第四話 「教導」
「どうした、そんなもんか?」
「はぁ、はぁ、、くそが……」
大振りした拳は躱かわされ、ルナの回し蹴りを見事にくらう。
くそ、全然歯が立たねえよ、、
人をボコボコにしやがってよぉ…
ーーー
【4時間前】
オスカとリリがこの部屋から出ていく。
おいおい。
この人と2人きりにしないでくれよ、、、
「…………お前、元々、田舎の孤児院に居たらしいな…」
「あ、あぁ、そうだよ……」
「………」
な、なんだ?
黙ったぞ…
なんかやばいこと言っちゃったか…?
「………。」
ゴクリと唾を飲む。
「………。なんだ、急に黙って」
「こっちのセリフだよ!!!」
なんだコイツ!!
ビックリさせやがって!!
「とりあえず行くぞ」
そう言うとルナは席を立つ。
「………お、おい。どこに行くんだ?」
「訓練場だ。」
ーーー
部屋を出て、訓練場に着いた。
訓練場は屋敷の地下にあり、そこそこ広い。
レンガ造りで窓は無い。
俺たち2人以外は誰もおらず、静けさが目立つ。
ここが訓練場か、地下なんだな…
なんか衝撃で崩れてこないか心配だな、、
「お、おい、これ衝撃で崩れたりしないのか?」
「安心しろ、魔法の結界が張ってある。崩れたりしない。それにしても面白いな。弱いくせに崩れる心配をするか。」
……………うん。正論だ。
自慢じゃないが魔法も打てないからな。
ハッハッハ。
「1発だ。」
「、、1発?」
「あぁ、私にいいのを1発入れろ。もし入れられたら試験合格だ。」
ほほう、1発か。
ふむふむ。
1発くらいなら…何とかなりそうだ。
俺も底辺とはいえ冒険者をやってた。
ハッ、いくらなんでも舐めすぎだゼ!
「ははん、後でやっぱなしはナシだゼ!」
「お前、面白いこと言うな」
俺はルナがそう言った後、ルナ目掛けて走り出す。
ーーー
で、この有様よ。
訓練場に入り早4時間。
もうボッコボコだ。
しかもあいつから攻撃してこないで全部カウンターなのがまた悔しいしウザイ。
攻撃しに襲いにかかる。かわされる。カウンターをモロにくらう。吹っ飛ぶ。
4時間もずっとこれを繰り返してる。
体がさすがに持たん、、、
身体中超痛てーし、つれーし。
死ぬでこれは。
「ハァ…ハァ…」
「………ここらで休憩するか。」
ルナはそう言ってポケットからタバコを取り出して吸いだす。
!?。
ハッハア、ニヤリ。
「俺もタバコくれ」
そう言ってトボトボとルナに近づく。
「………………。隙アリ!!」
そう言って殴り掛かる。
が…
「んうぉっ、ヘブンッ…」
軽くかわされ足をかけられる。
足が引っかかり思いっきり顔からコケる。
くそ、不意打ち作戦が……
「わかり易すぎだ。」
「くそぉ」
「はぁまったく…。せこいやつだな。」
なぬ、失礼な。
これは立派な作戦だ。
「まぁ、それはいいとして改善点だ。まずはお前、体を鍛えろ。そっからだ。」
「ぐぬぬ、」
正論すぎる。
確かに今のフィジカルの強さは並の冒険者以下だ。
殴りにしろ蹴りにしろ防御にしろ、フィジカルは戦闘で深く関わる。
これから鍛えよう。
「ここはある程度施設が整ってるからそこでやれ。」
「…はい。」
「あとは体内の魔力の使い方だ。」
「、、??」
「体内に魔力を巡らすんだ。そうすると常人以上のフィジカルを発揮出来る。戦闘では超大事だ。攻撃力も防御もスピードもこれができるできないだと天地の差だ。」
そんなに凄いのか。
さすがに天地の差は言い過ぎなんじゃないか?
「天地の差って、、、さすがに言い過ぎなんじゃ…」
「いや、大事だ。これはいわば基礎。戦闘での土台だ。フィジカルの鍛錬より体内での魔力操作を優先的に鍛えろ。」
なるほど。
確かに体内魔力操作を極めるだけで攻撃、防御、スピードの3つが高水準になるのか。
お得だな。
「…でも、鍛えるったってどうやってするんだ?」
「そうだ。そこが問題だ。大体そこで皆引っかかるんだ。だが安心しろ。お前の場合、殴る、蹴るをする時無意識的に少しだけ出来てる。こんなこと中々無い。継続的に今のを繰り返してけば感覚をつかめるはずだ。けど自惚れるなよ。お前今この組織の最底辺なんだからな。」
くそ、言われなくても底辺なことぐらい分かっとるわ!
「そんぐらいか……あっ、そういえば天技を忘れてた。今度から魔法でカウンターするから。」
まじかよ、死ぬだろ普通に。
さすがに手加減してくれよ…
それにしても魔法か、、
「俺も魔法使いたいんだけど、」
「お前はとりあえず天技が先だ、魔法はその後。」
「えぇ〜」
天技が先って…いつ解放されるんだよぉ…
下手したら長い間体術だけで頑張るってこともあるじゃねえか。
まぁそれはそれで体内魔力操作が上達するからいいんだけどさ。
、、いいんだけどさぁ、
遠距離攻撃が欲しいよぉ、、
「それにしても腹が減ったな、飯にしよう。」
「お、おう」
「よし、汗流したら食堂行くぞ。」
えっ、
えっと、、解散じゃないの?
「えっ、えーと、、」
「ん?どした?まだ殴られたりないか?」
「違うわぁ!!ここで解散じゃなねーのかよ?!」
「そんなわけないだろ、お前は私の補佐だ。ほら、行くぞ」
え、まじ〜、解散じゃないのかよ、、
そんなことを思いながらとぼとぼとルナの後ろをついていく。
ーーー
「………。」
今、食堂にいる。
隣には黙々と食べる食堂の飯を食べるルナ。
食堂の中は飯を頼んでる人や食べてる人で段々と混み始めてる。
俺はとりあえずルナと同じのを頼んだ。
サラダや肉やパンのセットだ。
パンを1口食べる。
うま。
うん、、うますぎやろ。
最高やな。
って、ちゃんとした飯を食べるのは久々だったな。
そう感じるのも当たり前か。
檻の中はろくなもんしか食ってないからな。
あぁ、最高だぜぇ。
肉も1口食べる。
あぁ、なんて美味なんだ。とてもジューシー。
檻の中でこんなのが果たして食えるだろうか、いや食えない。
これから毎日これが食えるのか。
あぁ、なんと最高なことか。
「あ、あの…と、隣、いいでしゅか?」
「?…。い、いいよ。」
え、噛んだ?
俺が飯を堪能してると茶髪の青年に話しかけられる。
顔真っ青だけど大丈夫かこいつ?
「…だいじょぶ?」
「ふぇっ?は、はい。いや、その…自分ここの新入りでして、、。席が空いてるところが中々無くて、隣だいじょぶか聞くのに緊張しちゃって、、」
わぁ、早速同期発見。
同期なんていないもんだと思ってたけど以外に居たな。
もしかしたらもっといるかも、、
暇があったら探してみよ。
てゆうか新入りだとしても緊張しすぎでしょ。
顔真っ青なのだいじょぶか?
「え、新入りって今日から?」
「ううん、1週間前くらいからだよ。」
「そっか。あっ、俺オルト。俺も新入りだから同期だな。よろしく。」
「同期!やっ!、たぁぁぁ。俺はリテルだよ、よろしくね。」
おぉ、トーンアップするかと思ったらまさかのトーンダウン。
中々掴みどころがないやつだな…
「オルト、そろそろ行くぞ。」
「あっ、うん。またな、リテル」
ルナが食い終わって食堂から出ようとしてるのでついて行く。
「えっ、あ、ちょっと——」
リテルはまだ話したげだったがオルトは行ってしまった。
リテルは再び心細く思うのだった。
ーーー
「ここがお前の部屋だ。」
ルナが廊下の俺の部屋の前でそう言うと鍵を俺に渡す。
ここは組織の住居フロアで部屋が宿屋みたいに沢山ある。
「じゃ、私も部屋に帰る。とりあえず明日は朝にまた迎えに来る。じゃ。」
そう言って俺たちは解散した。
ーーー
部屋の中は一般的な宿屋の部屋みたいだった。
ベッドや鏡、クローゼットなどがある。
俺はベッドの上に倒れ込む。
はぁ、疲れたな。
今日は色々なことがあった。
買われたり、蹴られたり、蹴られたり、蹴られたり。
……うん。後半は蹴られた思い出しかない。
でも服が着れたり飯が食えたりベッドで寝れたり、ここは最高だな。
檻の中とは段違いだぜ。
でもここ諜報組織なんだよな。
未だ現実味が感じれないな。
………。
まぁきっとなるようになるか。
別に、諜報組織?それがっ?って感じだしな!
それに同期の仲間も1人できたし!
なんとかなるか!ははは!
その日はそんなことを考えてるうちにゆっくりと眠りについた。