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その一 自由帳のカエル

「エーミッカちゃん、遊ぼ!」


 クラスの友だちのマミちゃんが、休み時間にエミカの机にやって来た。


「いいよー。なにして遊ぶ?」


 マミちゃんとは幼稚園の時から一緒で、同じ小学校の同じクラスだ。学校でも、遠足でも、帰るときも、いつも一緒。そのくらい仲良しだ。


「連想ゲームしよ。それも、普通のじゃなくて、絵を描いてやるの」

「いいよ!」


 今日の給食は、揚げパンにフルーツポンチが出た。それでみんなは、いつも以上に元気にみえた。ツトム君もリカちゃんも、ユウタ君もサキちゃんも、キラキラしている。校庭で遊ぶ子どもたちも、はしゃいでいるようにみえた。マミちゃんもそうだ。


「じゃあ、わたしからね」

「うん」


 そう言うと、マミちゃんは新品の自由帳を開いた。なにも書いていない、まっさらなページが二人の前に現れた。新しい紙のいい匂いがした。マミちゃんは、紙に目がくっつきそうなくらい近づけて、集中して描き始めた。マミちゃん特有の絵の描き方だ。


「できた! これな~んだ?」


 ミッキーマウスに似た耳の部分には大きな目玉。一本線に伸びた口に「ツ」のチョンチョンみたいな鼻。手足の先は、マッチ棒みたいになっている。色は緑色。


「わかった! カエルだね!」

「正解! じゃあ今度はエミカちゃんの番だよ」

「うん」


 エミカは、カエルのことを考え始めた。カエル、カエル、カエル……。


 そうして、思いついたのは、雨だった。カエルの上に雲を描いて、雨が降っているように描いた。マミちゃんはその絵に、さらに葉っぱを描き足した。カエルが葉っぱの傘をさしている。お互いの絵に、次々と絵を描き足していく遊びは、意外と面白かった。


 ついに、一匹のカエルには、もう一匹の友だちカエルができ、お祭りの縁日(えんにち)で楽しく遊んでいるような絵が完成した。雨がしとしとと降る中で、二匹のカエルは楽しそうに笑っていた。


 そして最後に、マミちゃんがお日様を描いた。雨がようやくあがり、虹が現れ、辺りはキラキラ輝いているようだった。


 キーンコーンカーンコーン!


 休み時間が終わった。5時間目の授業が終われば帰れる。眠けと戦いながら、なんとか授業は終了した。


「マミちゃん、帰ろ~」

「うん、帰ろ~」


 水色とピンクのランドセルが並んで歩いている。小学5年生の二人は背格好さえ似ていた。


「そういえば、今度の日曜日お祭りだね。行く?」

「お祭り? そうだっけ?」

「うん。一緒に行こうよ!」

「……うん、行けるかお母さんに聞いてみるよ」

「うん。行けたら連絡してね」

「わかった」


 エミカは小さいときに一度、家族とお祭りにいったことがあった。でも今では、ピアノ教室やらスイミングやら塾やらで、休みの日さえもかなり忙しくて、家族で出かけることも少なくなっていた。


 それに、今度の日曜日は塾のテストがあったような気がする。それほど難しいテストではなく、ちゃんと授業を聞いていればできるようなテストだ。休んだらだめかな……。お母さん、何て言うかな……。エミカは不安と期待の入り交じった気持ちでリビングルームに入った。



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