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レンブラント  作者: 福戸瀬
第1章 始まり編
8/11

第七話 「依頼」

 

 時刻は夕時。

 王都内富裕層エリア。

 その一角にそびえる邸宅「レンブラント」。

 今、そこの門の前に1台の豪勢な馬車が止まる。

 中からスーツを着たメガネの中年男性と2人の護衛が降り、屋敷の中へと入っていく。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付嬢がニッコリと笑いながら言う。


「裏の用件だ。頼む。」

「……かしこまりました。お好きなお席にて少々お待ちいただけますでしょうか。」

「分かった。」


 男は近くの席に座る。

 護衛の2人は男の傍に立っている。

 片方は辺りを静かに見回して。

 もう片方は腰に携えている剣に片手を置いて、爛々とした目つきで。


 付近では冒険者がオーダーメイドの武器について熱心に話している。


 受付嬢が通信魔法が組み込まれた魔道具で何やら話すと担当の者が男の元へ来る。


「こちらへ」


 男は案内され応接間に通される。

 1人分のソファが2つ、間にはテーブルがある。

 装飾品が飾られてあり、適度に上品さを感じる。


「本日はご来店ありがとうございます。改めてご用件をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「護衛を頼みたい。金はいくらでも払う。当主を呼んでもらえるか。」

「…はい。確認のためにお時間を少々いただきますがよろしいでしょうか?」

「かまわない。」


 そうして職員は部屋から出ていく。


 ーーー


「初めまして、当主のエルドです」


 ニッコリと話す。


「レオノル商会の会長をやらせてもらってるグラン・レオノルだ。あんたのmagicを借りたい」

「ふふ、この国で影響力のあるレオノル商会会長様がいらっしゃるとは。」


 レオノル商会。

 それはエレル王国を拠点とし、世界各地にもいくつか支店を持つ大商会である。

 その影響力は王侯貴族すら一目置くほどで、特にエレル王国とは深い関係を築いている。貿易、物資供給といった分野に精通し、王国の経済と軍事の裏支えを担っている存在だ。

 また、王国騎士団の退治した魔物や鎧、武器などを優先的に売買している。

 この国の看板とも言える商会だ。


「ですが、いくら会長様と言えども、彼らは私の大事な子達。相応の対価を覚悟していただかないと。」


 エルドは微笑みながら言う。


 しかし、グランは直感的に感じる。

 表面的にエルドは微笑んでいるが、その裏が竜のように恐ろしいことを。

 金色の瞳を通して淡々と見られていることを。

 まるで獣が牙を隠して睨むように。


 護衛の2人に緊張が走る。

 本能的に、何時でも戦闘に入れるよう、自然と手を腰の剣に置いていることも気づかない程に。

 2人が唾を飲む。


 メイドが部屋に入り淡々とお茶を入れる。

 お茶を入れたカップからは湯気がたつ。


「ああ、金に糸目はつけない。」

「ふふ、分かりました。では、詳しい内容を話していきましょう……」


 ーーー


 外は段々と暗くなり夜になりかけていた。

 大きな邸宅の扉からレオノルと護衛の男女ーーバラン、テトラが出て、馬車に向かって歩いている。


「はぁ。一苦労だよ。」


 ため息をついたあと、グランはメガネを外し目頭を抑えながら呟く。


「それにしても色々と凄かったですね。バランさんは以前来たことがあるんですか?」


 テトラがバランの方を見て聞く。

 1つに結んだ長い髪が風でなびいてる。


「ああ。レオノル商会として何回かな。いつ行っても緊張するぜ。」


 バランは苦笑しながら言う。

 顎には控えめなヒゲが生えており、腕や足は日頃からしている素振りでついた筋肉が目立つ。


「ほんとですね。自分も緊張しました。当主さん、明らかにただ者じゃなかったですね。それに職員やメイド達も隙がありませんでした。」

「あんなの序の口だ。エルドの配下には化け物みたいなやつらがもっとウジャウジャいる。化け物の巣窟だよ。だがまあ、だからこそ依頼について信頼出来るんだがな。これで娘のことについてもひとまず安心だ。娘も心置きなく楽しめるだろう。」



 ーーオルト視点ーー


「うぉー、すげぇ〜」


 俺は訓練場にて、初めて魔法を使っていた。

 火属性魔法で小さな火を指先に。

 きっと誰でも出来る魔法だ。

 それでも成長しているのは間違いない。


 レンブラントには魔法書庫がある。

 そこには数多くの魔法書が保管されており、職員が魔法を覚える時に自由に使用出来るらしい。

 管理は魔法書管理部が担当しており、借りる際には届出を出す必要がある。

 魔法書に触れる機会が多いから見習い達には人気の部署らしい。


 俺は火属性の魔法書をペラペラめくる。

 テンプレートは以外にも多いんだな。

 手のひらから火を出す魔法。

 拳に炎を(まと)う魔法。

 火花を散らす魔法。


 読んでて実に楽しい。

 ふーんこんなのもあるんだ〜ってことが結構多い。

 魔法書管理部が人気なのも分かるな〜


「なー、ルナも魔法使うのか?」

「ああ、使うぞ。魔法使いみたいに魔法だけってわけじゃないがな。私やお前みたいなスピード、タフネス、攻撃力が高水準なやつは魔法を使いながらの近接戦が1番合ってるんだ。お前も1つ得意属性を見つけとくんだな。」


 隣にいるルナはタバコを吸いながらそう言う。

 得意属性か。

 確かに広く浅くより、1つを深くの方がイメージ的に良さそうだな。

 まあコツコツ見つけてくか。


 ーー ガチャリ ーー


 その時訓練場のドアが開く。

 ドアからひょこっと女性が顔を出す。

 肩までの長さの深い青の髪が特徴的でこちらを見ている。


「ルナさん、今だいじょぶでしょうか?」

「ああ。どうした?」

「エルド様が呼んでいます。補佐官と応接室に来て欲しいと…」

「そうか、分かった。」


 そう言うとルナは立ち上がる。


「あなたがルナさんの補佐官してるっていう人?」


 女は俺の方を見る。

 背は俺より低く、腰には剣を携えている。

 年は俺と同じぐらいだろうか。


「ああ。オルトだ、よろしく。」

「私はレムラ、よろしくね」


 レムラは微笑みながら言う。


「新人なんだってね、分からないことがあったら遠慮せず聞いてね!」


 レムラは右手で胸の当たりをポンと叩きながら明るく言う。


「はは、心強い。頼りにしてますよ。」


 分からないことは基本的にルナに聞いていたが、聞ける人数が増えて困ることは無い。

 むしろ助かる。

 優しく、頼もしそうな先輩ができたな。


「こいつを頼もしい先輩だと思ってるとこ悪いが、先に言っておく。コイツはポンコツだ。」

「なっ!! ルナさんそんな事言わないでください!!」


 えっ、ポンコツ?


「オルト、そんな事ないからね、私は別にポンコツな訳じゃ—— うわっ!」


 レムラは弁解しようと近づいてきたが足元にあった魔法書でつまづく。


 う、うん。

 確かにポンコツかも……


「あ、あはは、わざとつまづいてみた……ドッキリ的な…」


 そんな訳あるかぁ


 ーーー


「ごめんね、いきなり呼び出して」

「全然大丈夫です。コイツの訓練に付き合ってただけですから。」


 ルナはエルに言う。

 応接間には俺とルナ、エルドの3人がいる。

 レムラは俺らを案内した後、去っていった。

 案内されてる途中、何回か段差につまづいてた。

 やつはほんとにポンコツなんだろう。


 エルは俺を見る。


「うん、順調そうで良かったよ。早速だが本題に入りたい。ある依頼を2人に頼みたい。っと言ってもオルトはまだ見習いだ。実質見学みたいな感じだけどね。」

「分かりました。依頼内容は?」


 ルナがエル聞く。


「今度王都内でパーティーが開かれる。レオノル商会主催のね。そこに会長の娘も出席するらしくてね、パーティー参加者に紛れてその娘を護衛して欲しい。どうやらきな臭くなってるらしくてね、安全最優先でmagicをご所望だ。」

「護衛頼むくらいなら出席しなければいいのに」

「はは、確かにオルトの言う通りだね。それが一番安全だ。でも、パーティーには各来賓と共にその子供たちも出席するらしい。主催の立場からして出席せざる得ないんだろうね。」


 なるほどな。

 パーティーには親子で参加する。

 主催側なのに娘が出席していないとなると、参加してる人らも納得しない場合があるって訳か。

 大人の事情ってやつね。


というか………


「誰がその娘を狙ってんだ?」

「グラン会長はいくつかの盗賊団が狙ってるっていう情報を手に入れたらしいけど正確には分からないと言っていたよ。なぜ他のお偉いさんの子供がいる中わざわざ会長の娘が狙われるのかも全く分からない。でもまぁ確実に言えることはその娘が狙われてるってことかな。くれぐれも油断しないように。」


分からないことが多いが、狙われてるのは確か、か。

攫ったら何に使われるのだろうか…

レオノル商会の会長の娘だ、身代金を要求すれば凄い額を提示されるだろう。

あとは……跡取りの抹殺…とか?

まぁ使い方は沢山あるな。

狙われる理由としてはどれも十分と言える。


「当日、パーティーには色んなお偉いさんが来るらしい。何かあっても、なるべく大事にせず穏便に済ませてね。あと、オルトはまだ見習いだ、今回は補佐だから特別に同行を許可してるけど普通はこんなことない。くれぐれも出すぎないように。ルナの指示に従うこと。」


「分かった。」「了解です。」


俺とルナは返事をする。


「よし。じゃあ、無事を祈ってる」



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