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話の骨と肉、めぐるもの  3

参考にはならない話です。

会話って難しい、の巻(-_-;)

 かつてBLの新人賞に応募して、戻ってきた講評に

「地の文が多すぎる。台詞をもっと入れたほうがよい」と書かれて以来、台詞トラウマです。


 台詞ねぇーー。台詞のラリーって何回くらいがいいのかさっぱり分からんです。先日読んだ某プロの方の作品は登場人物二人による見開き1ページ台詞の応酬でした。

 そんなに長く続けてもいいのですね(力量次第か)。


 話をテンポよく転がしていく、台詞。地の文はすっ飛ばしても、読者は会話は読むものだから必要なことや重要なことは会話でやるべし、と私の師(栗本先生の本)は書かれていたので、SFのしちめんどくさい設定はなるべく会話に織り込むようにしております。


 しかし!! でも、それでも、なんとなく説明くさーいものになりがち。結局それを話すのにふさわしい場面を用意しないと、ただただわざとらしくしか展開せず、書いていて気落ちしてきます。

 またやっちまってるよ、と。


 ふう。


 そんなわけでいつも台詞と会話のタイミングにアワアワしております。

 台詞を効果的に使った作品を読むと、嫉妬で「きーっっ」となります。

 そして、そういうのが書きたくて書くと、たいてい没原稿になり果てます。わたしの場合、台詞だけでもっていこうとすると、ただただ会話が長くなり物語が進展しないという落とし穴にはまりこむのです。


 以下は、『瑠璃の杯』の『ゆうぐれの国』の没原稿です。


 ☆ ☆ ☆

 学籍番号とあだ名との組み合わせで、パソコンのパスワードは簡単に解けた。

「もうちょっとヒネれよ、田上(たがみ)

 そうおれがぼやくと、岸田がまあまあと隣で言った。

「しかしだな、浅野。友人とはいえ他人のパソコンのデータや履歴を覗くのはあまりいい気はいないな」

 一緒にディスプレイを見ながら岸田が言った。

「タガミの父ちゃんから頼まれたんだ。ここの鍵だって開けてくれた。なんとか手がかりが欲しいんだよ」

「ご両親は?」

「警察。まあ家出人の届けに、な。あと、身元不明の」

 と言いかけておれは止めた。それを口にするにはあまりに不吉だし不謹慎だ。

「一週間か」

「ああ、先週の木曜日から姿をみない。バイト先へも出勤してない。岸田のラインにも既読通知きてないんだろ」

「うん、まあな」

 大学の友人、タガミが不意に姿を消して一週間がすぎた。まだ夏休みだし、テツオタのタガミのことだ。どこかにふらりと旅に出たのかもと思っていたけれど、必ず行くと言っていた実家の法事にも顔を出さなかったらしい。それで不審に思った両親からおれに連絡がきた。何か知らないかと。

 夏休み中だ。ゼミで大学に残っていたとはいえ、タガミとはほとんど会うこともなかった。それでパソコンの履歴から何か手がかりが見つからないかと、タガミの父親に頼まれた。一人だとなんだから、岸田も呼んだ。

「メールには、これといったものはないな」

 受信箱には大学や大手通販サイトからのバーゲンのお知らせ。そしてやたらとツイッターからの通知が目を引く。どんだけツイッターにはまってたんだ。

「なあ、こいつの関係者さ」

「んー、じかきだな」

 字書き、小説を趣味で書いている連中をさす言葉らしい。

「タガミ、たしかにいつも本は読んでたけど」

「書くほうもしてたんじゃね?」

 岸田はおれからマウスをひょいと取り上げると、ネットのお気に入りホルダからツイッターのサイトへ跳んだ。

 そこにはガラケーしか持ち合わせないおれには未知の世界が広がっていた。

「岸田、おまえやってんの?」

「高校のころな。いまはやってねぇや。めんどうだから。連絡ならラインで済むしな」

 ラインさえやってないおれは、いつもミンナからいい加減にスマホにしろと言われるが無視している。

「なんだか見づらい」

「慣れればだけど、たしかになあ」

 岸田は思いだし思いだし操作しているようで、あちこちクリックした。

「なに、オオガミ・リョウって」

「タガミのハンドルネームだろ。つーか、ペンネームらしい」

 ほら、と岸田はマウスのポイントを動かした。アイコンの写真の下にプロフが載ってる。

「ラノベラリストさまにて、オリジナル小説をアップしています」

「は? まじ、小説書いてたのかよ」

「そんなに驚くなよ。おまえだって、昔はイラストとか投稿してたくせに」

 高校時代からのつき合いのある岸田は、おれの黒歴史を知っているやっかいな存在だ。

「でもさ、よくそんな時間あったよな。授業とバイトだろ、あと乗り鉄だし」

「移動時間とか電車待ってる時間使ってたんじゃねえのかなあ。あいついつもスマホいじってたし」

「そういうことに使うのか」

「ガラケーのメールで書いてる奴がいたぞ、高校の時の文芸部のやつに」

 アニ研部所属はさすがめざとい。

「んー、とな。タガミの小説のとこ一応みとくか」

 小説のタイトルをクリックすると、すぐにタイトルと前書きというかあらすじの部分が現れた。

「どんな話書いてたんだ」

「ここんとこ主流の異世界転生ものだな」

 なに、それ。

「こっちで事故死とか不慮の死をとげた主人公が別の世界に生まれ変わって、前世や神から授けられた能力を使ってあれこれするって内容だ」

「それはおもしろいのか」

 まったく本を読まないおれには面白さがいまひとつピンとこない。

「タガミのは、異世界に転生した主人公がその世界に鉄道を開発して蒸気機関車を走らせようとする話らしいな」

「ますますおもしろいかどうか分からん」

 岸田も、まあなと語尾を濁した。

「でもそこそこ、評価点数ついてるし、それなりに読者はいたみたいだよ」

「プロ目指してたとか」

「さあな。なんとも言えない。ほんとに趣味で書いてただけかも知れないしな」

 ☆ ☆ ☆


 会話を増やしたとたん、このざまです。

 進まない、進まない。結局、構成ごと変えて書きました。

 完成版の『ゆうぐれの国』は形がまったく異なります。没原稿の内容は冒頭と結末の数行でことたりたということでした。


 とかく会話は難しい。


 以上。





用意していた主人公のセリフを、別のキャラに言わせると意外にスムーズに話が展開したりすることがあるので、喋らせる人をあれこれと入れ替えて考えます。

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