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第6章 三姉妹と保護活動家

 三姉妹は、ヒグマ問題の解決策を探るべく、まず自然保護活動家たちの話を聞きに行くことにした。

 ソラが事前に連絡を取り、川辺津市近郊にある、とある自然保護団体の事務所を訪ねる。事務所は、自然の中に溶け込むように建つ、温かみのある木造の建物だった。

 三姉妹は、応対してくれた若い研究員、山本と名乗る男性に、これまでの経緯と「臨時特命係」としての活動を説明した。

 山本は、三姉妹の話を真剣に聞いた後、ヒグマの生態について穏やかに語り始めた。彼は、ただデータを並べるだけでなく、実際にヒグマを観察した際の経験談を交え、彼らがどれほど繊細で、賢く、そして「生きる権利」を持っているかを熱心に説明する。

 彼は、ヒグマの生息地が開発によって狭められ、餌を求めて人里に降りてくるようになった背景を、スライドや写真を使ってわかりやすく解説してくれた。

「…クマを可哀想に思うのは、私たちの勝手な感情かもしれません。でも、彼らが生きる場所を、私たち人間が奪っているのも事実なんです」

 ユズがそっと尋ねた。

「でも、人間が襲われたり、畑が荒らされたりしたら…」

 山本は穏やかに答えた。

「その恐怖は、私たちも理解しています。だからこそ、私たちも人里の近くにゴミを放置しないよう呼びかけたり、人とクマの間に適切な『境界線』を設けるための調査を続けているんです。人とクマが関わらなければ、衝突も起きない。それが、一番の解決策だと信じています」

 ソラは、彼の言葉に深く考え込んでいた。彼女にとって、「境界線」は、大切なものを守るための、掃除のルールと同じだった。家の中にゴミを入れないように、クマの生活圏に人間が踏み込まないように、それぞれの領域をきれいに保つこと。それは、物事を根本から解決するための、最も確実な方法に思えた。

 ハルは、ボールを捕るように、彼の言葉をしっかりと受け止めていた。彼女は、父の笑顔を奪ってしまった後悔から、大切なものを「落とさない」ことに強いこだわりを持っている。この時、ハルは、ヒグマもまた、人間が手を差し伸べなければ「落としてしまう」、守るべき大切な存在なのだと強く感じたんだ。彼女にとって、それは、父とのキャッチボールをもう一度始めるような、そんな温かい気持ちだった。

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