31レックスの後悔
今回もたくさんの方に頂き本当にありがとうございます。明日はクリスマスイブ。聖夜ですよ。明日最終話投稿予定です。最後までどうかよろしくお願いします。はなまる
それはレックス様が残したものだった。
~ヴェネリオ家の子孫へ~
これを見ているという事は私の呪いが発動したという事なんだろうか。
きっと怒っているだろう。君には何の罪もないのにどうしてこんな目に合うんだって思っているだろう。
だが、この時の私はそんな事に気づいてもいなかった。
申し訳ないと謝ったとしてもそれはただの偽善としか言いようがない。
だからせめて呪いが少しでも軽減されるよう努めたんだ。
これはただの言い訳に過ぎないがどうか私の気持ちを知ってほしい。
私だって竜人にとって番は何ほどにも代えがたい存在だって事は自分にもわかっていたつもりだった。
ローズに番が現れたから離縁して欲しいと泣きつかれて私はどうしてもローズと別れたくなくて、まだ子供だって小さいのにと思った。
それに私だって番じゃないがローズを愛していた。
だけどローズはあいつと。ルクシオ・キャリスと駆け落ちして…
私は追いかけた。見つけてかっとなって気づいたらルクシオを八つ裂きにしたつもりだった。
でも違った。八つ裂きにしたのはローズだった。
ルクシオは狂ったように泣いて俺の目の前で胸にナイフを突き刺した。
番を失っては生きてはいけないと泣きながら。
私はルクシオが許せなかった。憎しみが止まらなくて怒りの感情のままキャリス家の人間が今後ヴェネリオの家の者を奪わないように呪いをかけたんだ。
でも、ふと気づくとローズはまだ生きていて「レックス…あなたを、苦しめて…ごめ‥ん、なさ…」そう言って涙をぽろぽろこぼしてローズは私の腕の中で息を引き取った。
ローズを失った私の憎しみは更に膨らんだ。憎しみで竜力が湧き溢れ更に呪いの上書きをした。
私はこの先もしもキャリス家とヴェネリオ家の者が心を寄せるようになって呪いが発動して生き残った場合、呪い返しを起こすように呪いを組み替えた。もしも呪いが発動しても生き残った場合、今度はヴェネリオ家の者が呪いを受けるように。
そうすれば相手のキャリス家を苦しめることが出来るって考えたんだ。
私はやったと思った。
そしてせめてローズを埋葬しようとした。
ローズの遺体の横にルクシオが折り重なるように死んでいた。ルクシオは死ぬ間際までローズの事を案じていたんだろう。
ローズの両手をきつく握ってその手には口づけを落として彼は微笑んで眦から流れ落ちた涙が耳に溜まったまま死んでいた。
心がぐわっとえぐられたみたいだった。
私はそれを見た時雷に打たれたような衝撃を受けた。
こんな死にざまが出来るのかって…自分の胸をえぐったままこんな頬笑みを浮かべて死ねるのかって。
これこそ本当の愛なのかって頭の奥でぐぉんぐぉんと音が鳴ってそれがどんどん大きくなっていった。
そしたら私のかけた呪いはそれこそ真実の愛を断ち切る邪悪なものになってしまうんじゃないかって。
私は恐くなった。
ローズを殺しルクシオも殺したようなもんだ。
私は生きてはいられないがこのままじゃ何代か先の子孫に恨まれるんじゃないかと思った。
だが、怒りに任せて掛けた呪いは解けなかった。それで私は何とか抜け道を作れないかと考えた。
だからこうしてここに書いて残しておこうと思った。
もし先の子孫が私の呪いで苦しむことがあった時の為に。
まず私はこの呪いで命は落とさないようにした。キャリス家の片割れが仮死状態になるが命を落とすことはない。
だから片割れが仮死状態に陥った時には自分の命を分け与えるんだ。竜人の力はものすごいパワーを持っていて番であれば一度だけ自分の命を分けることが出来るはずなんだ。
それで意識が戻ればきっと呪いは解けるのではないかと思う。
でも、助けようとした片割れが仮死状態になった場合は…呪い返しが起きたのかもしれない。
相手に呪いが移ったということだと思う。
本当にすまない。こうなったら私にはどうすればいいかよくわからない。
呪いが解けなければずっとそのままの状態が続くかもしれない。ただ死ぬことはないだろうが。
ひとつの可能性としてはヴェネリオ家の墓に行ってみて欲しい。
私の墓の中には小瓶が入っているはずだ。それはルクシオとローズが流した涙の結晶で私が結晶化して残したものだ。
それを飲ませてみてくれ。もしそれでもだめなら自分の粘液。例えば涙か血液をそこに混ぜてみて欲しい。
私は怒りに任せて呪いをかけたから、はっきり言ってどうすれば呪いが解けるのかが確実にはわからない。
ただ、ローズとルクシオの愛の結晶ならきっと私の呪いを打ち負かせると思うんだが。
そしてこの呪いを受けたふたりにも同じように呪いを打ち負かす力があると信じている。
私がしたことは取り返しのつかない事だった。でも、ローズを愛していた。例え番でなくても愛していたんだ。
それだけはわかってほしい。
これが私の出来る事のすべてだ。
どうかこれを読んだ番のふたりが幸せになることを心から祈っている。
~レックス・ヴェネリオ~
「これは…レックス様は後悔していたんですね。きっともしこんなことが起きたらって恐かったに違いないはずです。私達は最初の呪いの時ユーリ様には『番殺し』が使われたんです。きっと呪いはまだ解けていなかったんだと思います。今回の事でその呪いが再発したんだと思います。でも、レックス様は何とか呪いを解く方法を考えておられたんですね。どうか私をヴェネリオ家のお墓に連れて行って下さい。そこでレックス様の心残りをすべて終わらせてあげたい。そして何としても私の番を助けます」
リリーシェはヴェネリオ夫人とゲイブ令息にそう伝えた。
「「私たち二協力できることがあれば何でもします」」
ふたりは声を揃えて言った。




