RPG風世界の学者の話
あらすじって何とかしたほうがいいのでしょうか?(´・ω・`)
「――神は、神は偉大なり!!」
七つの海を制覇した海の大賢人、ガウヴァンは自殺する直前そう叫んだ。
大聖堂の屋根上で叫ぶ変わり果てた大賢人の様子を人々は唖然として見上げていた。
狂人の如き様相を呈する大賢人にかつて美男子として名を馳せた名残は見当たらなかった。
その目は血走り、眼球は忙しなくぎょろぎょろとあちこちを睨みつけていた。まるで虚空に何かを引き裂かんばかりにやせ細った枯れ木のような腕が振り回されていた。
衛兵たちが変わり果てた英雄を救おうと大聖堂の階段を登りはじめたその直後、大賢人の足はもはや大聖堂の屋根を踏みしめていなかった。
悲鳴があちこちで上がり、騒ぎが広がっていく中、大聖堂正門の前に倒れ伏した海の大賢人と呼ばれていた者の屍体はもう何も語ることはなかった。
海の大賢人、ガルヴァンは幼い頃から勉学と魔術に関して非凡の才を示した。彼は僅か10歳の時にダルマ学院を卒業した。この当時、この栄誉ある学院を卒業するのに秀才が必要とする年数が10年であった。齢30にもなろうかという他の卒業生を差し置いて、ガルヴァンは最優秀の成績を残していた。彼によりダルマ学院の卒業者の最年少記録は半分に書き換えられた。
学院を卒業すると、彼はアルファレッド大図書館で司書としての仕事をしながら思索にふけったという。思索に耽る時、彼は一人でいることを好んだ。
一方で大図書館には度々数々の賢人たちが訪れていた。若き大賢者は彼らと度々議論を重ねることも好んだ。
彼は言葉の成り立ちから大砲の操作技術まで幅広い分野に興味を示したが、中でも世界の真理に非常に強い関心を持っていた。
彼はアリアリテレスなどの哲学の影響を強く受けていた。
世界には絶対の理が存在し、万物はそれに従って動いている、その様に考えていた大賢人はひたすらにその理を知ろうとしていた。
大賢人はこの図書館での仕事を気に入っていたようであり、もし何事もなければ彼は一介の司書としてその生を終えたかもしれない。
しかし、当時の世界は天に愛された大賢人が只人で終わることを許さなかった。
ある日、大賢人の元にポリャアガル国王の使者が訪れた。使者は大賢人に新海路開拓に従事する様に、と書かれた国王の命令書を渡した。
この当時、王国は交易のための新たな海路を外海に求めていたが、海路開拓は並々ならぬ難事であった。
強靭なる海の魔物に対処出来るだけの戦闘能力と測量観測を通して海図を描ける人間が必要だったからである。
外海は内海とは比べ物にならないほど凶暴な魔物が跋扈しており、これを打ち取れる人間は極々僅かしかいなかった。その一人が幼い頃より圧倒的な魔法の才を示してきた当時15歳のガルヴァンだったのである。
ガルヴァンは王国の期待に見事に答えた。3年の歳月を費やして彼はポリャアガル王国とイーンドヴォ王国を結ぶ交易路を確立したのである。
同時に、彼は魔物の生息域を調べあげ、この危険な海域の海図をも制作してみせた。この海図はその重要性をよく理解していたポリャアガル王国によって極秘扱いを受け、王国の交易独占を可能にした。
この仕事を終えたガルヴァンは海への強烈な関心を抱くようになる。やがて、20歳を迎えると、彼は友人から借金をして船を買うと大海原へと旅立っていったのである。
それから、20年余りをかけて彼はあらゆる海を旅した。その旅の間に書き記した彼の日記と海図とは共にアルファレッド王国に莫大な富をもたらした。
海魔との戦闘による負傷でこれ以上の航海が困難になった彼が再びアルファレッドの地に戻った時、人々は彼を海の大賢人と呼ぶようになっていた。
人々は偉大な大賢人に逢おうと至るところから集まった。始めは訪ねてきた人々全てと面会していた大賢人であるが、ある日を境に彼は誰とも会おうとはしなくなった。
大賢人に親しい人々は彼が新たな思索に耽っているものと思い、大賢人に一目でも逢いたいと言って訪れてくる人々に引取りを願った。
そして、およそ一年後の夏の日に、大賢人は突然身を投げて自殺した。
人々は大いに嘆き、悲しんだ。そして大賢人がどうして自殺したのかを知りたがった。
大賢人の住まいには彼が書き残したメモや記録が数多く残っていた。彼に親しい人々はこれらを読み解いて、大賢人が何をしていたのかを知ろうと試みた。
やがて、人々は大賢人が彼の航海記録を下に世界地図を作成しようとしていた事を突き止めた。
なんと素晴らしく、そして大賢人らしい試みかと人々は思った。
この時代まで世界がどの様になっているかは何百年もの間議論が交わされてきた。
かつて、聖堂教会は世界が平たい円盤であると主張してきた。これに対してアリアリテレスを信望する人々は世界が球体であると主張した。
だが、大賢人の航海の記録により、人々はこの世界では西へひたすら進むと、やがて同じ場所に戻ってくるということを知っていた。
そして、この決定的な証拠により聖堂教会も終には自説を修正することを余儀なくされたのである。
かくして、世界は球であるという考えが次第に人々に受け容れられるようになっていた。
ならばこそ、実際に世界がどうなっているのかを示すということは素晴らしいことであると、故大賢人の友人たちは確信した。
そこで、彼らは亡き大賢人の意志をついで世界地図を完成させようと試みた。
大賢人の残した資料は膨大な数に上り、10年に一人の秀才と呼ばれたチキーラや長老の賢人テリヤを持ってしても作業はなかなか進まなかった。
それでも彼らは頑として諦めることなく世界地図の完成を目指した。
しかし、ある日、奇妙なことが起きた。世界地図作成を試みる集団の事実上のまとめ役であるチキーラが何時まで経っても作業場に現れようとしなかったのだ。
時間に几帳面で人一倍責任感の強かった彼が来ないことに驚いた他のメンバーは彼の住まいを訪れた。
そこで、彼らは天井の梁に結ばれたロープによってぶら下がるチキーラの姿を見出した。
『悪魔の仕業に違いない』
部屋の机の上に置いてあった一枚の紙にはチキーラの字でそう書かれていた。
世界地図作成を目指すメンバーの間には暗雲が立ち込めていた。
世界地図作製を試みた人間2人が自殺したのである。しかも、その2人はメンバーの中で最も優秀な2人であった。
「これ以上作業を続けるべきか」
彼らは自らにそう問わずにはいられなかった。
2人も死者を出したこの試みから人々は次から次へと抜けていった。
唯一賢人テリヤのみがこの試みを続けようとした。
彼は10年以上の歳月を費やし、とうとうこの偉大な試みを完成させた。
本書は賢人テリヤの遺言に基づき世界の真実を、驚くべき、ある人々にとっては受け入れがたいその姿を明らかにするものである。
逝ってしまったわ。円環の理(世界地図)に導かれて……
RPGの世界がドーナッツだということを初めて知った時の衝撃
ごめんなさい、嘘です。これが言いたかっただけです。