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話の骨と肉、めぐるもの  2

短いですが、恐怖の「脳内補完」について。

 自分もしょっちゅうやってしまうのですが、恐ろしきものに「脳内補完」があります。

 ほんと、気を付けないと私はやってしまいます。


 物語に埋没していって、さながら箱メガネでその世界をすべて見渡せて、登場人物も物語流れも結末も知っており、神のごとくすべてを掌握して書いているとき。

 たとえば

「彼は優しいひとだ」

 とか、書いちゃう。唐突に。

 読んでいるほうからすれば、「え? 何が、どこが??」ってなるはずなのに、作者である自分は彼が優しいことを<知っている>から、平気で「彼は優しいひとだ」って書いてしまう。


 なんでも、言わせたり書いたりすればそれで通用すると思いこんで勝手に脳内で補完してしまう。

 だって、わたしは「この世界」をすべて知り尽くしているんだから、あなた(読者)もそのあたり、分かっているでしょ? ←知るかーー!!


 そんな間違いをしでかしてませんか。私だけですか。


 いみじくも、漫画家のよしながふみ先生が、作品のなかで漫画家志望の高校生に、同級生のマンガの欠点を次のように指摘しています。


「例えばお話のどこかで このヒロインが読者の予測できないような 突拍子も無い事を 言ったりやったりしたとするでしょう?」

「それで初めて読者は「この人は何を考えているか分からない人だな」って 思うものじゃない?」

「そういう登場人物の 性格が分かるような エピソードがこのお話には ひとつも入ってない!」


 はい、まさしくそれ。

 なんの前フリや伏線なしに、いきなり「優しい」とか言われたって伝わりませんがな。

 その優しさを具体的なエピソードで出さないと。


 台詞や地の文で唐突に語られても、ぐっとくるはずがないです。せっかくのアイデアが、生かされないっす。

 大切な真実の告白も、それを聞いて「ああ、やっぱり」と読者がどこかで感じていたことを言われたときに腑に落ちるというものでしょう。そうでないと「なんで??」となり、物語から読者は放り出されます。


 だから短編は、そのへんの伏線の張り方を緻密にしないと回収できなかったり、まったくの唐突さに陥ったりする危険がとても高いと思います。


 どんなエピソード、情報を取捨選択して、話を組み上げていくのか。ある意味、長編よりも慎重に。


 思いついたときの熱を持っていても構わないけれど、そのまま書いたら、ハンバーグを強火で一気に焼いてしまうようなもので、見た目はおいしそうなのに中に火が通っていない、なんて惨事を招きますよ。


 熱い気持ちはそのままに、もう一方で手綱を引き締め暴走しないように馬を操っていかないと。



文中の、よしながふみ先生の作品は『フラワーオブライフ』です。

漫画家を目指す高校生コンビとオタク少年を中心に、女子の友情や生徒×先生の恋愛(?)とか盛りだくさん。

大好きな作品です。

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