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薬草とエルフ  作者: 珊瑚
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1 ハーフエルフと朝

 物心ついた時には魔物がうろつく危険な森に独りぼっちだった。裸足に薄着、慣れぬ深い森、危険種指定の魔物。今生きているのが奇跡といえる状況だ。覚えていないが口減らしか、種族的なものかで捨てられたのだろうと先生は言った。


 先生に2歳の時に拾われてから8年がたった。先生は薬草、いわゆるハーブというやつの研究、栽培をしている。ハーブは奥が深い。東方の国では漢方ともいわれている。先生はとてもきれいな女性で、もっと若いころは世界中を旅して薬になる植物を採集、研究、薬として生成していた。


 しかし300年ほど旅をしていたが今は縁のあったヴィルンド王国の危険種指定地域に指定されているガールミアの森の管理人をしている。ガールミアの森を中心に6つの国が存在しているのだが、今はいいだろう。


 とにかく僕、ハーフエルフのロドルフはハーブの先生、ゾエの息子兼弟子としてガールミアの森と共に育った。これからの物語は僕の人生譚だ。


__________…



 長命種エルフであるゾエの朝は早い。太陽が顔を出し始める夜明けとともに起きる。昔からそうだった。布団から出ると庭にある井戸の冷たい水で顔を洗う。美しい金髪を無造作にひとくくりにし部屋へ戻り白の襟シャツ、新緑のベスト、同色のミディ・スカートに着替える。足元は白のニーハイソックスにこげ茶色の編み上げブーツ。胸にベージュベースに小花の刺繍がしてあるリボンを結ぶ。着替えたらまた外に出て井戸の水をくみ上げ如雨露に移し家の周辺に植えてあるハーブたちに降らせる。朝食用の季節の果実、今は5月頃なのでイチゴをいくつか収穫したら家に戻りかわいい弟子、ロドルフと自分の朝食を準備する。


 今朝は近所の村のパン屋で買った丸パンをトーストし、鍋に一口大の蒸したじゃがいも、にんじんをミートソースいれ軽く煮る。そこへ整腸作用のあるパセリを香りづけ、見た目をよくするため入れる。パンは冷まして籠に入れてテーブルの上へ。するといい匂いにつられてロドルフが起きてくる。朝食はゾエ、昼食はロドルフ、夕食は1日交替で交互に当番制となっている。


「せんせい…おはようございます…。いいにおい…。」


 ゾエと違いロドルフは朝に弱い。目をこすりながらぼんやりとしたまだ眠そうな声で挨拶をする。ゾエは軽く笑った。ロドルフはくせ毛だ。そのため毎朝髪の毛はあっちこっちに寝ぐせで爆発している。今日も面白い髪形になっている。


「おはよう。ロドルフ。髪の毛が今日も大変なことになっている。さあ、もう朝食ができるぞ。顔を洗って髪を直して着替えておいで。」


 その言葉に眠い目をこすりながらもごもごと返事をして井戸へ行った。少しして戻ってきたロドルフの顔は目覚めており、寝ぐせもましになった。「ふわあ…」と大あくびをしたところでゾエが器にミートソーススープをよそっているのに気が付くと慌てて自室に戻り着替える。


 白の襟シャツ、ゾエと同じ新緑のベスト、同色のハーフズボン、ひざ下丈の白いソックス、こげ茶色の編み上げショートブーツを身に着けたらダイニングへ戻る。


「ロドルフ。目は覚めたね。じゃあ食べようか。」


「はい。先生。目、覚めたよ。このミートソーススープ、昨日の昼の残り?」


「そうだよ。勝手に使って悪かったね。」


「いえ、大丈夫です。すぐに作れるし。」


「そうかい、ならよかったよ。では、今日の恵みに感謝を。」


「恵みに感謝を。」 


 ゾエは特定の宗教に入っているわけではない。あえて言うなら自然すべてが信仰対象になる。自分も自然の一部であり自然の恵みに生かされていると考えているため、食事の前には感謝をする。ロドルフも異論はなかったしゾエが言っていたので自然と真似して言うようになった。


 酸味の強いトマトが甘いにんじん、少し溶けたじゃがいものおかげでマイルドになっている。パンをちぎるとふわりとした生地が出てくる。一口大にしたそれをスープに浸けて食べるととてもおいしい。ふわりと香るパセリもいいアクセントだ。


 育ち盛りのロドルフは朝から丸パン3個とスープ2杯をぺろりと平らげる。毎度のことながら言い食べっぷりに微笑みゾエはハーブティーを淹れた。


「さあ、ロドルフ。これは何のハーブティーかわかるかい。」


 カップを渡され一口飲んで答えた。すっきりした香りで嗅ぎなれている。庭でも育てていて何度も手入れしたことがある。


「ローズマリー、ペパーミント、レモングラスです。」


「正解。ちなみにローズマリーは摘みたて、他は乾燥のだ。それじゃあ、おやつの時間にその3つのハーブの効能を調べてまとめておいで。今日はいちごの収穫とジャム作りだ。できる量次第ではいくつか村にも卸しに行こうかな。」


「はあい。じゃあ、お皿洗いますね。」


「うん。頼むよ。ありがとう。」


 慣れたもので使われているハーブを当てたロドルフは好きなジャム作りをすることもあって機嫌がよくなっているようだ。3つのハーブは前にも調べたことがありノートにもまとめてあるが、調べる本によっては違うことが書いてある場合もある。それらを探して書き加えるのも楽しいがそれだけでなくハーブを扱う上では量や質、妊婦、特定の病気の人などには毒となりうる可能性もある。何度も繰り返し調べることで知識を定着させ間違いを起こさないようにするのが目的である。


 ロドルフは流し台で食器を洗うと大きめの籠と鋏を持って広い庭へ出る。


 今日は春らしい快晴だ。




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