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どうやって作ってる?  2

「書いている自分」が満足して楽しくても、「読んでいる自分」がイライラしていることなど。

 さて、どうやって書きましょうか。

 と、いうか「種」はどこからやってくるのでしょうか。吉田兼好ではないけれど、「空よりや降りけん。土よりや湧きけん」。

 うーん、伝わらないので言語化しましょう。

 新聞を読んだりラジオを聞くのが好きです。そんなのが頭のなかで適当に消去されたり蓄積されたりするんでしょう。


 お題という縛りがあると、アイデアがわいたり、書きたいものに思い当たったりします。


 そう、ラジオ番組「かんさいほっとタイム」の川柳の講師・大西泰世(おおにしやすよ)先生も「お題があるほうが作りやすい」とおっしゃってらした!!


 今夏は今まで書いたことのないものに挑戦しました。なろうの「夏のホラー」企画。

 提出したのは、拙作『かわたれ』(5226字)。


 企画には「学校が舞台」という決まりごとがありました。それで、まずは母校の校舎をモデルとしました。高校生を主役にと思いましたが、なんとなくピンと来ず。それに学生がメインの作品はたくさん書かれるだろうから、と外しました。ついでに、夏以外の季節を設定。

 それで学生ではなくて、先生側にしてみたら? と思いました。

 舞台は年度末の霙の降る寒い日、というのは早々に決定(情景が浮かんだので)。

 国語教師・筧の原型は結構すぐできました。ヒロインの吉本(初期段階は吉田)は定年間際のおばさん事務員でした。

 さて、没原稿があります(残ってた!! ぎゃーっっ)。

 以下『かわたれ』のパイロット版。


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 傘に湿った雪が積もる。

 目の前の焼却炉から白い煙が立ち上り、空から落ちてくる牡丹雪と混ざり合う。

 もう間もなく四月だというのに、これが最後のなごり雪だろうか。

 筧は空を見上げていた。

 大粒の雪は地面にふれると、そのほとんどがとけて消えた。けれど、校舎裏の雑木林や裏口から焼却炉までの煉瓦を敷いた道へは数センチだが積もり始めている。

 筧の背後で、かすかに半分とけた雪を踏みしめる音がした。

 小さな音だ。

 ぴたん、ぴたん。

 傘が雪で重くなる。積もった雪がばさりと落ちるとき、まるで何かにあたるように、虚空で左右に跳ね……。

「筧先生」

 残像を見つめていた筧が振り返ると、学校事務の吉田が肩と首に傘の柄を挟み、段ボールを両手で抱えて立っていた。

「そんなとこに突っ立って、風邪引きますよ」

 タイトなスカートに地味なブレザー。年相応とはいえよけいに老けて見える。定年まではまだ五年以上あったはずだ。

 筧は歩み寄ると段ボールを引き受けた。

「さっき私が入れたばかりですから、今は燃やせませんよ」

「ええ、そこに置いててもらえたら校務員さんがあとで片してくれるからかまわないわ」

 筧は焼却炉の隣の屋根がかかった場所へ箱を置いた。

「入りましょう、背広が濡れてますよ」

 言われて気づいた。いつのまにか、焦げ茶の背広の裾が濡れていた。それを確かめて体をひねると、反対側の裾がきゅっと引っ張られる感じがした。

「筧先生?」

「はい、今行きます」

 六時間目終了のチャイムが春休みの校舎に響いた。

 裏口から廊下に入ると、すぐに職員室だ。ふたりは連れ立って部屋に入った。ファンヒーターで暖められた空気が筧の冷えきった頬をなでて思わず息を吐いた。

「異動の知らせも出されたし、みんなてんやわんやだねぇ」

 言葉とは裏腹にストーブの前で数学の森山は、のんびりとたばこをふかす。

「あ、お湯はもうありませんよ、土田先生」

 給湯室へマグカップを持って入ろうとした大柄な英語教師に田中は声をかけた。

「筧先生の机は片づいたようだね」

「ええ、もう空っぽです」

 筧は近くの椅子を引き寄せて腰かけた。

「失礼しまーす」

 春休み中の部活もそろそろ終わりか、生徒たちが部室の鍵を返しに来る。そういえばついさっきまで聞こえていた体育館でボールをつく音も聞こえなくなっている。吹奏楽部のまばらな音も静まり、狭い校庭で窮屈そうに活動している運動部も後かたづけのようだ。


 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 と、ここまで書いて「ダメだ」と思いました。

 理由としては以下の三点。

 1.何が怖いんだか分からない。

 2.やたらと人が出てダラダラしてしまっている。

 3.話が進まない。

 実はこの先をもう少し書いています。伏線として雪の上を歩いて来る足音と筧のスーツを引っ張る「何か」という核となるモノは出しましたが及第には届かず(読んでいる自分がイライラしているので没)。


「短編のキモって何だろう」

 と、いうか、これはホラーだから「何が怖いのか」を見据えないとただ漫然と書いて焦点のあわないボケボケなものになるという、イヤな確信があります。


 さて、ここでプロットらしきメモ帳を見直しました。

 メモ帳に書かれていたワードとセンテンスは、次のようなもの。


『罪と海(たぶんこれが初期のタイトル) 筧38歳 白いもや 三月末のこと 異動ではなく休職 ものの片付け はでなギャル系の子 「知っています? 最近校舎の中に子どもがいるってうわさ」そんなわけないよ』


 初期の骨子は「筧は初任地の沿岸部の高校で生徒と恋仲になり妊娠させてしまったがそれを認めず、妊娠した女生徒は事故で子どもごと亡くなる。しかし水子の霊は筧に憑き、余命少ない筧も後を追う準備をする」という内容でした。


 どこが、怖い? むしろホノボノ(自分比)だし、とにかくホラーではない。

 破棄して再考。


「この人は、もしかしたら妻子を殺したんじゃないか」という怖さのみに絞るため、メモを書き足しました。


『保険金はかけていない 二つの視点(ふせておくカード) どうして子どもをほしがるのか じゃまだからすてた 殺したのか殺してないのか こどもの足音 すべてをはねのける男 気にしない 心をもたない 一人称か三人称(わざわざ書くなよ) 悪魔のような男』


 両者を教師にしなかったのは、事務員のほうが人事について色々知っているかなーというのと、保険関係の手続きもするだろう(話の展開上必要)から、それと「教師とはちょっと段差がある」感?


 そして、いらないシーンは飛ばして教室をまわるところから書きだしました。


 結論(あたりまえだが)


 短編は必要なものだけ、そろえましょう。

 余計なものは、捨てましょう。

 出したら使おう。小物やセリフ。


 とにかく、それがポイントかと。


 要らぬ設定は、「要らぬ」のです。





「かわたれ」の水子の霊を座敷童に変換できたのは、ツイッターの某フォロワーさんとのやり取りからでした(*´▽`*) 蜜蜂さま、感謝ですm(__)m


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