過去を知るもの
南 ヘキスタ
シンとティアは援軍を待たずして、軍事基地を陥落させていた。ドーン帝国の兵士はなす術もなく、たった2人に蹂躙されていたのだった。
「張合いがないわね。もっと強い相手は出てこないのかしら。」
「やめろよ。本当に出てきそうだろ。」
すると、突然後ろから矢が飛んできた。
シンとティアはとっさに避けると、振り返った。矢を放ったであろう人物が1人、剣を構えている人物が2人居た。
「あれを避けるなんて…クロニクルってそんなに強かったの!?」
「何言ってんの。あんな攻撃だったら誰でも避けるっつーの。バカじゃん?」
二人の会話を止めるように1人が前に出てきた。
「私はレグルス所属。アスハ・ミネバです。あなた達はセラータ皇国軍 遊撃特殊部隊クロニクルの所属で間違いないでしょうか。そうであるならば、あなた達にはここで死んでもらいます。」
すると、横から両腰に剣を携えた人がやって来た。
「私は、レグルスのエル・フェリア。」
「ミオ・カレイドと言います。」
弓をつがえた人も出てきた。シンとティアは不審に思いつつも、
「俺は、クロニクル シン・アスタルテだ。」
「私は、ティア・グレーツァです。」
名前を聞くと、エルが驚いた顔を見せた。
「えっ!嘘でしょ。そ…そんなことってー」
言葉を切るようにアスハが話し始めた。
「私達は、あなた達をとめるために来ています。出来れば、無用な血は流したくないので、お引き取りいただけませんか。」
「それは、残念だな。こっちは、負けるなんて思ってないから、どうぞお構いなく。」
アスハがため息をつくと、
「なら、仕方がありませんね。相手の頭を潰すのならこいつらは先に仕留めておきます。では、戦闘開始です。」
エルが突撃してきた。シンは剣で受け止めるも、力で押し切られ、ティアと引きはがされてしまった。
「あなたの相手は私たちです。」
アスハが言ってきた。
「上等よ。やってやろうじゃないの。」
ティアは槍を構えると、アスハに向かって突進していった。
シンはエルが態勢を整える前に攻撃を仕掛けた。しかし、エルは容易くかわした。シンは切り替えて、無数の斬撃を飛ばした。これも、エルは全て弾き飛ばした。
「よわっ。話になんないんだけど。(私の勘違い?)」
エルはそう言うと、二つの剣で交互に切りつけてきた。シンはその全てを弾くと、
「その言い方は、頭にくるな。」
と言うと、シンは換装を始めた。
「全てを切り裂き、全てを無に変えろ。顕現せよ。神明なる刃。セラフィータ!!」
シンはセラフィータを構えると、今までとは違う空気をかもし出していた。
「あんまりナメてっと、殺すぞ。」
エルは顔をしかめた。エルが考え始めたのと同時にシンが目の前に現れた。
「い、いつのまにっ!」
エルは剣で防御するも、剣を折られてしまう。
「やっぱ、あんたってそういうやつだよね。誰にも容赦しないけど、ほんとは優しいんだよね。」
「お前は俺の何を知っている。」
「あなたが知らないことだよ。」
そういうと、エルは森の中に消えていった。
ティアは弓に警戒しつつもアスハと互角の勝負をしていた。すると、エルが現れた。
「確認取れた。剣も折られちゃったし、一旦ひこ。」
アスハは頷くと、
「槍使いさん。なかなかだったけど、まだまだ甘いわ。」
アスハはそういうと、ミオと一緒に撤退していった。
その5分後、シンはティアと合流した。そこに援軍が到着していた。
「シンさん。これからどうしましょう。他の地区の援護に行きますか?」
「いや、作戦通りで行こう。このままドーン帝国の王都に向かうぞ。」
シンとティアは、クロニクルの移動艦アルカディアに乗った。
「出航せよ!本艦はこれより、王都に侵攻する!!」




