、すぐに、
「エルってあの…。おまえ、やっぱりドーン帝国の兵士だったんじゃないか。」
すると、銀髪の娘は首を振って、
「ちがう。私は……ドーンの兵士…じゃない。覚えて…ない?昔……3人で………遊んでた……日…のこと。」
シンは何を言ってるのか分からなかった。




