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生まれ変わったら『悪役令嬢』でした。  作者: 黒い猫
第五章 不思議な少年
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第1話


 王宮でのお茶会を終えた後――。


「……」

「お嬢様?」

「え、あ」

「大丈夫ですか?」


 突然声をかけられ、私は思わず持っていた本を落としそうになってしまった。


「おっと」

「ごっ、ごめんなさい!」


 そんなと当然だったにも関わらず、ディーンはさすがの反応で本を取り、私に渡す。


「どっ、どうかしたの? 突然」

「いえ、あのお茶会以降ボーッとされる事が増えたと思いまして」


 心配そうな顔で私を見るディーンに対し、私は「そう?」と答える。


 ――ボーッとしているつもりはないのだけど。


 確かに、考え事はしていたという自覚はあった。だけど、ディーンに言われる程ボーッとしているつもりはなかった。


「あの」

「ん?」

「お茶会で何かありましたか?」

「……」


 ディーンの言う「お茶会」というのは、この間父と参加した王宮主催のお茶会の事だろうという事はすぐに分かった。


「何かあったか……って言われると、特に何もなかったわ」


 おそらくディーンが心配している様な「いじめられたり、いじめたり」なんて事はなかった。


「そうですか」


 ――最初にお茶会を開いて以降の社交の場だったからかなり緊張はしていたけれど。


 その時のいざこざは完全にカナリアの自業自得なのだが、今は私がカナリアの為、以前の失敗は自分で取り戻さなくてはいけない。


 ――そんな事もあって周囲には気を張っていたけれど。


「まぁ、そんな事よりも……」

「はい?」

「王宮のお菓子を堪能していたわ」

「……はい?」


 私は早々にゲーテ王子の挨拶を終えた後、貴族のお嬢様方そっちのけでスイーツを食べまくっていた。


 ――だってねぇ。


 思い返してみても、スイーツに舌鼓を打っている私の耳に時折貴族のお嬢様方の話し声が聞こえてきていたが、そのほとんどが噂話。

 いわゆる「ゴシップ」ばかりが聞こえ、チラチラと周りの人たちを見てはコソコソと話している……そんな事ばかりしていたのだ。


 ――あそこまであからさまな視線は初めてだったわ。


「まぁ、お菓子は美味しかったから良いのよ。そんな事よりも、貴族の令嬢ってみんなゴシップ好きなの?」


 そんな溜息と共に零すと、ディーンは「ははは」と同意する様に苦笑いを見せる。


「ほとんどの貴族の方は……そうかも知れませんね」

「ふーん」


 ――ディーンがそう言うって事は、そうなのかも知れないわね。


「その様子を見ると、お嬢様はあまりお好みではなかった様で」

「うーん。あの状況で好みも何もないと思うけどね」


 基本的に会話をしていたのは子供ではなく、付き添いで来ていた親たちだったのだが、ああいった様子を見ていると、子供たちも将来的にああなってしまうのかなぁと思ってしまった。


 ――なんか……それはいやだな。


「それで、お嬢様は王宮のスイーツを堪能されていたのですよね?」

「……ええ」


 私がスイーツに目がない事をディーンは知っている。


「では、そのスイーツを食べている。もしくは選んでいる時に何かあった……という事ですか」

「……」


 ディーンの探る様な視線を感じつつ、私はティーカップを手に取る。


 ――この言い方。つまり、ちゃんと納得出来る説明をしない限り引くつもりはないって事なのでしょうね。


 しかし、このディーンの言葉は紛れもなく私を心配しているからに他ならないだろう。それは分かるのだが。


「ただ。一人の少年と……ちょっと知り合いになっただけよ」


 小さくそう呟く様に言うと、それを聞いてすぐにディーンは「そうですか……」と何気なく返したのだが。


「え!」


 少しだけ間を置いてすぐに驚いた様子で私の方を見た。


「なっ、何」

「いっ、いえ。そっ、その『少年』というのは……その」

「ああ、殿下じゃないわよ?」


 そう答えると、ディーンはどことなくホッとした様子で「そうですか」と答える。


 ――ああ、ディーンには言ってあったから。


 多分、ディーンは私と王子が何かしらの接点を持ったのではないか……と思ったのだろう。でも、私は最初からそんなつもりはない。


 ――そんな事をすれば、自分から破滅に向かっている様なモノだしね。


「しかし、それではその『少年』と言うのは……?」

「……」


 不思議そうに首をかしげながら言うディーンに対し、私は「まぁ、そう聞くでしょうね」と思いながらティーカップを置いた。


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