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25話 【スナイパー視点】大男のリラックス散髪・極上シェービング・ASMRマッサージ【3】


【狙撃手:X】



俺としたことが、とんだ勘違いを。

写真の男は武器の調達をしに来たのではなく、ただ単に髪を切りに来ただけだったんだ。

いや実は床屋は仮の姿で実際には、写真の男のアジトなのかも知れない。


通りに面した建物はブラフで地下に武器庫あり、最新鋭の銃や剣というにはあまりにもデカすぎる鉄の塊が鎮座しているということも……いや、だとしたらさっさと武器を取りに行くはずだろう。


今みたいに、呑気に椅子に座って髪を切ってもらってるのは、どう考えてもおかしい。

やはり写真の男がいる場所は、普通の床屋か?

ならばアホとしか言いようがない。

だって、そうだろう。

組織から狙われてるっていうのに髪を切ってる場合か?

目の前にモンスターがいるのに、文庫本読んでるようなものだぞ。


でも、あれ?

待てよ……いやいや実はよくよく考えてみると、写真の男の行動は理にかなってるんじゃないか?

どういうことかというと写真の男は、実は組織に狙われているということに気づいている可能性がある。


だからこそ、こうして髪を切っているのだ。

つまり髪を切って短くしてしまえば印象が変わり、組織から狙われにくくなるだろうという魂胆。

手配書が出回っている逃亡者が、髪型を変えただけで10年もの間逃げ延びたという逸話がある。



組織が持っている外見の情報が写真に映っている髪の長い状態だけなのだとしたら、散髪することで組織の捜索網を煙に巻くのは自明の理。

この男……筋肉モリモリなので脳筋かと思いきや、意外と脳みそたくさん詰まってやがる。

だが、遅かったな。

俺は、すでに写真の男を認知してスコープで追っていた。

髪を切ったあとならターゲットの特定は難しかっただろうが、今更髪を切ろうと変装しようと、無駄無駄無駄。

さしずめ、一度噛み付いたら離さないスッポン。

俺が狙いをつけたら、もう、このドラゴンごろしの弾丸から逃れることは不可能だ。

しかも写真の男は散髪中。

ということは髪を切られている最中、椅子から動くことはない。

止まっている人間を射抜くのはカカシを打つようなもので、しごく簡単。



ククク。

まるでテストで満点を取ることが確定した学生のように思わず口元が歪む。

写真の男はというと、同じように口元を歪めながら髪を切ってもらっている。

全く、これから頭を撃ち抜かれるとも知らずに呑気なものだ。


というか、いつまでも写真の男というのもアレなのでコードネームBB(ビッグブラック)としよう。


そんなBBの髪を切っている理容師の初老の男。

長かった髪をある程度、短く切り終えるとハサミからバリカンに持ち替えて、襟足の方からバリバリっと、まぁ実際離れた位置にいるから音は聞こえないのだが、近づけば絶対そんな音が聞こえてくるだろうといった感じで、刈り上げていく。

後ろが終わったら次は右側の側頭部、そして左側と回って、こめかみから後頭部にかけて刈り上げのグラデーションが出来上がる。


ほう、見事な手際……って、いかんいかん。

BBが、あまりに呑気に髪を切ってもらってるもんだから、こっちまでボーッと呑気に散髪の様子を眺めてしまっていた。


さっさと、撃たなければ。


それにしても店主は見事な手際だ。

バリカンでサイドと後ろを刈り上げた後は再びハサミにもちかえ、男の太い髪に挑んでいく。


おや?

なんだか、最初と髪の切れ味が違う。


スコープの倍率をあげて……っと。

なるほど、そうか。

今、店主が握っているハサミは、片方の刃が櫛のようにギザギザになっている。

いわゆる()()()()()というやつだ。


文字通り、髪の毛の量を減らすのを目的としたハサミを店主は目にも止まらぬスピードで操り、髪の量を減らしていく。

まるで手が何本もあるような早技。


気づくとBBが座っている椅子の周りには、切られた髪が雲海のようになっていて、さながら雲の上で散髪をしているような幻想的な雰囲気に。


なんか、エモいなぁ……って、おいおいおい。

俺としたことが、なに悦に浸ってるんだ。

この銃は、獲物を撃ち抜くためのもので、決してBBの散髪の様子を眺めるためのものじゃない!

これじゃあ、宝の持ち腐れだ。


うううう、しかしなぜだ。

指が凍ったように動かなくて引き金を引けない。

なぜだ?

まさか、俺は恐怖を感じているのか?


いや、そうじゃない。

認めたくないが、まさか俺はBBの散髪に魅入られているのではないか?


圧倒的な毛量と長さを持つBBの髪が、熟練の店主の手によってバッサバッサと切られていく光景にえもいわぬ興奮というか、一種のエクスタシーを感じているのではないか!?


馬鹿なっ!

スナイパーの俺にとって、獲物を仕留めることが一番の喜びであり、生きがい。

断じて、見知らぬ男の散髪を眺めることではない。


眺めることではないが、うおおおおおお!!

BBの髪の毛が切られていくごとに、ムズムズする!

一体なんなんだ、この気持ちは!



【続く】

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