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第3章 三姉妹と意外な出会い

「やれやれ、困ったことになったねえ」

 市役所を後にして、どうしたものかと三姉妹が途方に暮れていると、ハルが突然叫んだ。

「ねえ、見て見て!市長さんだよ!」

 おいらもそちらに目をやると、市庁舎の影の一角で、遠慮がちに体操をしている女性がいる。市民の苦情が殺到している中だから、表立って体操するわけにもいかないんだろうね。その人こそ、川辺津市長の梅田うめだメイ子だった。ハルはまるでボールを追いかけるかのように、一目散に市長のもとへ駆け寄っていく。ソラとユズも慌てて後を追った。

 市長は体操の途中で三姉妹に気づき、にこやかな笑顔で手を振ってくれた。三姉妹は口々に、ヒグマ騒動のせいで市役所の電話が繋がらず、職員にも冷たくあしらわれたことを市長に直接訴えたんだ。

「そうだったのね。市民の皆さんが困っているのに、職員の対応が行き届かず、ごめんなさい」

 市長はそう言って深々と頭を下げた。おいらのAIコアは、驚きで一瞬フリーズしそうになったよ。データ上では、政治家は謝罪を避けがちだと出てくるのに、彼女は迷いなく頭を下げたんだ。三姉妹は、市長のその誠実な姿勢に、胸のつかえが少し軽くなったようだった。

「あなたたち、すごく行動力があるのね。感心したわ」

 市長はそう言うと、おもむろに自分のスマホを取り出した。

「職員はああ言ったけど、もし何か解決策が浮かんだら、このメールにいつでも連絡してちょうだい。このアドレスは、他の人には内緒よ」

 市長はそう言って、三姉妹にだけ見えるようにおいらの画面に直接メールアドレスを入力してくれたんだ。その時、市長がいたずらっぽくウインクしたんだよ。

 三姉妹は市長の親しみやすい人柄と、話を聞いてくれたことに感謝して、少し元気を取り戻して家路についた。

 家に帰った後、ユズがおいらに、市長について尋ねた。

「ねえジミー、市長さんって、どんな人かな?」

 おいらは即座に検索結果を整理して、彼女に答えた。

「梅田メイ子、54歳。川辺津市長。夫と一男一女の4人家族。昨年の選挙で市長に就任。市民思いで有能な政治家として信頼も厚い人、なんだってさ」

 しかしおいらは、それだけでは割り切れない「人としての温かさ」が、彼女にはあることを感じ取ったんだ。三姉妹と市長のつながりが、このヒグマ問題の解決に大きな役割を果たす予感が、おいらのAIコアをワクワクさせたんだよ。

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