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ライブ三十分前

 ライブ三十分前。


「フラれてない?」

「告白する前に彼女をつくられたってのが真相。さっきここでその彼女を紹介されたの。めっちゃ笑顔で」


 あたしの否定に怪訝な顔をした磯辺に、足立が足りてなかった説明をする。


「ほぼ同意義じゃん」

「違う」


 それを聞いても意見を変えない磯辺にあたしは首をふる。


「フラれてないし、嫌われたわけでもない」


 タカ兄から見たあたしとの関係はなにも変わっていない。ただの妹みたいな幼馴染だ。だけどあの清宮さんという彼女はタカ兄の目から見て、ただの他人から関係が変わったのだ。


「伝えてなかったから」


 タカ兄からか清宮さんからかは知らないけど、二人は気持ちを伝えあって、


「始まらなかっただけ」


 二人の関係を始めたのだ。

 足立と磯辺が黙ってあたしの話を聞いている。冷静になってきた頭がとっちらかった感情をひとつひとつ拾い集めていく。


「自分のこと異性として好きじゃないってわかってもさ、だからさよならって、嫌いになるっていうのは違くてさ、好きだったからさ、好かれてなくたって好きなんだよ」


 そうだ。好きなのだ。どうしようもなく。


「あたしがタカ兄のこと好きだったってのは消えないの。ただあたしの好きとタカ兄の好きが違うくて……だからさ」


 だけど交わらないのだ。この好きは。どこにも行き場もなく。


「このままだと、あたしの好きはもうダメになるまでここにいるしかなくなっちゃうから」


 胸を押さえてそう言葉にしたあたしは、だから自分のするべきことを決めることができた。


「始めないと終わらない」


 もう終わってるってわかってても、始めないと終わらないから。


「だからこのままやる」


 足立と磯辺の顔をそれぞれ見て、あたしはそう決意を告げる。


「それで終わらせる」


 この決断に足立と磯辺は互いに見合ってうなずくと、あたしにむかって黙って親指を立ててくれた。

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