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第4章 三姉妹と特命係

 市長と別れて数日後、三姉妹は市長のメールアドレスに、今後の自分たちの活動について連絡した。


---------------------------------

件名:ヒグマ問題について

本文:

梅田市長

先日はお時間をいただき、ありがとうございました。

私たち三姉妹で話し合った結果、今の私たちには、解決策を思いつくことはできません。

しかし、この問題を他人事として諦めるのではなく、自分たちの手で解決策を考え続けていきたいと思っています。 

どうぞよろしくお願いいたします。

          上田ソラ

          上田ユズ

          上田ハル

---------------------------------


 メールを送信してから半日も経たないうちに、市長から返信が来た。件名には「臨時特命係」という文字が躍っていた。その日の夕方、市長が本当に自宅までやってきたんだ。

「こんばんは、市長!わざわざ来てくださってありがとうございます!」

 ハルが元気に市長を迎えると、市長はにこやかに笑って言った。

「あなたたちのメールを見てね、いてもたってもいられなくなってしまって」

 市長はそう言って、ソラが完璧に磨き上げたテーブルの上に、一枚の任命状を置いた。任命状には、こう書いてある。

───────────────

任命状

 川辺津市 上田ソラ

      上田ユズ

      上田ハル

 川辺津市 ひぐま対策臨時特命係に任命する

 令和○年八月三日

     北海道川辺津市長

         梅田メイ子

───────────────

 市長は任命状を厳かに読み上げ、三姉妹に手渡した。まさか自分たちが、こんな大それた役目を任されるなんて、夢にも思わなかっただろう。

「だけど、そんなに大袈裟なことじゃないのよ。一日署長とか一日駅長とか、そんな感じの軽い気持ちで引き受けてくれたらいいから」

 市長はそう言って、悪戯っぽく笑った。

 おいらは「特命係」を検索して呟く。

「『一般的に、組織内で重要な役割を担うことが多い』って書いてあるよ?あと、テレビ番組の話ばっかりなんだけど?」

 市長の言葉の端々からは、三姉妹の行動力を認め、単に活動の「お墨付き」を与えたかっただけのようにも見えた。だが、三姉妹は違った。その表情は真剣そのものだった。

「はい!私たち、頑張ります!」

 ハルが力強く返事をした。ハルにとってこれは、父の笑顔を落とさないための、大切なミッションだ。ソラは、大切なものを守るための、ユズは、家族の笑顔を取り戻すための、それぞれが心の奥底に秘めた誓いを胸に、その任命状を見つめていた。

 この時、三姉妹の物語は、ただの「日常」から「使命」へと、その形を変えたのさ。

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