表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/83

13話 ギルド受付嬢の休日・戦神と呼ばれる男の床屋巡り【3】



【ギルド受付嬢:セレナ=ハートランド】



 また散髪!?

 二度あることは三度あるってか!?


 どんだけ、散髪が好きなのよ!?

 いや、髪や髭が伸びるのが早いから、仕方なく散髪してる?

 でもだからって、よりによってこんなマニアックな床屋に来るか普通?


 もしかして、大黒ったら……ケモミミ属性?

 1日に1回はケモミミを生やした女の子と触れ合わないと、禁断症状が出るタイプ!?



 ふーん、ならしょうがないわね。

 それなら、私がひと肌脱ぎましょうか?


 いや、ほらね……大黒は、毎日のようにギルドに来るわけだから、そこで私がケモミミをつけて対応したら、1日1回ケモミミノルマ達成。

 

 例えば、猫耳をつけて、(クエスト行ってらっしゃいにゃん)ってウインク。

 犬耳でクールな感じに、(別にアンタがクエスト成功しようが失敗しようが、どうだっていいんだからね)ってツンデレ。

 ウサ耳バニーガールで、(クエスト報酬は……わ・た・し)みたいな!


 

 全く、しょうがないわね。

 別に私がケモミミ付けたいわけじゃないのよ。

 ただ、冒険者の要望に応えるのも受付嬢の役目よね。


 えーっと、ここら辺にコスプレ衣装を売ってる店は……って、ばかばか!


 なにこの状況に乗せられて、変なこと考えてんのよ私!

 いきなり、私がウサ耳つけてギルドに行ったら、頭がおかしくなったと思われるわ!

 

 

 危ない、危ない……ケモミミやら衣装やらを買って、今月の給料吹っ飛ぶところだったわ。

 これも全部、大黒のせいよ……って、あれ!?

 店の中にヤツがいない……まさか、私がケモミミ妄想をしてる間に帰っちゃった!?


 げげっ、目の前の窓に大黒の髪を切ってたケモミミ少女たちが。


「そんなところで何してるニェン?」

「なんかケモ耳とかブツブツ言ってたけど……」

「もしかして、おねーさんも髪切りに来たの~?」


 

 や、やばい……!

 このままじゃ、3人に囲まれて髪を切られて、マッサージされちゃう!

 そ、そんなの刺激が強すぎるし、大黒を探さなきゃ!


「また今度~!」


 ふぅ……何とか、ケモミミたちに捕まらずに済んだわ。

 にしても、マズイわ。

 完全に大黒を見失っちゃったわね。


 いつの間にか、日も暮れかかってるし……ああもう、私の貴重な休日があああああ!!


 カフェ巡りをしたり、映えスポットに行ったりするはずだったのに、結局ずっと大黒を追いかけて散髪を盗み見してるだけで終わっちゃったじゃない!


 まったく、この責任どうとってくれるの!?

 今度ギルドで出会ったら嫌味の一つでも言ってやろうかしら……って、ぎゃああああ!!


 その大黒が、向こうから歩いてくる!

 なに、この偶然!

 

 見失ったかと思ってたのに、まさかヤツの方から、現れるなんて!!

 でも相変わらず大黒のやつ、一人だし……結局デート云々は私の妄想だったってこと?


 って、あれ?


 私の前で立ち止まったわ。

 ど、どうして!?


 

 あ、まさか……え? ちょっ、まさか……デートの相手って、私!?



 だって、そうじゃない!

 わざわざ、向こうから私の方にやって来たのよ!?

 

 そんなのもうデート確定じゃん。

 床屋を何軒も梯子して髪型を完璧にしてから、私を探して会いに来てくれたってこと!?

 やばい、そんなの……普通にときめくんですけど!?


 ていうか、こうして見ると髪を整えた大黒は、やっぱイケメン。


 それに比べて、私は……うううう、やばいやばい。


 休日モードで油断して全然メイクとか服とかテキトーだし、髪も巻いてなくて、くううう油断したわ。でも、大黒だったら、許してくれるわよね。

 だって彼の方からデートを申し込むってことは、私に好意を抱いてるってことだもの!


 さぁ、いいわよ……大黒!

 私をデートに誘って……って、んん!?


 あれれ、なんかペコってお辞儀したかと思ったら、大黒のやつ……すぐ隣の宿屋に入って行ったわ。


 これって……え、嘘。そういうこと!?

 いきなりデートをすっ飛ばして、俺と夜のダンスを踊ろうってか!?


 なんて強引な男なの!?


 でもでも、そのために床屋をハシゴして身なりを整えたんだから、ここで断ったら可哀想。

 女は度胸よ!


 ふむふむ、中は普通の宿屋ね。


 店主のおじさんが、「お泊まりですか?」って尋ねてくるものだから、フフフ。


「明日の朝、”昨夜はお楽しみでしたね”ってセリフを用意しといて」


 なんて言いながら、カクカクしかじか。

 事情を説明して大黒の部屋に行こうとしたけど。


「あれ? おかしいな?」

「何がおかしいのよ」

「いやね。大黒の旦那、今日は散髪しまくって疲れたから寝るって言ってね。早々に部屋に上がって鍵かけちゃいましたよ? え? そうです。旦那は一昨日からここに寝泊まりしてて……」

「え!? そんなハズないわ。だって、そこで誘われ……てない!!」


 そうよ、よく考えたら私たちは一言も会話を交わしてなくて……じゃあ、なに? さっきのメインストリートでのあれこれも、大黒は私に会いに来たんじゃなくて、ただ此処(ここ)が泊まってる宿だから普通に帰ってきただけで、そこに私がたまたまいたもんだから、会釈しただけってこと!?


 

 なんなのよ、もう紛らわしい!!

 私のドキドキを返せ!



「あの~お客さん、どうします? 泊まられますか?」

「はぁ!? 泊まるわけないじゃない! 今から、やけ酒よ!! 貴重な休日を台無しにされた腹いせに、飲んで飲んで飲みまくってやるんだからああああ!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ