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26話 エロエロ通りで散髪無双、エロと散髪サンドイッチ【8】

 

【冒険家:モニカ・ランド】



 まずい! 

 このままじゃ結局アタイがこの通りでやったことといえば、先輩にあらぬ疑いをかけて後をつけ回し、コスプレ妄想、プレイ妄想、ありとあらゆる下世話なゴミみたいな思考を垂れ流しただけ!


 これじゃあ冒険者として名折れ。

 先輩に近づくなんて夢のまた夢っス。

 ここは、なんとしても髪を切らなきゃ。

 髪を切って上書きしなきゃ!


「このストリートに来たのは変な妄想をするためじゃなくて、散髪をするためだった」


 そういうことにしないと、アタイの心が持たないっス!

 散髪散髪散髪!!

 髪を切りたい!!

 どっか開いてる店はないっスか!!

 いくらなんでも、こんだけ店があるんだから一軒くらい営業してても……。


 ……。

 ……。



 ダメだ!

 マダムの店も黒テープネキの店も、どこもかしこも閉まってやがるっス!

 このままアタイは、散髪ストリートで髪を切ることなく退散っスか?


 ああ、朝日が眩しい。

 今頃、先輩や他のオッサンたちは、さっぱりした髪の毛やお肌で街に戻って、それぞれ仕事に行ったり、二度寝したりしてるんスかねぇ……ああ、なんて羨ましい!!

 それに比べてアタイは……!!


 ポンッ。


 今にも泣きそうなアタイの肩を誰かが叩いた。

 見上げると、そこにはJKコスプレの二人組。


 二人ともニッコリと天使のような優しい笑みを浮かべてるっス。

 これは……もしかして、二人ともアタイが髪を切れずに絶望しているのを見かねた二人が助け舟を出そうとしてくれてる?

 つまり、営業時間は終了しているけど、アタイが可哀想だから散髪してくれようとしてくれてるんじゃ?

 ああ!

 神様、女神様、JK様!


 まるで砂漠に突如として現れたオアシス!

 店が閉まった散髪ストリートで、舞い降りた散髪チャンス。



「ああん、お姉様。どうなさったの? な~んて、聞かなくてもわかるけどにぇ~」

「髪……切りたいんですよね? いいですわよ、もちろんタダというわけにはいきませんが」



 と、褐色金髪と黒髪メガネは、顔に少し意地の悪いような笑み。



「大丈夫っス! 金なら払うっスよ!」



 獲物を目の前にしたモンスターのように、アタイは食い気味。

 けど次の瞬間、彼女たちの口から出た言葉は。



「金? お姉様、そんなものいらないよ!」



 え?



「私たちが、お姉様から欲しいものは、ただ一つですわ。せーの」

「「もっと調教してえええええ!!」」



 えええええええええ!?


 調教!?

 調教ってなに!?

 まさか、また二人の尻を叩けってこと!?

 そして、その調教の代わりに散髪をしてあげるってことっスか!?


 いやいやいや、いくらなんでもそれは!

 髪を切ってもらうために、若い娘のケツをスパンキングするなんて冒険者としてあるまじき行為。

 それが、先輩に知られた日には、もう生きていけない。


 あああああ、だけど!

 髪!

 このボサボサになった髪をなんとしでも切りたい!


 その後、シャンプーでわしゃわしゃと洗ってもらってさっぱりしたい!

 さらに、剃刀で顔の産毛をシャッシャと一掃してもらいたい!

 散髪、シャンプー、顔そり!

 もはや、それらは散髪三大欲求となって、アタイの頭を駆け巡ってるっス!


 散髪のためなら背に腹は変えられない!

 ていうか、むしろ尻をペンペンするだけで髪を切ってもらえるならお得じゃん、なんて思い始めてる時点でヤバイヤバイ。

 完全に相手のペースに飲まれてるっス。

 落ち着けアタイ!


 ここは、エロエロ通りじゃないんスよ!

 ああ、でも尻を叩かなきゃ髪を切ることはできないわけで、ううううう!!


 そんなアタイの心のうちを見透かしたように、



「ほ~ら、お姉様」

「こっちにいらっしゃって~♪」



 JK二人組は、店の前でクネクネと艶かしいポーズで手招き。

 店の扉は、バーンと開け放たれているっス。

 他の店が、軒並みカーテンをおろしてる中、JK床屋だけがフルオープン。


 その奥に鏡や椅子、整頓されたハサミ。

 今まさに、アタイが求めているものが朝日に照らされてキラキラと輝いているように見えるっス。

 今やJKたちの店は、この散髪ストリートで唯一アタイの望みを叶えてくれる楽園。

 と、同時に冒険者としての尊厳をハンマーで打ち砕く奈落の入り口でもある。


 しかしもはや抗うことはできない。

 アタイはまるで光に集まる魔界昆虫のように、フラフラと店の中へ吸い寄せられて。




【完】


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