35これでユーリ様はきっと助かるわ
いよいよ最終話午後に投稿です。どうぞ最後までよろしくお願いします。
リリーシェは大急ぎで神殿を目指した。
「うっ!こ、これは」
神殿は宮殿のもう一つ向こうの小高い丘の上に立っている。そこに向かう道には人々が押し寄せごった返している。
今日の日に竜神の涙の雫を求めた人たちが神殿に押し寄せていた。
「最後尾はどこなの?」
リリーシェは律義にみんなと同じようにきちんと並んで順番を待つべきと思った。
それは悲しいかな前世の小坂未来の性でもある。
割り込みは絶対にだめ。そんな習性を持つ日本人ならではの性かも知れない。
そうやって人々の行列に並んで待つこと数時間。やっと竜神の像の前に辿り着いた。
辺りはすっかり宵闇に包まれている。だが、人々の熱気はすさまじいものがあり暗闇でもまるで真昼のような活気があった。
それに神殿にはたいまつがあちこちにあって結構な明るさがあった。
「竜神様どうかユーリ様をお助け下さい」そう祈りながら…あっ入れ物忘れた。
そう思ってポケットを探るとあの小瓶があった。
ローズとルクシオの涙の結晶がまだ数個入ったままの小瓶。
(これも涙なんだから一緒でもいいはずよ。いや、このふたりと竜神様の涙が合わさればきっと最強の解呪の力を発揮するはずよ。)
リリーシェは訳の分からない理屈でそれがいいと小瓶を竜神様の目元に差し出した。
目を皿のようにして竜神の目を見る。
(あっ、ほんとだ。竜神様の目から涙のようなものがじわじわしみだしている。すごい。ほんとに泣いてるみたい。ああ…感動!これで絶対ユーリ様は助かるに違いないわぁ)
周りの人々の感慨深い雰囲気に圧倒されてリリーシェはすっかり安堵した。
急いで宮殿に帰らなければ…とそこに護衛達が現れた。
「リリーシェ様。いい加減にして下さい。私達がどれだけ探し回ったか…」
「ごめんなさい。でもユーリ様を助ける方法が見つかったの。急いで宮殿に戻るわよ」
「ええ~又走るんですか?俺達もうへとへとですよ~」
「あなた達は後から来ればいいわ。じゃ、私はお先に」
リリーシェはまた力を纏わすと髭出した時のようにスピードを上げて宮殿に向かった。
護衛達も渋々後から追ってくる。




